一休
以前パーティーを組んでいた王子、勇者、神官、弓使い、盗賊が魔女に呼び出された。再会の盃を交わしたあと、魔女は言った。盃の一つが【うそつき】となる盃だった、と。翌朝、魔女は変わり果てた姿で見つかる。犯人は誰か。【うそつき】の盃を飲んだのは誰か。
突然届いた弁護士からの封筒。 そこには遺産相続の候補者となったと書かれていた。 同時に殺し屋は連絡を受ける。 遺産相続の話し合いに参加してターゲットを始末しろ。 簡単な仕事のはずが、依頼人がルールを反したことで、物語はいろいろなエンディングを迎える。 マルチエンディングストーリー 殺し屋は2度死ぬ。
マーダーミステリー2作目。5名【探偵役1名+容疑者?役4名(+進行役?GM1名)】 高校の別館で起きた階段転落事件。被害者【フクブ イチヨ】は目が覚めると【夜】の闇に囚われていた。ここから出るには突き落とした犯人を見つけなければならない?!
『ジョセフィーヌ嬢』 途端に私の言葉は歯切れが悪くなる。 『……ですか』 混乱してとっ散らかっていた記憶があるべき場所におさまり、私は“ジョセフィーヌ嬢と過ごした日々”を思い出していた。 私にはもったいない女性だ。 ジョセフィーヌ嬢には幸せになってほしい。 なので、こんな内縁の妻や子(形だけ)がいて投獄されて領地やら家督やらなくして色々面倒事を抱えたおっさんよりは、前途有望な若者と結ばれてほしい。 ほしいのだけれど。 『後悔、しませんかねえ?』 誰が?、と二
正妃の問いに“わたし”アーモンド公爵は反射的に答えた。 『隠居して田舎で農業がしたいです』 偽りのない言葉だった。 幽閉されている間、暗闇の中で耐えられたのは“わたし”の脳内ではそれを実現させていたからだ。 『は?』 無辜でありながら牢に放り込まれ、長年身を粉にして尽くしてきた王に弁解する余地すら与えられなかった。 粗悪な環境で満足な食事など望めず、光を見ることさえわずかで、ただ死を待つの身だった。 そのような状況で正気を保てたのは、【これは現実ではない】と置か
正妃の説明はこうだった。 無実の罪で投獄された“わたし”は、正妃やコール公爵たちの嘆願により釈放されるはずだった。 王からの伝令が届く前に“わたし”は何者かにより毒が盛られ、瀕死の状態。 身体だけではなく、飲まされた者の魂すら蝕む強力な毒。 正妃の叔父が直々に解毒の術を施すこととなったが、長き牢屋生活で衰弱が激しく、このままでは耐えられない、と判断された。 “わたし”が生き延びるためには、いったん肉体と魂を引き剥がす。 それから、“わたし”の肉体に誰かの魂を、引き
『おじさま』 音もなく、女官の背後から正妃が現れた。 『今まで黙ってみてましたがまどろっこしい。私が説明いたします』 “わたし”は二人を見比べた。 ジョセフィーヌ嬢の母親は竜族の身分の高い家の出。 つまり。 『あなたたちはジョセフィーヌ嬢の血族かなにか?』 正妃は持っていた扇子を女官に向けた。 『わたくしは竜族の族長の娘。ジョセフィーヌ嬢とはもしかしたら従姉だったかもしれないかしら』 え? “わたし”は女官だった者を見た。 いつの間にか、女官ではなく、一
『予想より貴殿が賢くて、我としては歓喜の舞を披露したいところだが』 甲高かった声は地を這う如くに低く。 女官の光る眼が“わたし”を見つめた。 『それはご遠慮願いたい、さて』 ジョセフィーヌ嬢を装う必要がなくなったので、“わたし”も口調を戻した。 『あなたは何者だ?』 “女官”だった者の手を払いのけると、“わたし”は腕を組んだ。 得体のしれない者と対峙しているせいか、無意識に身体がこわばっていく。 『誰だと思う?』 と、くくく、と低い笑い声をあげた“女官”。
女官による“ジョセフィーヌ嬢”に起こった出来事をここまで聞かされて、“わたし”の頭の中は疑問符だらけだった。 まず、“ユリウス”様とは、“わたし”だった件について。 コール公爵家と同等で、大臣やってて、神殿長と間違いを起こした娘を子供ごと押し付けられた男がこの国にもうひとりいたら別だが、どう考えてもジョセフィーヌ嬢の想い人ユリウスは“わたし”だ。 ジョセフィーヌ嬢は両親のことで、王家、竜族ともに本人に罪はないが、遺恨がある。 “わたし”の祖母は王族の出。 血の繋がり
公爵家で暮らしで時折忘れそうになるが、“わたし”は王国と竜族から追放された両親の娘。 コール公爵の後ろ盾があるにせよ、“わたし”を迎え入れることは王の右腕であるユリウス様には得にはならない。 ユリウス様は困ったようにくせ毛の頭を手で押さえた。 『小娘の戯言とお聞き流し下さいまし』 “わたし”は目を伏せた。 これ以上、ユリウス様の困惑した顔を見ているのは辛かったからだ。 『ジョゼフィーヌ嬢』 おさえきれない想いが頬を涙となって流れ落ち、“わたし”はハンカチで顔を覆
