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日本語のおもしろさ

本を作る仕事をしています。

この仕事に携わって、
20年近くになります。

たまにはプロっぽいことを
書いてみましょう。

あんまりマニアックなことを書いても、
多くの人にとっては、
どうでもいいことなので、
今日は「文字」のことについて書きますね。

日本語は3種類の文字を使う特異な言語

「文字」と一口に言っても、
いろいろあります。

日本語は「ひらがな」、
「カタカナ」、「漢字」の
3種類の異なる文字を使う、
世界の中でも特異な言語です。

その昔、中国から日本に
漢字が伝わり、
それをアレンジする形で、
ひらがな、カタカナが生まれました。

例えば、「あ」という文字は、
「安」という漢字がもとになっていますし、
「ア」という文字は、
「阿」がもとになっています。

漢字は「もの」を表す「絵」を
記号化したもので、
「山」と書けば、
形が山に似ているのがわかりますね。

このように、文字そのものが、
対象物の形を表している文字を
「表意文字」と言います。

一方の「ひらがな」や「カタカナ」は、
文字そのものに意味はなく、
「音」だけを表すものに変化しました。

こういう文字を「表音文字」と言います。
(アルファベットも表音文字)

今の日本語は、
仮名のみを使って、
表記することができますが、
もともとの仮名は、
漢文を読む時に補助する
文字として使われていたんです。

わかりやすい例でいうと、
「レ点」とか、
漢文の文字のそばに小さく書く
アレです。

やがて、時代が経つにつれて、
日本でも独自に文字が発展し、
仮名が普通の文字として、
使われるようになります。

日本語はつなげて書ける

日本語には、
このような3種類の文字が
混在していることによって、
世界的にも珍しい文字の発展をしました。

例えば、英文では
「I am Taro」
というように、
単語と単語の間にスペースを入れて、
表記しますよね。

こういうのを
「分かち書き」と言います。

英文では、文字の種類が
アルファベットのみなので、
単語をつなげて書くことができません。

ためしに先ほどの英文を
日本語で表記してみましょう。

「私は太郎です」

やっぱり、英文とは違って、
単語をつなげて書きますよね。

もしも、日本語が仮名しかなかったら、
「わたしはたろうです」
となります。

これは短い文なので、
読めなくはないですが、
別の意味にも捉えられかねません。

さっきの
「私は太郎です」
だったら、読む人はみんな
「太郎さんなんだな」と理解できます。

でも「わたしはたろうです」だったら、
人によっては、「はたろう」と
思う人もいるかもしれません。

この程度の文であれば、
それほど大きな不都合はありませんが、
長い文章ともなれば、
さらに誤読が増えてしまい、
意味が正しく伝わらなくなります。

仮に日本語が1種類の文字しかない
言語になっていたとしましょう。

おそらく英文のように
「わたしは たろうです」
と分かち書きをする文化に
発展していたはずです。

コンピューターの黎明期に、
日本語が仮名でしか
表現できない時代がありましたが、
やはり、分かち書きをしていました。
(パソコンの黎明期のゲームなど)

英文には文字が、
アルファベットしかないので、
外来語を表記する際に、
「イタリック(斜体)」を使うのも、
特徴的です。

日本語だったら、
「コンピューター」というように、
カタカナで表記すれば、
外来語だと一眼でわかります。

英文では、こういうことができないので、
「書体」を使いわけるように、
進化してきました。

言語の違いは書体の違いにも影響

「書体」といえば、
欧米では金属の活字を
使っていた時代から、
書体が豊富にありました。

これはアルファベットの文字種が、
漢字に比べると少ないことと、
アルファベットを使う地域が多かったことが
大きく影響しています。

日本語では、文字の種類が膨大なので、
欧米のようにはいかず、
書体の種類が豊富になったのは、
‘70年代以降に写植が
普及してからのことです。

(写植=写真植字。
金属の活字ではなく、
写真の技術を応用した活字)

なんともマニアックな話に
なってしまいましたが、
文字の歴史を辿ると、
その国の文化も見えてくるので、
非常におもしろいんです。

ちなみに、私と同じ仕事をしている方でも、
ここまで文字のことを
深く追求している人は、
残念ながらあまりいません。

私は直接誰かに教わって、
こういった知識を身につけたのではなく、
自分でいろんな文献を読み漁って、
文字の歴史を知っていったんです。

歴史なんて学んでも意味がない、
という人も多いかもしれません。

しかし「今」という時代は、
過去の多くの人たちの
努力の結晶によって、
紡がれてきたものです。

そういったことを知って、
ものを見ると、
いろんなもののありがたさも見えてきます。

物事の本質も見えてきます。

そんなことを伝えたくて、
今日は「文字」について、
書いてみました。

こんなマニアックな記事に
付き合っていただき、
ありがとうございます^^;

【参考文献】



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