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THANKS MR.YT 高橋幸宏プレイリスト(3・終)

※4500字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

前回に引き続き、高橋幸宏の音楽活動を振り返っていきます。

前回の記事では、’85~’97年の楽曲の中から選曲し、プレイリストを作成しました。

今回は'98~'22年の楽曲の中から選曲し、プレイリストを作成しています。
前回と同様に、あまり深く考え過ぎずに、全体のバランスも考えつつ、DJ 感覚での選曲です。

’02年、細野晴臣とのユニット、スケッチ・ショウを結成します。

当初は、しばらく発表されていなかった高橋幸宏のソロアルバムを細野晴臣がプロデュースする予定だったものが、いつの間にかユニットに発展したものでした。

このレコーディングには、一部の楽曲に坂本龍一も参加し、’93年の YMO 再結成以来、9年ぶりに三人がスタジオに揃うことになったのです。

'90年代の YMO の再結成は、レコード会社が企画したビッグプロジェクトで、当の本人たちは、それほど乗り気ではありませんでした。
当時はなぜか、三人が揃うと妙な緊張感が生まれ、ピリピリとした空気で楽曲制作が進められました。

一方のスケッチ・ショウの活動は、アーティストが主体的に集まったものだったので、’90年代とは違い、非常に和やかなムードでレコーディングがされたそうです。

この活動がきっかけとなり、’04年には三人による「Human Audio Sponge」名義でのライブ活動も展開します。
(スペインなどで開催された音楽フェス「sonar」に出演、'07年以降の YMO として二度目の再結成に繋がっていく)

’06年には、7年ぶりのソロアルバム『BLUE MOON BLUE』を発表しました。

スケッチ・ショウやヒューマン・オーディオ・スポンジで試みたエレクトロニカの流れを継承したサウンドで、個人でもその道を極めていきます。

また、同年には木村カエラを三代目の女性ボーカルとして迎え、二度目のサディスティック・ミカ・バンドの再結成があり、アルバムも発表されました。

'08年には、原田知世、高野寛、高田漣、権藤智彦、堀江博久とともに「pupa」を結成し、ここでもスケッチ・ショウから続くエレクトロニカ路線のサウンドを継承していきます。

’14年には、小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ、LEO今井ともに「高橋幸宏&METAFIVE」を結成(のちに「METAFIVE」に改名)しました。

このユニットは、当初、イベントのために結成されたものでしたが、その後、アルバムもリリースし、ライブ活動も積極的に行うことになっていきます。

これらの活動と並行し、ソロ活動、鈴木慶一とのザ・ビートニクスの活動も断続的に展開されていました。

こうして見ていくと、高橋幸宏というアーティストが、いかにいろんな世代のアーティストと共演し、いろんなものを吸収していたかがわかります。

最後まで音楽に対する探究心が旺盛だったことは、それぞれの作品を聴くとよくわかるでしょう。

なお、今回も解説の中で特記していない限り、高橋幸宏が作曲した楽曲です。

①A Ray Of Hope/高橋幸宏('98)

17作目のソロアルバム『A Ray Of Hope』より。高橋に多大な影響を与えた黒人ドラマー、アル・ジャクソンJr. を彷彿とさせるドラムに、甘い歌詞とメロディーを乗せた大人のポップスに仕上がっている。

②世界中が I love you ~everyone says I love you~/高橋幸宏('99)

18作目のソロアルバム『The Dearest Fool』より。前作と比べ、再び打ち込みの比重が上がり、本楽曲ではドラムンベース風のビートが取り入れられている。
途中から入る女性ボーカルは、高橋が命名したデュオ・BE THE  VOICE の和田純子。

③25,000 RPMs/THE BEATNIKS('01)

ザ・ビートニクス(ムーンライダーズの鈴木慶一とのユニット)の3作目のアルバム『M.R.I. Musical Resonance Imaging』より。作曲は鈴木慶一との共作。
14年振りとなったザ・ビートニクスは、エレクトロ色が強く作風となった。この楽曲でも全編に渡って電子音が使われており、ボコーダーボイスで歌われている。

④Wonderful to me/SKETCH SHOW('02)

スケッチ・ショウ(細野晴臣とのユニット)のデビューアルバム『AUDIO SPONGE』より。作曲は細野晴臣、坂本龍一との共作。
YMO の再結成以来、9年ぶりに自然と集まった三人が手掛けた楽曲は、音色も柔らかく、のどかなムードの作品となった。
これがきっかけとなって、のちの  HAS(ヒューマン・オーディオ・スポンジ)、ライブ活動を中心に据えた三度目の YMO 再結成が実現した。

⑤Something/川上つよしと彼のムードメイカーズ meets 高橋幸宏('03)

川上つよしと彼のムードメイカーズとのコラボレーションシングル。
原曲はビートルズの楽曲で、高橋が多大な影響を受けたジョージ・ハリスンが作曲したもの。スカのリズムと高橋の温かいボーカルで包み込むような安心感を抱かせる。

⑥CHRONOGRAPH/SKETCH SHOW('03)

