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映像で読み解く(20)MV『大迷惑』(1989)

サラリーマンの悲哀を歌った
ユニコーン1枚目のシングル

『大迷惑』はユニコーンの
1枚目のシングル曲です。

単身赴任のサラリーマンの
悲哀を歌ったもので、
ユニコーンの代表曲の一つとして、
幅広い世代に知られています。

MV は、ユニコーンが
オーケストラに混じって
演奏するもので、

実際の楽曲にも、オーケストラが
使われているんですよね。

オーケストラの音を入れたのは、
この楽曲がミュージカルを
イメージして、
作られたからでもあります。

歌詞の中にも
『ロミオとジュリエット』が
出てきますね。

指揮者もオーケストラも高速!

ミュージカルをイメージした
とは言っても、
曲調の方はミュージカルとは
似ても似つかぬパンク・ロックです。

オーケストラに紛れて、
ロックバンドが演奏する
という異色の MV のため、

オーケストラの演奏も
非常に速いテンポになっています。

指揮者や演奏者の動きが
あまりにも速いので、

もしかしたら、
早送りしているのか、
とも思ったのですが、

バンドの演奏自体は、
普通に見えます。

オーケストラとの
絡みなどを見ていると、
こういう速さで演奏し、
撮影したものだと推察できました。

意外と演奏を
じっくり魅せるタイプ

映像の最初と最後に
観客席も含めた
ホールの全景が映されますが、

観客席にいるのは、
バンドメンバー、スタッフ、
オーケストラの演奏者だそうです。

なんでも、エキストラを使う
制作費がなかったそうで、
映像を合成しているんですね。

それでも人員が足りなかったため、
1ブロックごとに個別に撮影し、
それらをさらに合成して、
観客を再現しています。

遠めのショットなので、
違和感なく見えますよね。

映像は上からの引きのショットで、
はじまります。

ステージにはオーケストラと
バンドの演奏者が
すでに待機していました。
(こういうのを「板付き」という)

やがて、舞台の下手(左側)から、
指揮者の男性と
ボーカル・奥田民生が登場し、
会場は拍手に包まれます。

この時に、画面には、
パフォーマーと曲名のクレジットが
英語で表示されるのですが、

文字のフォントは、
オーケストラの雰囲気に合わせた
格調高いローマン体です。

万年筆

画面がステージ中央を
斜め上から捉えた視点に
切り替わります。

指揮者が一段上の壇上に登り、
ボーカルの奥田民生が
両手を胸の下で組み、
姿勢を正すと拍手は鳴りやみました。

ここからが演奏のスタートです。

演奏がはじまると、
ステージを中心に捉えていきます。

MV というと、
曲のテンポに合わせて
画面がコロコロと
切り替わる印象が強いですが、

この MV では、一つのカットを
じっくりと映して、

指揮者、ボーカルの動き、
オーケストラやバンドの演奏を
しっかり見せていく作りですね。

オーケストラとともに、
正装に身を包んだメンバーが
激しいギターやドラムの
演奏を披露する姿が

なんともアンバランスで
独特な魅力があります。

タキシード

中盤でボーカルを
横から捉えたショットも
印象的でした。

最初は、観客の方を
向いているんですが、

「ボインの誘惑に」
という歌詞のところで、
カメラ目線になり、

両手でボインを表現する姿が
かわいらしいですね(笑)

その後、奥田民生が
ステージの中央から
縦横無尽に駆け回り、

あちこちに吠えたり、
ひざまづくなど、
ミュージカルさながらの
パフォーマンスを見せてくれます。

その様子をカメラが
いろんな角度から捉えていて、
画面の動きがあるのも
おもしろいですね。

これは前半の静的な場面が
あるからこその解放感でしょう。

【作品情報】
1989年公開
制作国:日本
アーティスト:ユニコーン
監督:板屋宏幸
レーベル:CBS・ソニー


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