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オーケストラは弦楽四重奏から始まった


Chère Musique

イントロダクション

初めて聴いた友人のピアノ三重奏“OttoTrio(オットー・トリオ)”の演奏会。
とても感動したということと、生徒さんに重奏の生演奏を聴いていただけて嬉しかったことから、重奏というものについて少し書きたいと思いました。

現代ではオーケストラの方が聴ける機会が多いかもしれませんし、そういう経験という意味でも重奏とはどんなものなのかを知らない方も多いかもしれません。
例えばピアノ五重奏というと「ピアノが五人!?」という勘違いもよく聞きます。

音楽が変化してゆく歴史の中で、とても大切なことだったということを、そしてその重奏という音楽がどんなにステキで魅力的なものなのかを、私ももっと知りたいですし皆さんに知っていただきたいです。

通奏低音

ポリフォニーといって複数のメロディが絡み合うように演奏されるのが当たり前だったバロック時代は、そのようなアンサンブル演奏にはすべて“通奏低音”という音楽の土台を支えるパートがありました。
ベースラインと和音の響きをあらわすパートです。

ベースはチェロ、和声はチェンバロなどの鍵盤楽器で演奏することが多く、曲によってはこの二つのパートをオルガン一台で、ということもあります。

楽譜にはベースラインしか書いておらず、その音の下に小さな数字が書き添えてあります。
チェンバロはそれだけの楽譜を見て、即興的に和音を響かせてゆきます。
記号や数字を見て即興演奏するという点では、現代のコードネームと似ていますね。

通奏低音は、かなりハイレベルな音楽能力を必要とする演奏です。
この時代は、いわゆるクラシック音楽を演奏するのは、天才的な才能を持つプロばかりだったのです。

通奏低音から弦楽四重奏へ


というわけで、通奏低音の演奏には専門的な知識と技術が必要でした。

バロックの終期から古典期にかけて、クラシック演奏するのはアマチュアもたくさん、という時代になってゆきます。

そこで、即興的に頭脳と才能で鳴らしていた和音を、複数の楽器で一音ずつ分担するようになります
→ということは、鳴らすべきすべての音を楽譜に記さなければならなくなりました(今では当たり前)。

メロディ(通奏低音以外の主役級パート)+和音(音がきちんと書いてある)という形。
これをホモフォニーといいます。

そしてその和音の響き方をいろいろと試行錯誤する時期があり、、、

四声体が一番安定しているということを発見します。
くわえて、弦楽器とその奏者は他の楽器よりもたくさんいるので集めやすいという状況。

これがまとまっていって『弦楽四重奏』という演奏形態がに落ち着き、アンサンブル演奏の主流となります。

弦四から管弦楽へ


『弦楽四重奏』というのは、弦楽器の四声部
1st Violin, 2nd Violin, Viola, Cello。

この頃から広い場所で大勢が聴いている場で演奏することが多くなり、音を大きくするためにこの四つの各パートを複数台にしようということになります。
=これがオーケストラ(管弦楽)という演奏形態、交響曲という作曲形態の元祖です。

弦楽器だけでは限界が来て、管楽器を入れ始めます。
まずは弦楽器に溶け込める自然な感じのするオーボエとホルンが入ります。
この二つは自然界の音を表すの楽器として古代からの歴史を持っているから自然なのです。

だんだんとその他の木管楽器、金管楽器が入ってきます。

そして管楽器の一台の音量が大きいため、バランス良くするために弦楽器をもっと増やしていきます。

やがて『二管編成』という形に落ち着きます。
これは弦楽器二台に対して管楽器一台という、古典期の管弦楽の典型です。
これがさらに時を経て今の複雑なオーケストラへと発展してゆきます。

重奏の編成

重奏は楽器の編成が決まっています。
これを覚えているだけで、その演奏を聴くことがさらに興味深くなると思います。

ピアノ三重奏 :ヴァイオリン+チェロ+ピアノ
ピアノ四重奏 :ヴァイオリン+ヴィオラ+チェロ+ピアノ
ピアノ五重奏 :ヴァイオリン2+ヴィオラ+チェロ+ピアノ
弦楽三重奏 :ヴァイオリン+ヴィオラ+チェロ
弦楽四重奏 :ヴァイオリン2+ヴィオラ+チェロ
弦楽五重奏 :ヴァイオリン2+ヴィオラ2+チェロ
弦楽六重奏 :ヴァイオリン2+ヴィオラ2+チェロ2
ヴァイオリン・ソナタ :ヴァイオリン+ピアノ
チェロ・ソナタ :チェロ+ピアノ
フルート・ソナタ :フルート+ピアノ
クラリネット・ソナタ :クラリネット+ピアノ
ホルン三重奏 :ホルン+ヴァイオリン+ピアノ
フルート四重奏 :フルート+ヴァイオリン+ヴィオラ+チェロ
クラリネット五重奏 :クラリネット+ヴァイオリン2+ヴィオラ+チェロ
木管五重奏曲 :フルート+オーボエ+クラリネット+ファゴット+ホルン

エンディング

いかがでしょうか。
まだまだ音楽の歴史を勉強中なので、初歩的な知識に過ぎないものですが、少しだけご紹介してみました。
少しでも“重奏”に興味を持っていただけたら嬉しいです。

私は昔ホルン吹きだった、今はピアノを教えている音楽の先生です。
音楽を聴く側としてもこれからもたくさんの重奏の演奏を楽しみたいですし、そのためにはまだまだ知らないこと知りたいことだらけで、もっと勉強してみたい、たくさん聴いてみたいです。
自分でもさまざまなアンサンブル演奏をしていきたいと思っています。


Musique, Elle a des ailes.

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