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映画レビュー『浅草キッド』(2021)笑われるんじゃねえ!笑わせるんだ!

浅草フランス座時代のたけし

『浅草キッド』は、
'88年にビートたけしが
自身の浅草時代の話を書いた
自伝です。

映画版は大泉洋、柳楽優弥主演、
劇団ひとりが監督を務め、
2021年から Netflix にて
配信されています。

この原作の本は、
私の中学~高校時代の
愛読書でもありました。

すでに、その頃の
ビートたけしは大御所でしたから、

読んでいると
「たけしにも
 こんな時代があったのだなぁ」
と感慨深いものを感じたものです。

映画版でも、たけしが大学を辞め、
ストリップ劇場
「浅草フランス座」に入り、

その後、師匠のもとを離れ、
ツービートとして活躍する
ところまでが描かれています。

伝説の芸人・深見千三郎とは

『浅草キッド』は、
ビートたけしの出世物語であり、
師匠との物語でもあります。

たけしの師匠をご存知でしょうか。

浅草フランス座で座長を務めた
深見千三郎という方です。

深見千三郎は、
浅草では名の知られた
芸人だったようですが、

テレビに出ることはなく、
映像も残っていません。

半ば「伝説の芸人」として
語り継がれています。

ちなみに、浅草フランス座は、
渥美清の古巣でもあり、

深見千三郎は、たけしの他にも、
東八郎や萩本欽一の
師匠でもありました。

また、たけしの弟子であり、
本作からコンビ名をとった、
浅草キッドもこの劇場で
下積みをした経験があります。

ストリップ劇場なので、
メインはストリップで、

芸人たちはその合間に
コントを演じるのが、
役割でした。

このフランス座ですが、
今でも「浅草フランス座東洋館」
として残っています。

('00年にストリップ興行を
 打ち切り、演芸場に転身)

笑われるんじゃねえ!
笑わせるんだ!

原作の本にも書かれていましたが、
たけしの師匠である
深見千三郎は、

舞台では芸人として、
しっかり笑いをとり、

舞台を降りると
いつもビシッとした
スーツを着こなす、
ダンディーな方だったようです。

舞台の上では、
「笑われる」のではなく、
「笑わせる」のを
モットーとしており、

時には、客のヤジに
啖呵を切ることもありました。

千三郎の舞台を
観たことがある人の話によれば、

若い頃のたけしの
テンポが速いキレのある話し方は、
師匠にそっくりだったようです。

当たり前のことながら、
たけしの芸風にも
多大な影響を及ぼした方です。

舞台に出れば、必ず客を笑いの渦に
巻き込む千三郎でしたが、

時代はテレビが主流となり、
浅草の劇場は、
下火となりつつありました。

それでも舞台にこだわり続ける
千三郎の姿は、
どこまでもストイックでした。

そんな背中を見つつ、
漫才が流行りはじめるのを
横目で見るたけしは、
自分の進むべき道に悩みます。

果たして、たけしは、
どのようにして、
漫才の道を歩むのでしょうか。

昔気質の芸人・
千三郎を演じる大泉洋、

若き日の希望に燃える
たけしを演じる柳楽優弥、

ともにピッタリな配役で、
とにかく二人の演技に
注目してほしいです。

序盤・中盤・終盤にある
タップダンスのシーンの
かっこよさも必見です。

(たけしが師匠に
 最初に教わったのは、
 タップダンスだった)


【作品情報】
2021年公開
監督・脚本:劇団ひとり
原作:ビートたけし
出演:大泉洋
   柳楽優弥
   門脇麦
制作:日活
   ジャンゴフィルム
   Netflix
配信:Netflix
上映時間:123分

【原作】

【劇団ひとり監督の作品】


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