フリック入力が未だにできない20代

フリック入力が未だにできない20代

最近の記事

まくら

「お久しぶりですね」 美容室で髪を切った。 前回来た時は緋寒桜が咲いていたから2月だったと思う。 「今回はいつまで滞在するの?」 「一緒に暮らしていた恋人は?」 その人とはお別れして帰ってきたことを伝える。久々にログインした通販サイトみたいだ。 私のZOZOTOWNアカウントは4つ前の住所、2つ前のメールアドレスのまま時が止まっていて、最近新しい住所とメアドを登録したばかりだ。 これから久しぶりに会う人達、全員に個人情報の更新をすることになるだろう。 億劫だ。それが

    • 財布

      覚えている限りで最古の財布はタコ型の小さながま口だった。たしか4歳くらい。10円玉をいれて駄菓子を買っていた。 本格的な財布を初めて持ったのは小学5年生で、姉に憧れて長財布にした。 ショッキングピンクの合皮。ワゴンセールでみつけた謎ブランド1500円。大人になったみたいでドキドキした。財布を買ったら中に入れるお金がなくなって意味がわからなかった。 お金のかわりにプリクラでぱんぱんだった。 中学2年生、誕生日に目玉がプリントされた長財布をもらった。 妹と母が選んでくれた。当

      • 右手アンケート

        今日は現代アートの展示をみてきました。 良かった。良かったけど。 ねえ 今日みた展示物、プロジェクターで立体物に投影していたんだよ。 マウスのカーソルも、PCのアイコンも一緒に映っていた。それでいいのかな。 つくった人的には駄目なんじゃないのかな。 それに投影されていた立体物って建築業者の人が組み立てたらしい。 自分でやらなくて大丈夫だった?満足できた? 1ミリ単位で他人に指示したの?そんなことができるの?ちょっとは妥協してないの? 本気でつくったモノを、自分以外の人

        • みんなねている

          午前3時、私は足が痺れている。みんな寝ている。 猫も、家族も、好きな子も、街も、みんな眠ってしまって足の痺れた私だけが起きている。 猫が膝の上に乗ってから1時間半、早寝を諦めた。わりと悩んだけれどシャワーも諦めた。 化粧を落としてからみんなと同じになるつもり。 私が俯いていても睫毛だけは上を向いてくれる。頼もしくて頑張り屋さんの睫毛を解放してあげないと。 マスカラを落とす瞬間が好き。 泣いていないのに号泣した人の顔になるのが面白いから。 泣いてアイメイクがぐちゃぐちゃ

        まくら

          Creep

          8年ぶりに故郷で暮らしている。 戻ってから3週間近く経つ。毎日何をして過ごしているんだろう。まだ馴染まない日常を這う。

          ¥300

          Creep

          ¥300

          さよならモナカ

          実家が引っ越したらしい。 引越しから2週間、内緒にされていた。わたしの家族はいつもそんな感じだ。よくわからないサプライズを仕掛けてくる。この引っ越しサプライズも2回目になる。血をしっかり受け継ぐ私も同じようなことをするので文句は言えない。 最初の引っ越しサプライズで水色一軒家からクリーム色アパートになった時も寂しかったけど、あれから5年が経過して、年に数回帰るだけのアパートにもそれなりに愛着があった。 リビングの電気がモナカみたいで可愛かったからすぐ好きになった。 昼で

          さよならモナカ

          知らない天井と知ってる畳

          (数年前の下書きを2023/09/11に公開設定にしました) 実家が小さなアパートにかわっていた。 私の実家は水色の四角い一軒家で父方の祖父母との二世帯住宅だったはずなんだけど。 祖母の母いびりが酷くて父の怒りがカンストしたから縁を切って引っ越すぞ。という話を帰省直前に聞いていたものの、タクシーがナビを使ってそこに送り届けてくれた時、部屋番号を何度も確認してインターホンから姉の声がした時、二度のセーブポイントでやっと状況を理解できたよね。 私はとてもアホなので、電気の形

          知らない天井と知ってる畳

          浅野いにおの漫画が読めなくなった話

          18歳の夏 地元を離れ1人で暮らして数ヶ月が経つ頃、ストーカーに誘拐された。 ストーカーは6歳上の工場勤務、私服が万年黒シャツ黒スキニー、バンドマン崩れの低身長モブ顔。浅野いにおの漫画に登場しそうな普通の異常者。 クラスメイトから知人として紹介されたのがはじまり。 クラスメイトが勝手に連絡先を教えたらしく、毎秒通知音が鳴る。ブロックするとiPhoneに着信。着信を拒否をすれば非通知。オートロックを突破して家まで迎えにきてくれちゃったりする。 「今、顔を見て話せたら君のこ

          浅野いにおの漫画が読めなくなった話