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映画レビュー『インサイド・ヘッド2』(2024)成長とともに生まれるいろんな「自分」



ピクサー史上最高の興収、
歴代世界累計興収トップ10入り!

世界累計興行収入15億5506万ドルを突破し、
(ピクサー作品史上最高の興収)

歴代世界累計興行収入ランキングの
トップ10入りを果たしたことで
話題の本作を観てきました。

ちなみに前作『インサイド・ヘッド』の
興行収入は、8億5907万ドルです。

なぜ、本作がここまでの
ヒット作になったのか、
実際に観てみると、
その理由がよくわかりました。

歴代世界累計興行収入ランキング
(2024年8月現在)

1. アバター(29億2370万ドル)
2. アベンジャーズ エンドゲーム
 (27億9943万ドル)
3. アバター ウェイ・オブ・ウォーター
 (23億2025万ドル)
4. タイタニック(22億6475万ドル)
5. スター・ウォーズ フォースの覚醒
 (20億7131万ドル)
6. アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
 (20億5241万ドル)
7. スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム
 (19億2259万ドル)
8. ジュラシック・ワールド
 (16億7153万ドル)
9. ライオン・キング(16億6307万ドル)
10. インサイド・ヘッド2
 (15億5506万ドル)

動乱の思春期がやってきた!

1作目の『インサイド・ヘッド』は、
11歳の少女・ライリーの頭の中にいる
5つの感情からなるキャラクターたちが
織りなす物語でした。

(ヨロコビ、カナシミ、イカリ、
 ムカムカ、ビビリ)

続編は前作から
2年後の物語となっており、
ライリーは高校入学を控える時期に
入っています。

引き続き、ライリーは
アイスホッケーを続けており、
高校の先輩たちも参加する
アイスホッケーキャンプに招かれました。

その当日の朝、ライリーの脳内では
それまでになかった大きな変化が
表れたのです。

「思春期アラーム」が発動し、
シンパイ、イイナー、
ハズカシ、ダリィの4つの
新しい感情がやってきました。

それまでヨロコビを中心に
運営してきたライリーの脳内は、
たちまち新参者の彼らに占領され、

ライリーは「自分らしさ」を
心の奥深くに
しまいこんでしまいます。

成長とともに生まれる
いろんな「自分」

シンパイを中心とする
新しい感情たちの目的は、
アイスホッケーキャンプで
好成績を残し、

ライリーを憧れのホッケーチームに
入れることでした。

その代わりと言ってはなんですが、
一緒にキャンプに来ていた、
小さな頃からの二人の親友のことは
蔑ろにしてしまいます。

自分がどう感じるかも二の次です。

当然、これに対して、
それまでのライリーをよく知っている
ヨロコビたちは反発するのですが、

古参の彼らは司令部から
遠く離れた場所に
幽閉されてしまいます。

もちろん、ヨロコビたちが
シンパイたちの暴挙を
黙って見ているわけはなく、

それに対する反逆を
ひそかに進めることに
なるのでした。

本作がなぜこんなに
ヒットしているのか、
私自身も不思議に思いました。

1作目も観たことがあって、
それも充分におもしろい作品でしたから、
もっとヒットしてもおかしくない、
と感じるくらいだったんですよね。

たしかに1作目からおもしろい作品なのです。

では、1作目と2作目の大きな違いは
何かというと、
続編なので知名度の違い、
公開のタイミングもあるでしょう。

(ピクサー作品の正当な続編が
 公開されたのは5年振りだった)

それ以上に大きいのが、
作中の登場人物の成長だと
思うんですよね。

ライリーが思春期を迎えたことによって、
新たな感情が加わりました。

そうなることによって、
大人にとっても、さらにリアルに
感じられる感情が
表現されているのです。

例えば、ライリーは
高校の先輩に気に入られるために、
昔からの友達との付き合いを
絶ってしまいます。

こういう経験は私自身にも
あるんですよね。

小学校の頃の大親友がいましたが、
中学に入学してから、
我々はちょっとしたきっかけがあって、
別々の道を歩むようになりました。

きっかけは、私自身にはなく、
相手から離れていったので、
本作を観ていると、

あの頃の親友の頭の中では、
こんなことがあったのかな
と思ったんですよね。

ライリーは高校の先輩たちに
好きなバンドを聴かれて、
最初は素直に答えるのですが、

そのバンドが先輩たちには、
「ダサい」と言われて、
ライリーは手のひらを返し、
そのバンドをこき下ろします。

そこに偶然通りかかった
二人の親友は、

ライリーと一緒に
そのバンドのライブに行くほどの
ファンだったので、
大変なショックを受けるのです。

振り返ってみれば、
誰にでもこのような場面は
あるのではないでしょうか。

本当は大好きなものを
「好き」と言えない瞬間が。

本作には、このような
誰もが経験する場面が
詰まっているように感じました。

そして、それは子ども時代だけの
体験ではありません。

私たちは誰もが成長する過程で、
さまざまな立場を演じることを
要求されます。

学校を卒業し、
仕事をするようになると「社会人」、
結婚すれば「夫」「妻」

子どもが生まれれば、
「親」としての顔も
持つことになりますよね。

そんな中で本来の「自分」は
どんどん心の奥底に
眠らされてしまう場合も
多いような気がするんですね。

多くの人がそういう体験を
知らず知らずのうちにしているからこそ、
この物語は多くの人の心の琴線に
触れるのだと思います。

果たして、ライリーは、
「本来の自分」と「これからの自分」に
どう折り合いを付けていくのでしょう。

それを見届けることが、
本作を観る人のヨロコビに
繋がることを保証します。


【作品情報】
2024年8月1日公開
監督:ケルシー・マン
脚本:メグ・レフォーヴ
声の出演:小清水亜美
     大竹しのぶ
     浦山迅
配給:ウォルト・ディズニー・
   スタジオ・モーション・
   ピクチャーズ
上映時間:96分

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