生まれ直し
◆ 私は裏切りものかもしれない
「生まれ直したいなあ」と思うことがある。
生まれ直すと言っても、死んじゃうとか、今あるものを全部捨てるとかそういうことではない。
そうしなくても、生まれ直せることってあるんだなあという光景を見ることがある。
これは、日常的に、自分のまわりの人たちの中でも起こっていることなのかもしれませんが、あまりにも個人的なことだから見せないようにしたり、ひとりで噛み締めたりしているかもしれなくて、他人にわかりやすく見えることは少ない。
でも、表に出て、ある意味では人生を切り売りすることになってしまうような仕事をしている人は違う。
ことにアイドルは、ステージ以外の部分はアイドルらしくない行動をとることがいけないとされている文化が未だにあるので、そのはざまの中で起きた出来事やニュースは、浮き彫りにやりやすい。
そしてそれをどうしても追ってしまう。
ゴシップが見たいとかいう意地悪な気持ちとも違って、そこから生まれ直す瞬間の光が見たいから。
つまり、アイドルという存在を信じたいんですよね。事実はどうであれ。
私はアイドルという存在をとても尊いと思っていて、その文化にずっと興味を持っているので、それに関する作品もいくつか書いてきたし、ことあるごとに語ってしまう。
ただ
「アイドル」
という、単語を出すと「自分はそういうの全然興味ないんだよね」と食い気味で言う方がいる。
今ももしかしたら、これを読みかけながら「なんだ今回はアイドルの話か。自分には関係ないや」と、思う方もいらっしゃるかもしれない。
そんな方にも、いやもう、このことだけは、きっと伝わるに違いないしすべての人の人生を光らせるヒントになると信じて今日は書いていくことにする。
普段は自分に自信がないくせに、アイドルのことについて語るとなると突然自信たっぷりに持論を展開してしまう私ですが、そういうのはオタクっていうのかな。
いや、私は、自分をオタクとかヲタとか呼ぶにふさわしくない気がする。
オタクとかヲタと呼ばれる方や自称される方というのは、いろんな形はあれど、私なんかよりずっと純粋なんじゃないかなあ。
私は自分が書いた作品で「アイドルは神なのか生贄なのか」というような論点で語ったことがありますが、そういうふうに感じている存在に対して、オタクですとはとても言えない。
アイドルにも本物のオタクの皆さまにも失礼なことだろう。
そもそもアイドルに対して「私は裏切り者かもしれない」と思ったことがあったし。
私はある時期アイドルに圧倒的な時間を割いていた。
大げさではなく、1日のうち20時間ぐらい、日によっては24時間ってこともあった。
アイドルをテーマにしたTVアニメの原作、シリーズ構成、脚本、作詞と関連アイドルのプロデュースをしていた頃のこと。
物事というのは、物理量が増え、向き合いすぎるとずっしり重くなる。
これは、どの仕事にも通じることなんじゃないだろうか。
好きな存在について、とことん考え抜く、向き合う、寝食を置いてでも、健康を引き換えにしてでも時間を割くということは、時として
「もう、アイドルのこときつい」
などと思う瞬間が出てくるのだ。
神なのか生贄なのかとまで思える存在にたいしてそんなことを思う時
「わたしって最低だーーーーーーーーーーーー!」
と、自分を責めた。
目を閉じて寝ていても頭の中で作詞のための曲がまわる、がばっと起きて、また続きの歌詞を書き、今寝たら終わりだーと雪山みたいなことを思いながら脚本を書き、翌朝ライブやイベントのリハーサルに向かい、みたいなことを続けていると、ふいにお風呂に入っている時に叫びだしたくなる。
そして、ふいに思う。
これは、試されている。
「それでもアイドルを尊いと思えるか?」
と。
私は踏み絵を踏まされているかのような気持ちで、あの日々を過ごしていたように思う。
もちろん、そんな中でも、逃げることなく、放り出さず、すべてに向き合って走ってきた。
なんとか裏切り者にならなかったと言える。
ただ、へたれな私には、いまだにあの頃の感覚が残っていて、アイドルのMVやライブ、ドキュメンタリーを見る時や、好きなアイドルを「好きだ」と意識化する時には「よしっ」と思う気持ちがなければ入っていけない。
好きを仕事にしたからだ。
もちろんアイドルが嫌いになったわけではなく、今でも好きなアイドルはいる。
励まされてもいるし、モチベーションもくれるし、ある意味では昔とかわらず楽しめる部分もある。
でもやっぱり、仕事をする前の自分には戻れない。
アイドル関連の仕事をする気がもうないというのとも違う。
鮮度が大切なアイドルに関して、自分の気持ちの鮮度を失いたくないから大切にしているという感覚。
ということで、ここ数年、アイドルに関しての複数ある私の中のスイッチをカチカチカチカチッと切って過ごしてきた。
一部はオンにしてあって、好きなアイドルを楽しむ時には入れるという感じ。
とにかく自分がアイドルに関して考えすぎる、掘り下げすぎる感覚をオフろうと努めてきた。
アイドルをずっと好きでいる為に、もしも仕事で稼働するようなチャンスに恵まれた時、自らが稼働したくなった時に自分を追い詰めない為にも。
そんな日々を、一定期過ごして来た今日、こんな記事を書いてみたくなったというわけです。
久しぶりに、アイドルについて掘り下げてみることにしたせいか、前置きが1本分のコラム分ぐらいになってしまったが、よかったら、のんびり楽しんでいって下さい。
きっと、この先の人生が光ります。
生まれ直したい方もぜひ。
◆ 若さと違う「鮮度」という魔物
アイドルというのは、常にステージに立った時が生まれた瞬間で、生まれ直しの瞬間でもあると思っている。
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