見出し画像

ノック11本目:自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック  ~伝説の開発プロジェクト~(後編)

<プログラム概要>
若手社員向けリーダーシップ(ジュニアリーダーシップ)を学ぶ研修。
中堅社員向け研修分野におけるアルーの最大のヒット商品。


前編に引き続き「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」の開発ストーリーをご紹介させていただきます。

本プログラムは2008年7月~11月に開発をしました。現在はアルーを代表する中堅社員向け100本ノック研修です。某企業様の3年目研修の大型コンペで、最終的に競合であった大手研修会社様に勝利した案件でした。
コンペティションの経緯や受注後の取組については「前編」をご参照ください。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


⑤ラーニングポイントの絞込み

ラーニングポイント調査の次は、ラーニングポイントの絞込みに取り組みました。
今回の案件において、お客様から与件として「5つの力」という形で、ラーニングポイントの絞込みの軸をいただいておりました。しかし私は3日間の研修でポイントが5つもあることは多いと感じておりました。受講生の記憶に残りやすくするにもう一段絞り込むことが必要でした。

しかし与件なので削るわけにも行きません。そこで「5つの力」の内容を大きく3つに分類することにいたしました。

切り拓く力」(課題発見力)、
巻き込む力」(ゴールを描く力、周囲を巻き込む力、他部署との折衝力)
育てる力」(後輩指導力)
としました。

3つの大きなラーニングポイント分類にくくり、それぞれをシンプルかつキャッチーな言葉にすることで受講者に印象付けようと狙いました。これは結果として成功でした。


ちなみに「切り拓く力」は当初、「はじめる力」という名前でした。それを見た高橋さんが「お客様企業に所属する優秀な若手社員にとって『はじめる力』じゃ萎えちゃうよ。もっと力強く・・・そうだね、『切り拓く力』とかにしよう!」と。

「確かに。それはいい!」ということで「切り拓く力」という名称を採用したという経緯があります。ラーニングポイント分類の名前の付け方一つでも伝わるイメージは変わってきますね。

画像3

切り拓く力、巻き込む力、育てる力の3つの項目に対して該当する、インタビュー調査で見つけた具体的なラーニングポイントを当てはめていきました。


ここでも意識したのはラーニングポイントの絞込みです。
例えば、切り拓く力(課題発見力)に対して、調査では10以上の重要ポイントを見つけておりました。しかしそれを全部詰め込んでは受講者が咀嚼しきれません(「パスタブリッジ」を開発した際の学びです)。

開発チームで議論しながら、切り拓く力については2つだけに絞り込みました。それ以外の学びのポイントは重要度を下げて、「参考として触れるもの」と、「全く出さないもの」に明確に切り分けました。「出すもの」と「出さないもの」のレベル感を定義することが大切です。開発者には常に選択と集中の観点が求められます。


⑥自分から動くことで人を動かすリーダーシップ

ラーニングポイントの具体的な設計を進めていきましたが、もう一つ検討すべき重要な事項がありました。

切り拓く力、巻き込む力、育てる力という3つの項目を統括する概念である「若手社員のリーダーシップ」に関する具体的なメッセージを考える必要がありました。

議論を重ねて、アルーとして打ち出すメッセージとして「自分から動くことで人を動かす」ということを若手社員向けに伝えるべきという結論となりました。
このメッセージについては、内容に加えて語感も含めて多くの時間を掛けて検討をしました。結果としてキャッチーかつ力強いメッセージになったかと考えています。

ちなみに「自ら(みずから)動くことで~」という表現も検討しましたが、「みずから」という語感より「じぶんから」という語感の方が、「自分がやる」という印象をより持たせることができるだろうと考えてこちらを選択しました。

「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ」というキーワードは、研修全体の命だと考えています。この語感は、このプログラムにとって絶対に変えることができないものです。

画像4

⑦演習設計・ケーススタディ設定づくり

全体の骨子となるラーニングポイント設計が完了した後は、演習の構成検討に移りました。演習の構成作りは「パズル」と「脚本作り」に似ていると思います。

既にいくつか存在するパーツをどのように組み合わせるかというパズルと、全体としてどのように盛り上げるかのストーリーを考える脚本作りです。

この時点で決まっていたのは「頭の体操(アイスブレイク演習)」を含めて、ノック演習数は3日間研修全体で10~11の予定でした。

頭の体操は全体コンセプトである「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ」を伝えるものにすること、また他部署との折衝力を学ぶ演習はネゴシエーション100本ノックで開発した交渉演習をベースにすること、育てる力にはティーチングとコーチングのノック演習を1つずついれることを決めていました。そこで残り6~7つの空白部分の演習のデザインを行っていきました。