有力な貴族の男性が複数の妻を娶ることが普通のは知っていたが、自分がその複数の妻の立場になろうとしていたのを知って、ひどく“わたし”は混乱してしまった。 『違うのよ、ジョゼフィーヌ』 動揺する“わたし”の手を公爵夫人は掴んだ。 『ユリウス殿の“妻”とされているノートリアはユリウス殿の遠い親戚の娘。神殿で下働きをしている際に神殿長との子供を授かり、世間体のためにノートリアの両親がユリウス殿に娘とその子供を押し付けただけ』 『公爵夫人』 ユリウス様の声がほんの少し尖って、
ユリウス様と初めてお会いしたのは秋の終わり。 コール公爵が陛下と近くの森に狩りに出掛けられた帰りに、ユリウス様を屋敷にお誘いした。 『やあ、はじめまして』 頭に葉っぱをつけたまま、ユリウス様は“わたし”に挨拶をした。 『ユリウス殿、御髪(おぐし)が』 『おや、失敬』 公爵夫人が小声で注意すると、ユリウス様は慌てて頭の葉っぱを払い落とした。 狩猟の装備のままのユリウス様は“わたし”よりひと周りほど年上。 少し垂れ目で、笑うと目尻にしわができた。 身だしなみに気
町は王国の領地。 長老は役人に“わたし”たちのことを伝えた。 王宮からの使者が到着したのは葬儀を始まる、すこし前で、それが終わると葬儀場の前に馬車がやってきた。 “わたし”はそれに乗るしかなく、連れて行かれたのは大きな塔だった。 薄気味悪い煉瓦の建物で、到着早々“私は”そこの一室に閉じ込められた。 ひどい扱いは受けなかったが、食事や身の回りの世話は最低限。 “わたし”には誰も話しかけてこなかった。 そこで働く役人たちのひそひそ話からここが罪を犯した身分の高い王族
“わたし”ジョセフーヌの両親は大きくなるまで【普通】と違うことを知らなかった。 “わたし”の父は薬草を集め、それを加工して売り、生計を立てていた。 母は体が弱く、家事一切は父が仕切っていた。 父が薬草を探しに出かけるときのために、と父は“わたし”に料理や掃除などを教えてくれたので、10歳になるまでには家事をこなせるようになっていた。 森の一軒家。 周りに民家はなく、町までは遠い。 楽しみといえば、母が教えてくれた手芸くらい。 母のように父の大きなマントに印をつけ
自分では制御できないくらいに涙が流れ、頭の中がぐるぐるし始めて、気づけばベッドの中。 泣きすぎたせいか目の端が痛くて仕方ない。 見回せば、多分夜。 闇の中に一人ポツン。 ところでユリウスって誰やねん。 考えても答えは出ないし、喉がかわいたので起き上がった。 少しだけ開いていたカーテンから差し込む月の光を頼りに、テーブルにたどり着いた。 水差しがおいてあったので、カップに注いで、ゴクリと飲み込めば、一息つけた。 “私”の記憶が曖昧にしてもわからないことが多すぎる
「えっと私、ここでお話し相手になるのでしょうか」 正妃の離宮に留まることになった私ジョセフィーヌ。 門の外待機の陛下と公爵は追い返され、公爵夫人と二人、豪華な客室に案内された。 それまでは人目があるから、と遠慮して話せなかったが、公爵夫人の真意を知りたくて質問した。 「ジョセフィーヌ。お話し相手は考えなくて良いのよ。しばらくこちらで静養なさい」 静養。 たしかにジョセフィーヌ嬢の身体は疲れ切っている。 食事をした後、急に眠くなってしまい、倒れたりしているし。
王宮につくのかと思えば、正妃のお住まいになる場所は山奥だった。 切り立った崖と渓谷に囲まれた、孤高の離宮。 「わたくしたちの養女ジョセフィーヌにございます。ミーナスタコラサッサ様」 別の馬車でついてきていたはずの、王と公爵は門から入れてもらえず、外で待機。 私と公爵夫人だけが中に入れてもらえたのは龍の血筋のせいらしかった。 「お久しゅう、おばさま」 豪華な椅子に腰掛けて扇子で顔を隠した正妃の声は涼やかに響いた。 まだ幼い頃に一度だけ正妃のご尊顔を拝見させていただ
ガタゴト、ガタゴト。 公爵家の馬車といえども、山道を行けば揺れる。 「ジョセフィーヌ、緊張しなくてもよろしくてよ」 隣に座る公爵夫人が私の手を握りしめた。 「大丈夫ですわ」 口元をハンカチで覆いながら、私は答えた。 ハンカチで隠してないと、怒りのあまり震えている唇が見えてしまうからだ。 一週間前、陛下が色々理由をつけて公爵家を訪ね、具合が悪いから失礼します、と体よく断ったのに、私との食事会を強要した。 側妃の話が出たら、不敬だろうがなんだろうが、きっちり断ってやろ
王と正妃との仲違いは種族の違いというよりプライドとプライドのぶつかり合い。 最初の対面でのボタンの掛け違いだ。 龍族といっても正妃は人型。 龍化するのは一族の長のみなので、正妃の姿形は人間と変わらないのだが、王がそのことをからかったのだ。 『貴女にも尻尾はあるのかい?鱗の生えた尻尾が』 多分、まだ若かった王に照れがあったせいでの軽口だった、と思うのだが、同じく若かった正妃は激怒した。 すぐ謝罪すればよかったのだろうが、売り言葉に買い言葉。 『わたくしに尻尾があっ