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ココナッツおじさん

わたしはよく面白い人に出会う。レストランで隣のテーブルになった人、道で目があった人、偶然の一瞬の巡り合わせで、ほんのひととき出会う人々が、わたしにインスピレーションを与えてくれる。飛行機で隣に座った人が、キーパーソンということもよくあった。

エアリアルヨガのティーチャートレーニングを受けに、アメリカのアイオア州に向かう飛行機で、わたしを待ち受けていた人、それは「ココナッツおじさん」だった。

アメリカの国内線の搭乗口でのこと。ふと近くにいた男性の姿が目に入った。褐色の肌に、髪の毛はもじゃもじゃ、ヒゲだらけで、眼光がするどい。タンクトップにハーフパンツ姿でサンダルをつっかけて、仁王立ちをしている。無人島で生き延びたロビンソン・クルーソーみたいな力強さが全身からみなぎっていた。あまりにもワイルドすぎて少し恐ろしくなり、こう願った。
 
 「どうかこのおじさんと隣同士になりませんように!」

予感は的中した。飛行機の座席について、ゆっくり本でも読もうかと思っていたら、あのおじさんが隣に座ってしまったのだ。にっこり「ハロー!」と微笑えむおじさん。

どこにいても、いろんな人に声をかけられてしまうわたし...(涙)

離陸そうそう、おじさんは袋の中からなにやらゴソゴソ取り出して、ムシャムシャ美味しそうに食べていたのだが、それをわたしにも分けてくれた。岩みたいにゴツゴツした手で、無造作にちぎって、手渡してくれたものは、なんと生のココナッツだった。

繊維質のココナッツ。噛めば噛むほど、口のなかに甘みが広がった。自然の優しい甘みに、長旅の疲れがふっとんで心が緩み、このおじさんと話しをしてみたいな〜、という気分になってきた。

おじさんは、実はとっても優しい目をしていて、温かな人だった。わたしは、これから、サーカススクールを立ち上げること、エアリアルティシュー (布を使ったサーカスの演技)をメインで教える予定だが、はじめての人向けに、エアリアルヨガも教えたいので、エアリアルヨガのティーチャートレーニングを受けるために、アイオア州のデモインという町に行くことを話した。
 
「エアリアルティシュー」という言葉を聞いた途端、おじさんの目は、子どものようにキラキラと輝きだした。「あの、布をぶら下げるやつかい?」と興味深々なおじさん。なんと、おじさんは自分のヨットのマストに、エアリアルティシューをぶら下げているらしい。

 ( 後に送られてきた写真を見ると、南国で上半身裸のおじさんが、黄色のエアリアルティシューにぶら下がっている。青い海に、白い船、黄色い布と、おじさんの茶色い肌がコントラストになって、とても眩しい一枚だった。)

このロビンソンクルーソーみたいなおじさんは、一体何者なんだろう?

聞けば、このおじさん只者ではなかった。ヨットを製作している人で、ビジネストリップでマレーシアからの帰りだという。おじさんの作るヨットは、陸では車のように走り、海の中で船になるらしい。そして、一年の半分は、山に入り、いろんな木々の種を採集し、その種を売って暮らす。自然の中で、ソーラーパワーの手作りの家で、エコロジーな生活を送っている。

すごい人と出会ってしまった!人生は、ベストなタイミングで、強烈な人との出会いをもたらしてくれる。そして、わたしの生き方にインスピレーションを与えてくれるのだ。

おじさんの手がゴツゴツしていたのは、ヨットを製作したり、木々をかき分けて、種を探すから。その力強い眼差しは、自然の中で生き抜いているから。自然に畏敬の念を持ち、自然と共存しながら、自分の信じた道を探求し続ける人々。彼らの穏やかで強いエネルギーは、とても眩く美しい。

〜つづく〜

《 心を開いてみよう》

実は、あなたの側には、とっても面白いストーリーを持っている人がいるかもしれません。あなたの生き方に、インスピレーションを与えてくれる人は、有名アーティストや、億万長者、ベストセラー作家だけじゃなく、もしかしたら、今日電車の中で隣り合わせになる人かもしれません。

知らない人にある程度の警戒心を持っておくことは、身を守るために必要なことですが、もし心の声が、「この人のことを知りたいな」とささやいたら、にっこり微笑んで会話をはずませてみましょう。

わたしたちの潜在意識は、いろんな形でわたしたちに、未来への気づきを教えてくれているそうです。それは、新聞の見出しとなって目に飛び込んできたり、近くにいた人の会話の中に潜んでいたり、予期しないときに、わたしたちにささやきかけてくれているといいます。

普段何気なく過ごしている間に、ふとやってくる未来へのヒント、あなたは見逃していませんか?












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