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鑑賞のススメ

私が10代の頃、電気グルーヴの
石野卓球がテレビ番組に
ゲスト出演しました。

番組の中で卓球が
「鑑賞するのには知識が必要になる」
と言っていたんですよね。

卓球はダンスミュージックを
中心に手がけているので、
鑑賞するよりも、
音楽に合わせてダンスに興じることは、
簡単で誰にでも楽しめると言っていたのです。

その対比として、
「鑑賞」の意味を出したわけですね。

もちろん、当時の私は、
テクノを中心に、
ダンスミュージックばかり聴いていたので、
ダンスのプリミティブな魅力は、
よく理解していました。

クラブミュージックでは、
DJが次々に曲を繋いで、
フロアーを沸かせます。

たとえ、曲を知らなくても、
リズムに合わせて身体を動かすことによって、
誰にでも音楽を楽しむことができます。

一方、黙って聴くタイプの音楽は、
なかなかそういかないところがありますね。

知らない曲ばかり演奏されると、
多くの人は退屈するかもしれません。

ライブ前にアーティストの曲を
予習するなんてこともあります。

しかし、私はこれまでに
たくさんの音楽を聴いてきた
「経験」があるので、
聴いたことのない音楽でも、
それなりに楽しむことができます。

コード進行、ハーモニー、
リズムのパターンを探ることによって、
どんな音楽でも
「なるほど」と思うことができるからです。

これはいろんなジャンルの音楽を
たくさん聴いてきた経験があるからこそ、
できることだと思います。

若い頃は、経験が浅かったので、
それほど多くの音楽を
理解することができませんでした。

だから、冒頭に書いた、
「鑑賞するのには知識が必要になる」
という言葉を理解するうえで、
実感が伴っていなかったんですよね。

私自身は、
割と最近になって、
この言葉の意味が、
実感を伴って理解できた気がします。

これは音楽のことに限りません。

映画でも、小説でも、
マンガでも、ゲームでも、
テレビ番組でもいいですが、
鑑賞しようと思えば、
それなりに経験が必要です。

なんらかの作品を楽しんだ時に、
その感想を文章にしてみると、
どれくらい理解しているか、
よくわかります。

私自身は、20代の頃に、
そういう文章を書くようになりましたが、
若い頃に書いたものと、
今書けるものはかなり違うんですよね。

何かを観たり聴いたりして得た、
比較対象が頭の中にたくさんあるので、
それと照らし合わせて、
いろんな観点から、
作品の特徴を述べることができます。

もっとも、これもただ漫然と
観たり聴いたりしていたのでは、
頭の中に記憶が定着することも
なかったでしょう。

鑑賞するたびに、
感想を言葉にして、
分析できたからこそ、
記憶が定着したのだと思います。

この習慣には、メリットもあれば、
デメリットもあります。

メリットは、人よりも、
作品の長所に気づけることです。

人間というのは、
どうしても悪いところに
目が行きがちです。

放っておくと、
気がついたら文句ばかり言う
人間になってしまいます。

その点、いいところを見つけて、
楽しもうと意識するだけで、
注目するポイントは格段に増えます。

そういうことを習慣にしていると、
実生活でもそんな風に考えるようになります。

たとえ、苦手な人であっても、
いいところはないか、
探すようになるんです。

だからと言って、
苦手な人のことを
好きになるわけでもありません。

でも、個人的な主観だけで「嫌い」と思うより、
どんな相手でも、
いいところを一つでも見つけられた方が
自分の精神衛生的にもいいような気がします。

一方、意識的に鑑賞するデメリットは、
考え過ぎると、
純粋に作品を楽しめなくなる
ということです。

例えば、映画なんかでは、
観ている人が、
作品に没入することによって、
楽しめる作品が多いですが、
意識的に鑑賞することによって、
その妨げになることがあるのは否めません。

ホラー映画がわかりやすいですが、
私はあまり怖がりません。

ついつい、演出的な部分を
見てしまうからです。

もちろん、時には、
そういうことを忘れて、
夢中になってしまうこともあります。

きっと、それこそが
よくできた作品なのでしょう。

私はそういう作品は、
2回観ます。

2回目に観る時は、
鑑賞するために、
分析的に観るのです。

「なんでこの作品は、
こんなに没入感が高いのだろう」
と仕掛けの方が気になるからです。

そう言った意味では、
作品を二度楽しめるので、
得をしているのかもしれません。

みなさんも作品を楽しむだけでなく、
感想を言葉にしてみませんか。

いろいろとおもしろい発見がありますよ。

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