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図書室にて

図書室にいると、心が空っぽになる。本の香りで、周囲の香りは止み、みんなが作り出す静寂は心地がいい。この思いやりの音も結構好きで、そっと本棚に戻す音、ヒソヒソ話す声、足音を立てず歩く音、音は鳴っていても寛容になれるのだ。

いつもは一人でくる図書室に二人で来てみた。少し気になる人だから、少し、ほんの少しだけ意識してしまう。パーテーションがあってよかった。白くて薄い壁が、心を落ち着かせる緩和剤になってくれた。やっぱり視界に霞む人を見ると、ちょっとドキドキするけれど、ここが図書室でよかった。

換気のために、窓は全開。勢いのある風を白いカーテンが宥めて、穏やかな風だけがやってくる。意識をせずとも、風のまろやかさに心も体もほぐれてきた。

もう、隣のことは気にしてない。なんてったって、今隣で隣の人を気になると書いているくらいだから。そんなスリルを味わいながら、図書館の素敵なところを考える。まだまだ溢れる良さのあと一つをあげよう。それは、数。多分一生通っても、この書籍の量は読み切れない。

どれを選び、何を感じるかで、人生は大きく変わる。私の読んでいる小説は、私が持っているのだから、この中で他に読める人はいない。それと同様に、隣の人が読んでいる少し難しそうな本も、私は知らない。

知らないが重なり合って、興味に変わる。図書室を出たら、色々と質問してみよう。これまで読んだ本が織りなす人の不思議を。

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