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『世界市民という観点からみた普遍史の理念』カント

はじめに:自然の与えし素質

カントは、本論文にて、人の意志の自由の働きは、規則的に発展していると述べた。そして、その発展法則は、自然の定めた9つの命題に従っていると主張する。発展の最終地点は、人類の完全なる市民的連合の設立である。

異郷から来た女史が何者か知りたい人はこれを読んでくれ。

そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。

9つの命題:自然の計画

以下、カントが示した自然における人間の命題9つについて示す。

1.被造物(臓器、器官等の身体に元から備わっているもの)の全ての自然的素質は、いつかその目的にふさわしい形で完全に発達するように定められている。

2.人において理性の利用という自然の配置が完全に発展するのは個人ではなく人類の次元においてである。=>ある個人が完全に理性の発展をきわめるのでなく、世代を経るごとに、徐々に発展していくということ

3.自然は人間に次のことを望んでいる。人は、生物学的配置に含まれないすべての物(衣服、家etc..)を自ら作り出せること。本能とは関わりなく、自ら理性によって獲得できる幸福や完璧さだけを目指すこと。

4.自然はこれら人の素質を社会において対立させることで発展させる。

5.人が自然によって解決することを迫られている最大の問題は、普遍的な形で法を施行する市民社会を設立すること

6.人は各人の意志を砕き、自らの意志を全ての人に強制する支配者を必要とする

7.完全な市民的な体制を設立するという課題は、諸国家の対外的な関係を合法的なものにするという課題を実現できるかどうかにかかっているのであり、これと切り離して実現することはできない

8.人の歴史の全体は自然の隠された計画が実現されるプロセスである

9.自然の計画は、人類において完全な市民的連合(世界市民状態)を創ること。この計画に従い、人間の普遍史を書こうとする哲学的試みが可能であるだけでなく、これは自然のこうした意図を促進する企てとみなす必要がある。

おわりに:世界市民状態を目指した

カントは、この9つの命題にて、自然が人間の理性の発展法則を定めていることを示した。そして、理性の発展の頂点には、市民的連合が存在することも主張する。

これら世界市民の概念は、本論文では自然の定めた命題であるとして主張するに過ぎない。しかし、後の論文『永遠平和のために』あたりから、植民地主義批判のための概念として使用され始める。

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