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THANKS MR.YT 高橋幸宏プレイリスト(2)

※3500字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

前回に引き続き、高橋幸宏の音楽活動を振り返っていきます。

前回の記事では、YMO 結成前(’74)~散開直後(’84)の楽曲の中から選曲し、プレイリストを作成しました。

今回は'85~'97年の楽曲の中から選曲し、プレイリストを作成しています。
前回と同様に、あまり深く考え過ぎずに、全体のバランスも考えつつ、DJ 感覚での選曲です。

この時代の高橋幸宏の活動を振り返ると、YMO 時代とは異なる「ポップス」に特化した時代と言えるでしょう。
'85年発表のソロアルバム『Once A Fool,… ―遥かなる想い―』から、その変化は如実に現れており、電子音は使いつつも、'80年代前半のそれとは異なり、軽い都会的なサウンドになっています。

'90年代以降は、森雪之丞などの作詞家ともタッグを組み、「大人の男」を感じさせるダンディーな歌も印象的です。
'93年発表のセルフカバーアルバム『Heart of Hurt』では、過去の楽曲をアコースティックアレンジで披露しています。

このアルバム以降のソロ作品では、電子音を少なめにしたアコースティックなサウンドに傾倒した作風も見られました。

一方で、これらの活動と並行して、ジャパンのスティーヴ・ジャンセン、東京スカパラダイスオーケストラとの共作、あるいは、ムーンライダーズ・鈴木慶一との不定期ユニット「ザ・ビートニクス」としての活動も展開されています。

また、'90年代には、サディスティック・ミカ・バンド、YMO の再結成もあり、それぞれのバンドにおいても、自身の個性を遺憾なく発揮していました。
(※残念ながら YMO 再結成時の音源は Spotify にないため、プレイリストでは割愛)

映画や山本耀司のパリコレのサウンドトラックも手掛け、特に、後者のサントラ盤は、近年も再発されており、時代を超えて、その先進性が評価されたのは、記憶に新しいところです。

なお、今回も解説の中で特記していない限り、高橋幸宏が作曲した楽曲です。

①冬のシルエット/高橋幸宏('85)

7作目のソロアルバム『Once A Fool,… ―遥かなる想い―』より。
YMO 散開後ではあるものの、演奏で細野晴臣(作曲でも1曲提供)、坂本龍一が参加している。
YMO 時代とは異なり、メロディーの親しみやすさが増し、シンガーソングライターとしての能力を開花させた印象。

②STAY CLOSE/高橋幸宏&スティーヴ・ジャンセン('86)

ジャパンのスティーヴ・ジャンセンとの共同名義で出したシングル(作曲も共作)。和室で向き合った二人のジャケットがユニークである。
曲の方は、シンセ、ギターによるリフが、ニュー・ウェイヴっぽい。
声質の違う二人のボーカルが、組み合わせとしておもしろい。

③WEEKEND/高橋幸宏('86)

8作目のソロアルバム『...Only When I Laugh』より。
シングルカットされ、ダイハツの「ミラ TR-XX」の CM 曲にも起用された。
前作『Once A Fool,… ―遥かなる想い―』より、さらに爽やかさが増し、さらにポップさが高まっている。
そんな中でも、シタール風のシンセの音色が異彩を放つ。

④TOTAL RECALL/THE BEATNIKS('87)

ザ・ビートニクス(ムーンライダーズの鈴木慶一とのユニット)の2作目のアルバム『EXITENTIALIST A GO GO ビートで行こう』より。作曲は鈴木慶一との共作。
オーケストラっぽい音からはじまり、シンセの電子音に切り替わるところが絶妙なバランスである。歌の方は、フォークロック的な深い味わいが感じられる。

⑤LOOK OF LOVE/高橋幸宏('88)

9作目のソロアルバム『EGO』より。同アルバムの先行シングルにもなった。イントロのせつない感じは、まさに「幸宏節」を感じさせる。
そして、繊細で優しいボーカルが全体を包み込むように、曲全体をリードする。地味ながら電子音のアクセントも利いている。

⑥Boys & Girls/サディスティック・ミカ・バンド('89)