スケッチ・ショウの2作目のアルバム『LOOPHOLE』より。作曲は細野晴臣との共作。サウンドは粒子の手触りを感じさせる電子音が特徴的である。
厳かな印象のコード感、淡々とした細野・高橋のボーカルが颯爽としたイメージを感じさせる。一見すると、単純な単語を並べたような歌詞だが、単語のチョイスも秀逸。

⑦BLUE MOON BLUE/高橋幸宏('06)

19作目のソロアルバム『BLUE MOON BLUE』より。スケッチ・ショウの活動で手に入れた、エレクトロニカの音色をソロでも取り入れた作品になっている。電子音、フォークギターの音に北欧っぽいムードもある。

⑧The Last Season/サディスティック・ミカ・バンド('06)

再々結成を果たしたサディスティック・ミカ・バンド、5作目のアルバム『NARKISSOS』より。ドラム、電子音、コードの展開も含め、全体的に’70年代のジャーマン・ロックに通じるものを感じる。そういったマニアックなものをベースにしながらも、「ポップ」に聴こえるのが、高橋特有の持ち味。

⑨At Dawn/pupa('08)

ピューパのデビューアルバム『floating pupa』より。作曲は権藤知彦との共作。柔らかい電子音で奏でられるフォーク的な味わいが、スケッチ・ショウや自身のソロ作品から引き継がれている。原田知世の透明感のある歌声に、
高橋の包み込むような歌声が重なり、抜群のコンビネーションを感じさせる。

⑩Out There/高橋幸宏('09)

20作目のソロアルバム『Page By Page』より。作曲はドイツのエレクトロポップバンド、ラリ・プナとの共作。前作に引き続き、エレクトロニカ+フォーク的な作風である。
ささやくような歌声、凛とした歌声が交互に展開される構成で、メリハリが感じられる。権藤知彦の演奏するホーンもいいアクセント。

⑪Your Favorite Pain/pupa('10)

ピューパの2作目のアルバム『dreaming pupa』より。ピューパの他の楽曲に比べると、幾分、電子音が尖った印象で、’80年代の高橋のソロ作品も彷彿させる(声の重ね方も)。生ドラムのキレが素晴らしく、打ち込みとのバランスがいい。

⑫最終出口行き Last Train to Exitown/THE BEATNIKS('11)

ザ・ビートニクスの4作目のアルバム『LAST TRAIN TO EXITOWN』より。作曲は鈴木慶一との共作。ギターとピアノを中心にしたサウンドだが、リズムトラックに隠し味的に電子音も使用されている。熟練された歌とメロディーラインが味わい深い。決して若者には出せない味。

⑬RADIO/テイ・トウワ with 高橋幸宏&玉城ティナ('13)

テイ・トウワ、玉城ティナとのコラボレーションシングル。
作曲はテイ・トウワだが、高橋自身がはじめてこの楽曲の歌メロを聴いた時、「まるで自分が作ったみたいだ」と言ったという逸話もあるほど、高橋っぽい作風になっている。
電子音とカッティングギターを組み合わせたファンキーな楽曲。

⑭Looking For Words/高橋幸宏('13)

21作目のソロアルバム『Life Anew』より。高橋にとっての原点回帰で、往年のアメリカのロックやポップスを反映した作風になっている。ギターとシンセサイザーのバランス、冴えわたるドラムの音色と伸びやかなボーカルの組み合わせが絶妙である。

⑮Split Spirit/高橋幸宏&METAFIVE('14)

映画『攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T. by Cornelius』のサウンドトラックより(高橋幸宏&メタファイヴ名義)。作曲は LEO今井、小山田圭吾との共作。
氷が解けるような音、水が落ちるような音、とにかく電子音の作り込みが細かい。そこへ高橋や LEO今井のボーカル、権藤智彦によるホーンといった有機的な要素が違和感なく融合されていく。

⑯鼻持ちならないブルーのスカーフ、グレーの腕章/THE BEATNIKS('18)

ザ・ビートニクスの5作目のアルバム『EXITENTIALIST A XIE XIE』より。作曲は鈴木慶一との共作。ギターを中心にしたサウンドで、電子音もアクセントにあしらわている。主張があるような、ないような、いい意味でクセの強い歌詞も独特の世界観を醸し出している。

⑰PRESENT/高橋幸宏('18)

セルフカバーアルバム『Saravah Saravah!』より。デビューアルバム『Saravah!』のメインボーカル部分だけを再録音した作品。
原曲もアルバムのラストを飾るせつなさとロマンを感じさせる楽曲だった。歳を重ねた高橋のボーカルが若い頃の甘さとはまた違う、味わい深い濃さを感じさせる。

⑱See You Again/METAFIVE('22)

メタファイヴの2作目のアルバム『METAATEM』より。作曲は小山田圭吾で、病気療養中だった高橋が復帰後に歌うことを想定して作曲された。
ギター、電子音、ホーンが絶妙にマッチしたサウンドをバックに、見事に復帰を果たした高橋が芯の強い声を響かせる。「I'll see you again」の歌詞が胸を打つ。また会える日、それがファンにとっての希望。

▼Spotify 版プレイリストはこちら

※このシリーズ記事の作成にあたって、
 以下のサイトも参考にさせていただきました。
 ありがとうございます。

高橋幸宏: MR.YT Unofficial Home Page:TOP (mryt.com)


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