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岡田淳志「公務員が人事異動に悩んだら読む本」

この本が出たのは2022年3月。もし今から15年くらい前にこの本を読むことができていて、かつ、この本で紹介されている自己理解、ジョブ・クラフティング、キャリアデザインを実践してみていたとしたら、もう少し違う場所に自分は立てていたのではないか、と思います。

実はこの本を購入したのは、出版されてすぐ。けれど、私はこれをすぐに開くことはありませんでした。なぜかといえば、その時、異動したばかりだったからです。
もちろん異動する可能性は想定して準備をしていましたが、そうは言っても「いつまで」という辞令というわけではないので、きりのよいところで区切ることもできるわけではなく、いろいろやらなければいけないことがありました。

そして今回、異動の内示がなかったので、落ち着いてこの本を読むことができました。

これは長年人事担当を務めた地方公務員の方が書かれた本です。私は人事担当になったことはありませんが、研修事務を担当していたこともあり、近場で人事担当の方たちの姿勢を見る機会もありました。そんなこともあり、本当に色んなことを考えながら、配置を決めているのだということを理解しているつもりです。
しかし、私の悩みは人事異動ではなく、異動した後の課の配置でした。
過去に、庶務担当になることが非常に多かったのです。そして3年くらいで異動。また庶務、ということもありました。

本の中に、こんなことが記載されていました。

組織の観点から異動されやすい職員、異動されにくい職員について、一言でまとめると、課へ「貢献」しているかどうかによるといえます。
「貢献」の具体例としては、次の4つが挙げられます。
①新たな課題などに自ら率先して取り組み、課の業績に貢献している。
②リーダーシップを発揮し、周りを巻き込みながら、課の業績に貢献している。
③他者を思いやり、気配り・目配りをして周囲の仕事も助けながら、職場の良い雰囲気づくりに貢献している。
④他の課や部局との調整を図り、理解を得ながら進め、課の業績に貢献している
これらに該当する場合は異動されにくいといえるでしょう。一方、一つも当てはまらない場合、異動されやすいともいえます。

本書より

庶務といえば、まさに③と④の仕事です。まあ③の後半の雰囲気づくりに関しては、厳格すぎて良い雰囲気にならないこともあるかもしれませんが、でも前半に関しては、気配り・目配り、本来なら、締め切りは各自が守らなければいけないのに遅れがあれば督促したり、どれだけ他の人を手助けしているか。
けれど、庶務以外の業務を担当していたとしても、定型度の強い庶務の仕事がある限り、①や②のような成果は出しにくいものだと思います。

もちろん庶務担当でも成果を出している方もいらっしゃるのでしょうけれど、私は庶務担当だったがゆえに、自分の持つ仕事の自由度の範囲が狭く、せいぜい、業務の効率化的なことしかできず、もやもやとした気持ちを抱えていたものです。
特に、自由度の高い仕事に夢中になっていた翌年に、係異動して庶務担当になった時には、一夜にして目の前が真っ暗になるような気持ちになりました。

「庶務は他の人には務まらないから、しょうがないよ」
そういわれても、何も励みにはなりませんでした。庶務をやっている間はできて当たり前、間違えれば、私一人ではなく上司たちの確認作業があるはずなのに私が悪いような気持ちになりました(それは私の被害妄想だったのかもしれませんが)。
そうやって、実質14年くらいの勤務の間に9年間庶務をやってきました。
9年目の時に、こんな投稿をしました。

この時は匿名だからこそ、だったのですが、今は結構カミングアウト?しています。

こんなわがままを言っていいのだろうかという気持ちもありましたが、これを書いて投稿して、さらに、HOLGの加藤さんが評価してくれたことがとても嬉しくて、「声をあげていいのだ」と思いました。

書いたその年の異動希望調査の中に、人事課の職員と面談を希望するかどうかの質問があり、私は希望する、を選びました。そして庶務担当のことについて相談しました。人事担当は私の不満をよく理解してくれました。
けれど、庶務担当は課長権限で決めるものであるから、人事課としては何もできない、と言われました。投稿に書いたように役立つこともあることは認識しているから、順繰り経験するような仕組みをつくれないか、というようなことも話をしてみました。
けれど、その後、庶務経験者を増やすといったことは行われていません。

本を読みながら、こんなことを考えてみていました。
仕事に対して熱い思いはあるのに、自分から言うのは生意気と思われるんじゃないか、とか、自分よりもっと適役がいるのではないか、と遠慮してしまい、結果として、やりたくもない仕事をやりながら、他の人の仕事をこんな風にやればいいのにと妄想しながら、もやもやする20年以上を過ごしてきてしまったわけです。

実はこの行動を起こした翌年、できてまだ3年程度の部署に異動することになり、そこで新しい仕事を経験することになりました。その後の4年間は、本当に私にとって宝物の時間です。今まで知らなかったことを学び、ノウハウを身につけ、庁内調整の進め方、公民連携のやり方、大変なこともたくさんあったのですが、今の私の半分以上はその期間に身につけ、成長したと言っても過言ではないです。

この本には、人事異動との向き合い方に加え、自己理解、ジョブ・クラフティング、キャリア・デザインについても記載されています。

自己理解とは、自分自身の価値を知覚し、人事異動で「うちの部署に欲しい」と期待される職員になるための足掛かりにすることです。これまでの自分のキャリアを振り返り、異動などによってどのような心の動きがあったかを振り返ることで、自分を理解します。

ジョブ・クラフティングとは、自分の仕事を自ら手作りしていく、作り上げていくことです。タスク境界、関係的境界、認知的境界の3つの次元で工夫を行っていくことです。
①タスク境界の変化=仕事の中身がより充実したものになるよう、仕事の量や範囲を変化させる工夫
②関係的堺界の変化=仕事で関係する人々との関わり方を変えることで、仕事への満足感を高める工夫
③認知的堺界の変化=仕事の目的や意味を捉えなおしたり、自分の興味・関心と結び付けて考えたりすることで、やりがいを感じ、前向きに仕事に取り組む工夫
これを繰り返すことで、少しずつ仕事が自分のものになっていくといいます。

そして、キャリア・デザインとは、一般的には「これからのキャリアの方向性とその方法を描いていく、設計していく」というイメージがありますが、著者が大切だと考えるのは、「仕事をしながら徐々に自分らしいキャリアを形作っていく」ということだといいます。
様々な偶然を積み重ねて、必然的な自分のキャリアとしていくような印象を受けました。

今はこれまでの自分のキャリアに不満を感じているわけではありません。結果として今があると感じています。ですが、もし、もっと早くから能動的に考えていることができたとしたら、どうだっただろうと妄想したりしてしまいます。

本書の中では様々なキャリアの基礎理論が分かりやすく紹介されていて、実際に手を動かして考えてみるとよいのかな、という気がしました。
私も、キャリアチャートを作成してみて、異動した直後はショックに陥るおのの、自分の興味・関心と結びついてモチベーションにつながってきていた、ということに気付くことができました。
そして、経験を経ていく中で、異動後にモチベーションを持てるようになるまでの時間がどんどん短くなってきているような気がしました。

次年度も1年間、ジョブ・クラフティングを意識して仕事に取組んでいきたいと思います。

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