2代目のボーカル・桐島かれんを迎えて、再結成されたサディスティック・ミカ・バンドの4作目のアルバム『天晴(あっぱれ)』より。作曲は、加藤和彦、高橋幸宏、小原礼による共作。
同アルバムの先行シングルになり、『マツダ・ファミリア』の CM 曲にも起用された。シンセとギターのバランスが絶妙で、のっけからキャッチーな歌のメロディーも秀逸。高橋・桐島によるメインボーカルの相性もいい。

⑦FAIT ACCOMPLI/高橋幸宏('90)

10作目のソロアルバム『BROADCAST FROM HEAVEN』より。
英語による歌詞は、盟友・スティーヴ・ジャンセンによるもの。
突き抜けるようなシンセの音色が空間の広さを感じさせ、タメの利いた高橋のボーカルがリズミカルである。

⑧EVERYDAY LIFE/高橋幸宏('91)

11作目のソロアルバム『A Day In The Next Life』より。森雪之丞による、日常風景を切り抜いたような歌詞が印象的な一曲(ビートルズでいうと『In My Life』のような味わい)。高橋自身も年齢を重ね、この頃から、このようなしみじみとした歌が似合うようになった。

⑨素敵な人/高橋幸宏('92)

12作目のソロアルバム『Life Time, Happy Time』より(シングルカットもされた)。スカッと晴れ渡った青空を連想させるようなポップスになっている。シンセ、ドラム、歌のそれぞれのリズムにキレがあり、そのリズムに緩急があるのも特徴的。

⑩君といる/高橋幸宏('93)

セルフカバーアルバム『Heart of Hurt』より。同アルバムでは、唯一の新曲でもある。ほぼアコースティックギターのみによるアレンジが渋い一曲(間奏ではハーモニカも)。高橋の純粋なボーカルワークが楽しめる。

⑪青空/高橋幸宏('94)

13作目のソロアルバム『MR.Y.T』より。同アルバムの先行シングルにもなった。それまでの高橋作品のシンボルでもあった電子音は鳴りを潜め、生楽器が中心のサウンドになっている。ストリングスも加わり、音の厚みが増している。

⑫WATERMELON/東京スカパラダイスオーケストラ featuring 高橋幸宏('95)

東京スカパラダイスオーケストラの5作目のアルバム『GRAND PRIX』より。
作曲は、スカパラと高橋幸宏による共作で、シングルカットもされた。
スカのリズムと高橋の甘いボーカルの組み合わせは、初期のソロ作品も彷彿させる。熟年男性の想いを綴った歌詞は、高橋の弟子筋にあたる高野寛によるもの。

⑬僕は運命を信じない/高橋幸宏('95)

14作目のソロアルバム『Fate Of Gold』より。
再び打ち込みの比率が上がり、そのサウンドは、R&B テイストも感じさせ、新境地を切り開いた印象も。相変わらず、打ち込みとドラムサウンドのバランスもよく、プレイヤーとしての健在ぶりも感じさせる。

⑭名もない恋愛/高橋幸宏('96)

15作目のソロアルバム『Portrait With No Name』より(シングルカットもされた)。前作『Fate Of Gold』よりも、さらに打ち込みが多くなった印象で、イントロはテクノそのもの。その後、打ち込みのビート、アコースティックギター、高橋の流れるようなボーカルが組み合わさり、これもまた斬新な聴きごたえが感じられる。

⑮PA-TO R/高橋幸宏('96)

山本耀司のパリ・コレクションのために作曲されたサウンドトラック集『The Show vol.6 Yohji Yamamoto Collection Music』より。
YMO 散開以降、ソロでは歌ものの楽曲が多かった中、このようなサントラ作品において、インストの曲も展開していた。
電子音とドラムを組み合わせたサウンドは非常にクールで、今聴いても、古さを一切感じさせない。いや、今こそ、時代が追い付いたのかもしれない。

⑯A Sigh Of Ghost~僕はユーレイ/高橋幸宏('97)

16作目のソロアルバム『A Sigh of Ghost』より。'90年代テクノのビートを使ったポップスになっている。
明るい曲調に反し、歌詞の内容は、死後の自分の視点を語った内容(作詞も本人が手掛けたもの)。実際に本人が故人になってしまった今だからこそ、そのメッセージが心に染みる一曲でもある。天国からの高橋のメッセージがここにある。

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