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テレビレビュー『初恋の悪魔』(2022)note でも多くの方が取り上げたドラマ

note でも多くの方が取り上げたドラマ

すでに1か月以上前に
放送が終わっているドラマですが、
遅ればせながら観てみました。

本作に興味を持ったのは、
note でいろんな方が感想を
書いているのを
見たのがきっかけです。

私は自分が観るかもしれない
と思う作品は、
あまりガッチリ他の方の
感想を読まないもので、

ネタバレがありそうなところは、
避けつつ読んだ記事もありましたが、

どの記事からも
「おもしろい!」
というのが伝わってきたので、
私も観てみようと思ったわけです。
(妻が観ていたというのもある)

残念ながら視聴率的には、
今ひとつの結果だったようですが、

まぁ、今となっては、
あんまり視聴率も
重要ではないですよね。

むしろ、こういった
「おもしろいらしいよ」
という口コミで広がっていく
作品の方が長持ちします。

なんせ、今は動画配信も
充実していますから、

私のように、
ちょっと遅れて楽しむ人も
多いのではないでしょうか。

そして、全話を視聴した私は、
「ぜひともこの名作を
 多くの人に知ってほしい!」
と思い、こうして記事にしています。

稀代のヒットメーカー・坂元裕二

なんと言っても、
本作を語るうえで、
外してはならないのは、
脚本を手掛けた坂元裕二です。

坂元裕二は、
’90年代に『東京ラブストーリー』の
脚本家として注目され、

その後、多くのドラマや映画の
脚本を手掛けてきました。

一時期は、ドラマから
離れてゲーム会社のシナリオ作家
として活動していたこともあります。

(そのきっかけを作ったのが、
 ゲームデザイナーの故・飯野賢治氏。
 この辺の話は長くなるので、
 また今度ということで)

その後、2000年代に脚本家として復帰し、
以降も数々の話題作を世に送り出す
ヒットメーカーになりました。

本作は4人の人物を中心に描いた
ミステリアスコメディーです。

その4人とは、いずれも警察署に
務めながら、
総務課、生活安全課、会計課など、
捜査権を持たない者ばかりでした。

4人はひょんなきっかけで
知り合いとなり、

未解決事件や冤罪事件の
真相を追うことになります。

とは言っても、捜査権はないので、
その捜査方法は、
もっぱら秘密の自宅捜査会議に
よるものでした。

4人のうちの一人、
鹿浜鈴之介(林遣都)は、
休職中の刑事で、

この中では唯一、
現場での捜査経験が豊富な人物です。

彼は、熱烈な推理マニアで、
凶悪犯罪(特に猟奇的殺人)に
詳しい人物でした。

自宅捜査会議は、
おもに彼の邸宅で行われます。

広いリビングに
現場を忠実に再現した
模型を作り、そこに4人が集まり、
事件の詳細について語り合うのです。

わざわざ、私がこの部分について、
細かく書いたのは、

私にとって、本作の一番の
見どころが、ここだったからです。

マーヤのヴェールをはぎ取るんだ!

自宅捜査会議は、
現場を忠実に再現した模型の
前で行われると書きました。

こう書くと、模型の前で、
話し合う人たちのシーンが
思い起こされるでしょう。

もちろん、
そういう部分もあるのですが、
本作はその見せ方が
非常に秀逸でした。

この模型をもとに、
現場の状況を再現する前に、

鹿浜の
「マーヤーのヴェールをはぎ取るんだ!」
という合図で、

(「マーヤーのヴェール」は、ドイツの哲学者・
 ショーペンハウアーの言葉で
 「現実に捉われて本質が見えなくなる」の意)

4人はおでこに人差し指を当てて、
模型をのぞき込みます。

そうすると、4人が
あたかも事件現場に居合わせたように、
画面が切り替わるのです。

4人は透明人間のごとく、
現場で起こる事件の一部始終を
見ることになります。
(しかも、お互いの考察的な
 雑談も交えながら)

このシーンの見せ方が、
本当に素晴らしい作品でした。

もちろん、実際に4人が
タイムスリップして、
現場に居合わせたわけでは
ありません。

ところが、警察関係者である4人は、
現場のことが詳細にわかるほどの
情報を持っているので、

模型を前に、
話しているだけでも、
リアルな事件の詳細が
わかるというわけなんですね。

しかも、本来は事件の捜査権を
持たない人たちですから、
その「捜査してる感」に、
毎回、興奮した様子です。

その状況が観ている者に
しっかりと伝わってくる
映像になっていて、

そこがすごいところだと
思うんですよね。

4人で座って、
ただ喋っているだけの映像ならば、
ここまでの臨場感は出ません。

4人の脳内で起こっていることを、
CG の合成なども交えつつ、
しっかり伝わる画にしているからこそ、
この作品は優れているのだと思います。

一つひとつの事件の話だけでなく、
本作には、最後まで続く、
長い事件もいくつか出てきます。

それらが繋がったり、
徐々に全容がわかっていく
過程も素晴らしかったです。

いいところがたくさんある
作品なので、
まだまだ書きたいことも
あるのですが、

あと、一つだけ書くとすれば、
本作の音楽にも
触れないわけにはいきません。

私が本作を観る前に、
妻が先に本作を観ていて、
横から聴こえてくる音楽に
とても興味を持ちました。

本作では全編にわたって、
渋いジャズが BGM に使われています。

耳に入ってきた瞬間に
「かっこいい!誰?
 もしかして……?」
となったんですよね。

私の予想通り、
本作の劇伴を担当したのは、
SOIL & "PIMP" SESSION でした。

どうりで、かっこいいわけです。

かっこいいジャズと
暗めの映像が重なる瞬間が
たまりませんでした。

毎回、エンディング近くに流れる
タイトルロールは、
登場人物の顔写真を
ルービックキューブに見立てた映像で、

この映像だけでも
充分に観る価値があるでしょう。

かっこいい映像というのは、
こういうものです。

何度、観ても飽きません。


【作品情報】
2022年7月~9月放送(全10話)
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生
   鈴木勇馬
   塚本連平
出演:林遣都
   仲野太賀
   松岡茉優
放送局:日本テレビ
配信:TVer、Hulu

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