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【小論文過去問解説】鹿児島大医学部保健学科看護学専攻 令和6年学校型推薦

こんにちは。小論文研究室@bitsAcaです!
こちらの記事は、受験指導のプロ北島と小論文元全国一位の賀茂がタッグを組んで作成しています。

私たち小論文研究室の元には、毎年看護系の学校や学部を目指す生徒さんが来られます。医療系では必ずと言っていいほど、小論文や面接の試験が出題されます。特に、看護系では、医療者としての資質を問われることが多いです。その例として今回は鹿児島大の過去問を解説してみました。

過去問はこちら

https://www.kagoshima-u.ac.jp/exam/2024-625.pdf

講評

百三十年前、完全な男性社会だった軍隊で、看護師の地位を確立した大変な戦略家・・・この言葉はだれを表したものでしょうか。貴族出身の奉仕者の立ち位置から看護師のプロフェッショナル化に成功した、ナイチンゲールです。

ナイチンゲールと言えば「戦場の天使」「クリミアの天使」と評されるように、利他的な看護師のステレオタイプと思われるところがありますが、そういう面だけでもありません。 革新的な衛生管理・健康管理の徹底による、兵士の死亡率の改善もしまいた。 野戦病院での現状を分析するためにレーダーチャートやグラフを用いた医療統計学を体系づけました。また、専門的教育を施した看護婦の必要性を提唱し、世界初の看護学校設立もしています。さらには、近代的な看護体制を確立をし、今も読み継がれる看護教育教本の執筆、ナースコールやナースステーションの考案など近代的病院建築スタイルの提唱もしています。極めて優秀な医療従事者と言えるでしょう。

ここまでなぜ、ナイチンゲールの話をしたかというと、看護師という仕事は、「利他的な献身的な働きをする人間」という面が目立ちがちですが、その誕生の段階からすでに、極めて高度な医療行為をする専門家でもあることを示したかったからです。看護学科の皆さんが極めて厳しいカリキュラムで学ぶ理由は、「善良な市民であること」「高度な技術と知識に裏付けられた専門家」であらねばならないからです。

そんな看護師さんが目の前にするのは、たくさんの心身を傷めた患者さん。このたくさんの患者さんを救うには、冷静な判断と、高度な専門家としての心得です。利他的な精神は、看護師の自己実現・モチベーションの向上・カタルシスの体験など、心身ともにハードな業務における重要な支えではあります。ですが、それにすべてをささげると身が持たない・バーンアウトするんじゃないかしら?と疑問を呈したのが筆者です。医療従事者としての看護師は何を最重視するか、医療行為によりたくさんの患者を救うことであることを示したといえましょう。

解説

問1
利他的だと、我が身を賭して患者に強い思いをもって医療行為に当たり、それが重なると、疲弊してしまいます。また、懸命な看護が実を結ぶとは限らないのも医療の現場です。疲弊している中で、治療がうまくいかなかった時などにバーンアウトしがちです。人間そこまで強くないですから。
限られた患者を見るならともかく、一般的な多数の患者を診て、できるだけ沢山の患者さんに元気になっていただくのが最大のミッションである現代の医療現場では、「利他的な精神」はなじまないことが問題と言えましょう。現場にいる看護師もそれに該当します。

問2
利他的な感性で、一人一人の患者さんに向き合い、細やかな医療サービスを提供し、病院患者と手に手を取って高いQOLを実現する…それはとても理想的なことではあります。
しかし、現状を見ると、コロナ禍で散々見せつけられたように、病室はパンクし、治療は隅々まで届かず、医薬品すら足りない状況で、満足な報酬と休みもないまま現場から去った医療関係者がいたことを代表に、担い手もハコもツールも限界なところがあります。
「とりあえず目の前にいる沢山の患者さんを救いたい」というシンプルな看護師を含めた医療関係者の願いさえなかなかかないにくいのが現状です。

利他的すぎる医療従事者は、他の人の尊さをよく知っているだけに、「大事」な人が多いです。その沢山の思いを抱えすぎては、身が持たなくて。バーンアウトし、倒れてしまいます。倒れた医療関係者は、少数の思い入れのつよい一部の患者をすばらしい形で治療するのですが、倒れた結果、たくさんの患者さんが残されます。残酷な言い方をすれば善良な利他的な感性が生み出してしまったトリアージと言ってもよいでしょう。悪気はなくても、たくさんの患者を救うのがメインのミッションの医療現場においては、少数の「大事」な患者以外においては同じ事です。また、残された他の看護師ほか医療関係者の負担もかかるので、その現場全体のQOLも医療の質も下がります。

だから、病院にはたくさんの人の命を守るため、医療現場の環境を守るために、利他的になりすぎないためのルールがあるのです。例えば、診療時間が決まっている、差し入れを受取らない等です。医療行為そのものが極めて利他的な行為なので、そこに喜びを見出すよう看護師を含めた医療関係者は努めて、そう割り切る必要があると考えられます。

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