鳴らしたくなる
古いインターホンには、音符がついていた。それも八分音符。今からこれを押しますぞ!と心の温度が少し上がっていた。無くなって、スタイリッシュにはなったけれど、まだ使い続けている家をみつけると、つい鳴らしてしまいそうになる。
音が好きだ。ピンポーンと表現される音にもたくさんの音が集約されている。うちなんて、ぱららぱららと音が鳴るし、びんぼーんと聞こえるやる気なさそうな音も聞いたことがある。
宅配便のお仕事やデリバリーをしたら、きっと出会いが多いはず。こんなエッセイを書いているものだから、歩いている間にも色カタチ様々なインターホンが目に飛び込む。どの家にも、どんなセンスにも馴染む万能なデザイン。逆にカラフルなインターホンを見つければ、興奮するのだろうけど。
細い雨が降ってきて、傘をさす。課題の小説のストーリーを練りながら、ゆらゆらと歩道を進む。自動販売機の照明によって、ビニール傘に流れる雨粒が際立つ。前に傾けて、雨粒を一気に落としてみる。少しクリアになった傘をもう一度持ち直す。道を挟んだ向こうに見えた赤のインターホン。赤色あるんだ。
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