まくら
「お久しぶりですね」
美容室で髪を切った。
前回来た時は緋寒桜が咲いていたから2月だったと思う。
「今回はいつまで滞在するの?」
「一緒に暮らしていた恋人は?」
その人とはお別れして帰ってきたことを伝える。久々にログインした通販サイトみたいだ。
私のZOZOTOWNアカウントは4つ前の住所、2つ前のメールアドレスのまま時が止まっていて、最近新しい住所とメアドを登録したばかりだ。
これから久しぶりに会う人達、全員に個人情報の更新をすることになるだろう。
億劫だ。それが嫌で親しい人に会っていないし、連絡もしていない。
みんな私の情報にさほど興味がないことを知っている。話を掴むために仕方がなく聞くことも。
にしても、退屈すぎるし申し訳ない気持ちになる。一度話してしまえば相手が覚えなくてはいけない。まあ忘れていいんだけど。
なんかいい感じの掴みはないのかな。
落語を聞く時、枕がつまらなかったり不快だったりするとどんな名人でも耳が受け付けなくて駄目になることを思い出した。噺家みたいに喋ってほしいわけじゃないけど。
「めちゃめちゃデカい犬がいた」
「道で千円札を拾った」
「蝶々だと思ったら蛾だった」
「ケーキを食べている時に焼肉の匂いがして脳がバグった」
この程度のへぇ~みたいな話が聞きたいかもしれないな。
お久しぶりですね。
私は相も変わらず散歩ばかりしているのですが
道端に可愛い猫ちゃんがいて近づいてみたら掃除機でした。
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