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書籍レビュー『病名がつかない「からだの不調」とどうつき合うか』津田篤太郎(2014)診断とは常に「暫定的」である

※2500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。


原因不明の身体の不調

30代の終わりから、
時折、お腹が痛くなることが
ありました。

その痛みは歳を重ねるごとに
ひどくなり、昨年はそれが原因で、
仕事を休む日があるほどでした。

最初は腸の病気を疑って
病院に行ったのですが、
医師の診断では
「神経」の問題だという話です。

今も漢方薬を常用して、
なんとか症状が出ないまでに
なりました。

それでも自分としては
疑わしかったので、
春に大腸カメラの検査も
受けたんですよね。

ポリープはあったものの、
医師によると、
それが腹痛の原因では
ないとのことでした。

このように「病名がつかない」
不調というものは、
多くある気がします。

何かしらの病気と診断されて、
それが治療できれば、
確実に回復に向かうので、
スッキリしますが、

特に病名もないので、
適当にやり過ごすしかありません。

ただ、自分なりに、
こういう時に
こういうことをすると痛くなる

というのは、
ある程度わかっているので、
そのことに気をつけて
生活するしかないんですね。

しかし、このスッキリしない感じは
いかがなものか、と思いながら、
生活してきました。

そんな時に、書店で見かけたのが
この本だったのです。

『病名がつかない
「からだの不調」と
 どうつき合うか』

自分のことを
言われているような気がして、
さっそく読んでみました。

医師も神ではない

結果から言いますと、
この本を読んだからと言って、
何かが解決する
ということはありません。

いかにも解決法を
書いているような
タイトルですが、

まぁ、この辺は出版社の意向が
強く絡む部分なので、
そう目くじらを立てずに、
落ち着いて読んでみましょう。

「解決」してくれる
わけではないですが、

この本はとてもおもしろいですし、
身体の不調との向き合い方を
考えるうえでは、
とても有用な本です。

間違いなく読んで損はない本です。

むしろ、病院によくお世話になる人は、
知っておいた方がいい話が
いろいろと書いてあります。

この本の大半を占めるのは、
「医師がどのような過程を経て、
 診断をしているか」
という話です。

お医者さんも神様ではありません。

常に原因が掴めない患者さんの
病気をどうやって治療するか、
ということに、
頭を悩めているのです。

ただ、そういった迷いを
患者さんの前で見せてしまっては、
診てもらっている方も
不安になりますよね。

なので、こういった話は
なかなか聴く機会がないものです。

おそらく、お医者さんに
知り合いでもいない限り、
もしくは自分自身が
医師ではない限り、

こういった話を知る機会はないでしょう。

だからこそ、
この本に書かれていることは、
とても貴重ですし、
非常に価値のある内容だと思います。

診断とは常に「暫定的」である

まず、覚えておきたいのは、
医師の診断は、
常に「暫定的」である
ということです。

「暫定的」は、
「仮に定めている」だけなので、

「こういう症状が出ているから」
「○○」と診断しても、

また別の症状が出てくれば、
やっぱり「××」と変化する
可能性があるという話です。

いろんな症状を訴える
患者さんがいますが、

その話は、医師からすると、
整理もされていないし、
雑然としたものなので、

まずは医師がしっかりと話を聴き、
その中から重要と思われる
所見について、

詳しく聴いて、検査する
という手順が踏まれるそうです。

言われてみれば
当たり前のことです。

患者さんは、
別に医療のプロではないので、
どの症状が重要なものかも
わかっていません。

わからなくて困っているからこそ、
病院に来ているわけで、

まずは、医師がそこを
しっかり見極めるために
「聴く」ことが大事なんですね。

つまり、どんなに腕のいい
お医者さんでも
この「聴く」部分が
うまくできなければ、

その腕が発揮されることも
ないというわけです。

この辺に関しては、
患者さんとの相性もあるでしょうね。

そして、病名というのも、
これもある意味では
暫定的なものなんですね。

私もこの本を読むまで、
考えが及びませんでしたが、

病気のことに限らず、
世の中の事象というのは、
「1」か「0」のデジタルな
世界ではなく、

常にグラデーションのように、
なだらかな階層になっているものです。

「色」にしてもそうです。

「赤」といっても、
紫に近い赤もあれば、
オレンジに近い赤もあり、

薄い赤もあれば、
濃い赤もあります。

つまり「赤」と一口に言っても
いろんな赤があるわけで、

それを一つひとつ言い換えていたら、
逆に伝わらないので、
ひとまとめにして
「赤」と言っているんですよね。

病気の診断も同じようなところが
あるのでしょう。

いろんな症状があって、
それを見極めたうで、
「○○」という病名を決め、

その病気に対しての
治療方法を考える、
という手順が踏まれます。

ですから、
「病名」を決めることが、
治療の第一歩になるそうです。

そんな中で、私のように
病名がつかない患者さんも
出てくるわけですね。

本書に書かれていたことを
参考にすると、

たぶん、時折でる私の症状は、
病名がつくほど、
深刻なものではない
ということなんですね。

そして、私の場合で言えば、
症状がひどくなった時に
どうすれば回復するかが
わかっているのが大事ですね。

これは自覚しているので、
同じ症状が出ても大丈夫なんです。

そして、こういった症状は、
脳や神経が影響していることが
多いようですね。
(私も「神経」と診断されている)

現代の医療は、
昔に比べればだいぶ進歩しましたが、

特に脳や神経のことは
複雑すぎて、
まだまだ未知の分野なんだそうです。

もちろん、不安があれば、
きちんと医療機関で
診てもらうのは
大事なことですが、

あまり過敏になり過ぎるのも
いいことではないようですね。

一通り診てもらって、
それでも解決しない不調があれば、

本書のタイトルにある通り、
うまく「つき合って」
いくしかないんですね。

何よりも自分の身体のことを
自分が理解するのが、
大事なのだと思いました。

そして、病院との付き合い方も
一方的に委ねるのではなく、

こういう本なども読んでみて、
「なるほど、こういう手順で
 診断しているのか」と、

自分自身が納得できるように、
行動すること必要ですね。


【書籍情報】
発行年:2014年
著者:津田篤太郎
出版社:ポプラ社

【著者について】
1976年、京都府生まれ。
医学博士。日本リウマチ学会専門医。
日本東洋医学会漢方専門医。

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