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テレビレビュー『ゆとりですがなにか』(2016)若い人たちも若い人たちなりに大変

ゆとり世代とは

「ゆとり世代」
2002~2011年の間に
義務教育を受けた世代。
(’87年4月2日~
 ’04年4月1日生まれ)

それまでの詰め込み教育を
省みた文部科学省は、
’80年代から学習指導要領の
見直しを図りました。

大幅な授業時間の削減が
実施され、
2002年から完全週休二日制に
移行しています。

なお「ゆとり教育」とは、
公称ではなく、
マスコミによる
造語なんだそうです。

(’80年度に文部科学省から
 出された学習指導要領に
 「ゆとりと充実」と
 掲げられていたのは事実)

なお、2008年頃から
「脱ゆとり教育」が提起され、
2011年度以降は、
さらに学習指導要領が改定、

近年は感染症拡大の影響もあって、
さらに教育の在り方が
変わってきています。

ゆとり第一世代、
三人の葛藤

6年前のドラマです。

なぜ、今さら、
このドラマを観ようと
思ったのかというと、

先日ドラマレビューで紹介した
『初恋の悪魔』
同じ方が演出をしており、

脚本は、宮藤官九郎!

「これは観なくては!」
と思いまして。

タイトルが示す通り、
本作は「ゆとり世代」を
中心とする若者たちの
青春を描いたドラマです。

脚本家の宮藤官九郎は、

「社会人経験ゼロの私が、
 45才にしてはじめて挑む
 社会派ドラマ」
と称しています。

とはいえ、
いつものクドカン節は、
随所で発揮されており、

ヒューマンドラマ
でありながら、
コメディー要素も強い作品です。

主人公の坂間正和は、
(岡田将生)
食品会社の営業マンです。

「ゆとり世代」の第一世代、
29歳の悩める青年でした。

同期入社の宮下茜と
(安藤サクラ)
交際していますが、

彼女は順調に出世し、
エリアマネージャーになる一方で、

坂間の方は、
居酒屋への出向を命じられ、
実質、左遷のような
形になっています。

後輩のトラブルに巻き込まれ、
「パワハラ」と訴えられ、
実家の造り酒屋も
ゴタゴタが絶えません。

そんな坂間が知り合ったのが、
同い年の青年の二人でした。

山路一豊(松坂桃李)は、
小学校の教師で、
児童たちの人気者です。

ところが彼にも
人には言えない悩みがあります。

それは29年間、
異性と交際したことがない
「童貞」だということです。

仕事でもいろいろと
トラブルが絶えません。

なにせ、今の子どもと
親たちはいろいろと
難しいところがあるので、

ちょっとしたことが
大きなトラブルに
発展しかねないのです。

親たちからも、
周りの同僚たちからも
責められ、

ストレスの多い毎日を
送っています。

もう一人の主要人物、
道上まりぶ(柳楽優弥)は、
名門中学に首席で合格したほどの
秀才でした。

ところが、その後、
家庭の複雑な事情もあって、
大学受験に失敗、

現在では、11浪中の浪人生です。

彼には内縁の妻と幼い子どももいて、
常にトラブルが尽きない存在に
なっています。

「ゆとり第一世代」
という共通点以外に
接点のなさそうな三人が

どのようにして出会うのかは、
ぜひ、ドラマをご覧になって、
確かめてみてください。

若い人たちも
若い人たちなりに大変

前述したように、
このドラマが放送されていたのは、
今から6年前です。

その頃の私は、
自分よりも下の世代に
寛容な人間ではありませんでした。

厳密にいえば、
今もそういう部分が
あるかもしれません。

私も上の世代の人から見たら、
全然甘いとは思うんですが、
私は私なりに苦労してきました。

特に、学生時代は、
特定の部活に
長く所属することも
なかったので、

「先輩」との付き合い方が
よくわからなかったんですよね。

そんな私ですから、
社会に出てから、
目上の人たちによく叱られました。

若い頃は、割合、
素直に目上の人の言うことを
聞いていた方だと思います。

ですから、自分が
目上の立場になった時、

てっきり、
後輩が自分の言うことを
素直に聞くものだと、
決めつけていました。

ところが、
現実は違ったんですよね。

ストレートにものを言うと、
反発されたり、
逆恨みされたり、
極度に落ち込ませてしまったり、

というのを何度も繰り返しました。

このことに関して、
どちらが悪いのかというのは、
すごく難しいです。

今でも答えはわかりません。

ただ、一つ感じたのは、
「時代は変わった」
ということです。

私が若い頃にされたような
指導の仕方は今の人たちには、
合わないんですね。

そういったことは、
このドラマを観る前に
実感として持っていました。

しかし、このドラマを観て、
その直感が正しいということに、
より確証を得られたような
気がします。

言ってみれば、
彼ら、彼女たちも
被害者ですよね。

国が決めた
学習指導要領の改定が、

こんなにも社会に影響するとは、
それを決めた人たちですら、
思いもしなかったでしょう。

とにかく、彼ら、彼女たちは、
「叱られる」機会が
少な過ぎました。

それは子どもたちに
原因があるのではなくて、
社会そのものに原因があるんです。

でも、その代わりに
私たちは叱らなくて済む方法が
考えられるようになりました。

これは社会にとって、
大きな財産だと思います。

社会は変わるもの、
ずっと同じように
続いているようでいて、

日々、変わっていくものです。

そう理解したうえで、
新しい時代を生きてきた
彼ら、彼女たちの姿を見ると、

とても他人事には、
思えませんでした。

もしも、6年前に
私がこのドラマを観ていたら、
同じような感想を
持たなかったでしょう。

私も変わっていないようで、
変化してきているのだなぁ、
としみじみ思ったりもしました。

いつの時代でも
青春を描いたドラマは
輝いて見えます。

人間の葛藤が
「あるがまま」に、
表現されているからです。


【作品情報】
2016年放送(全10話)
脚本:宮藤官九郎
演出:水田伸生
   相沢淳
   鈴木勇馬
出演:岡田将生
   松坂桃李
   柳楽優弥
放送局:日本テレビ
配信:Hulu

【同じ脚本家の作品】

水田伸生が演出を手掛けた作品


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