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映画レビュー『マイ・エレメント』(2023)王道を斬新な手法で描く


彼女の夢とは

火・水・土・風の
エレメント(元素)たちが
暮らすエレメント・シティを
舞台にしたファンタジー作品です。

主人公は
火のエレメントの女性、
エンバーです。

エンバーの父は、
若い頃に海をわたり、
エレメント・シティにやってきて、

一代で「ファイアプレイス」
という雑貨店を築きました。

父の商人としての才覚もあって、
お店はいつも繁盛しています。

エンバーは小さい頃から、
店の手伝いをし、

その店を継ぐことが
自分の夢であると信じて
生きてきたのです。

しかし、その夢は
本当に自分が
願っていることなのか、

そんな疑問を持つ
きっかけとなる
一人の青年との出会いが
待っていました。

出会ってはいけない二人が
出会ってしまった?

一見、華やかで明るい
エレメント・シティですが、
暗黙のルールもあります。

それは自分とは異なる
エレメントとは
関わってはいけない
というルールです。

火と水が関わってしまえば、
火が水を蒸発させて
しまうかもしれません。

あるいは、水が火を
消してしまうかもしれません。

そんな危険性も考慮して、
異なるエレメント同士は、
交わることがないように、
離れて暮らしていました。

ところが、ある時、
エンバーのお店に、
水のエレメントである青年、
ウェイドが迷い込んでしまいます。

ウェイドは、市役所の検査官で、
水道管の点検をしていたのですが、
パイプに吸い込まれて、

エンバーのお店の中に
入ってしまったのでした。

ウェイドは、お店の設備が
基準を満たしていないことを発見し、
これを市役所の上の者に、
報告しようとします。

この報告が本部に届くと、
お店は営業停止処分に
なってしまうため、

エンバーはそれを阻止しようと、
ウェイドを市役所まで
追いかけますが、

残念ながら報告書は
本部に届いてしまいました。

その後、エンバーの話を聴いた
ウェイドはエンバーに同情し、

お店の営業停止処分が
キャンセルできないか、
エンバーに力を
貸してくれることになります。

果たして、お店の営業停止は
免れるのでしょうか、

そして、ウェイドと出会い、
エンバーが思い出した
本当の夢はなんだったのでしょうか。

王道を斬新な手法で描く

ここまで本作の物語について、
書いてきました。

エレメントを主軸にした
舞台設定、
異なる属性を持った二人が
出会うシチュエーション、

いずれも
古典的なものではありますが、

古典的であるだけに、
多くの人の心に訴えるものが
あるように感じました。

本作がこのような
ストーリーになったのは、
監督のピーター・ソーンが、

'70年代のニューヨークで、
移民の息子として育ったことが
影響しているそうです。
(両親は韓国からの移民だった)

「人類みな兄弟」と言えば、
聞こえはいいですが、

実際には、国・民族ごとに、
文化や風習の違いもあり、
それらを完全に理解しあうのは、
難しいでしょう。

しかし、そういう環境の中でも、
理解し合える場合もありますし、
それが大きな成長に繋がることが
あるのもまた事実です。

そういった教訓を
説教臭くない、おもしろい話で、
伝えてくれるのが、
本作の素晴らしいところです。

また、本作の設定を
「古典的」と書きましたが、

その見せ方は、
これまでの作品にない、
新しいものでした。

ピクサーの作品は、
'90年代から観てきましたが、
最近のピクサー作品は、
さらに一皮むけた感じがあって、

本作の表現の目新しさも
特筆すべきところが多くあります。

例えば、主人公は、
火のエレメントの女性ですが、

立体的な CG と
手書きのアニメーションを
違和感なく融合したビジュアルで、
とても新鮮に感じました。

火のエレメントと対になる
水のエレメントの描き方も
「もう、これは実写」
と思えるほどリアルなもので、

本当に CG の世界は、
この何十年かの間で、
考えられないほど進化したことが
わかるでしょう。

音楽は一部に、
中東やインドを彷彿させる
民族音楽に

ヒップホップの
ビートを乗せた音楽も
使われており、

こういったところにも、
他のアニメ作品にはない
斬新さを感じました。


【作品情報】
2023年公開
監督:ピーター・ソーン
脚本:ジョン・ホバーグ
   キャット・リッケル
   ブレンダ・シュエ
声の出演:川口春奈
     玉森裕太
     楠見尚己
配給:ウォルト・ディズニー・
   モーション・ピクチャーズ
上映時間:101分

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