演習設定と並行して、行ったのがケーススタディの物語設定でした。

交渉型演習が出てくるため状況設定を創りこむことが必要でした。私はここでネゴシエーション100本ノック開発時の学びとして、実話に基づく話を作ることがいいだろうと考えました。

今回参考にした実話は、ラーニングポイント調査インタビューをさせていただいた採用支援会社様ご出身の方の事例でした。

その実話において、新事業を立ち上げていった経緯と、その際に障害となったことなどを盛り込んだ話にするのがいいと考えました。
また当時放映されていたテレビドラマから登場人物のお名前をお借りしました。交渉演習を行うため利害関係が対立する2人のキャラクターが必要だったためです。

またせっかくキャラクターを2人登場させるのであれば、交渉以外の演習では交互に登場する形にしよう!としました。(実際にはノック1・2・7が登場人物A側の物語、3・4・8が登場人物B側の物語。5と9は交渉演習なので両者が登場となりそこで物語が交差する)。

ネゴシエーション100本ノックほど渾身の小説的構成ではありませんでしたが、ちょっとした遊び心です。真面目なだけよりもエンタテインメント要素があった方がいいですね。


演習作りにおける、印象的なことを3つご紹介します。

一つ目は頭の体操「アルー山」を作ったことです。この演習は、グループで登山計画を立てるというものです。実は友人さんに教えてもらった演習を元ネタとしています。

「山のぼり」という設定は完全にオリジナルですが、全員がシートを持っており、誰もリーダーであると記載していないが、「自分から動いた人を周囲がリーダーだと認める」という学びが全体コンセプトにマッチしていたので活用させていただきました。

こうしたインパクトのある演習はオリジナルで考えるより、世の中にある「枠組み」をベースにしながら、設定をオリジナルにして作ることが効果的です。

画像5

二つ目の思い出としては、切り拓く力の演習(ノック1本目、2本目)を創るのにすごく苦戦したことですね。私が最初に書いたケーススタディがイマイチで・・・。お客様への中間報告としてデモ講義を行わせていただいたのですが「うーん・・・」という感じでした・・・・。営業担当チームを随分心配させてしまいました。

旧渋谷オフィスのセミナールームで喧々囂々の議論をしました。ケーススタディがイマイチだったのは完全に私の開発者のエゴが出てしまいまして、お客様の求める方向とずれてしまったことが原因でした。営業チームメンバーのストレートな不安と意見を聞くことができて、演習の方向性を変えることができました。
営業と開発がそれぞれの立場から議論しあうことはとても大切だと感じた機会でした。


三つ目は、演習を創る人と進行管理する人を分けたことが、とてもよかったという点です。
私はビジネスでは進行管理が得意ですが、開発の仕事においてはどちらかといえばクリエイターなので、クリエイターマインドを発揮している時にいつまでに何を創ってとか、トライアルの段取りをして・・・という切り替えは難しく感じます。

そこで大活躍をしてくれたのが開発メンバーのMさんでした。Mさんは進行管理の才能があられました。クリエイティブに開発をしている私の横で、トライアルなどの段取りを全て行っていただきました。

特に3日間の最後のノックである「交渉型総合演習」は、内容が複雑でしたのでその設計作りに私は没頭しておりました。何度もトライアルを繰り返して、創り上げた演習でしたが、Mさんの進行管理無しにはクオリティの高いものは作れなかったと考えています。


⑧納品成功、アルーを代表するプログラムの一つに

約2ヶ月強に及ぶ開発は完了し、2008年11月に初回納品がされました。
私自身も講師として参加し、これまでのアルーの開発してきたどのプログラムとも違う手ごたえを感じることができました。

お客様企業の3年目社員の方々が切実に抱えている課題意識に対して「答え」を届けることができたプログラムでした。案件は大成功に終わり、その後長年に渡りリピート受注をしております。

この「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」は、ロジカルシンキング100本ノックプロフェッショナルスタンス100本ノックプロフェッショナルスタンスシミュレーションと並んでアルーを代表するプログラムの一つとなりました。

「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ」という概念自体がアルーの主要コンセプトを体現しています。こうした形で様々なお客様にお伝えできたことは本当によかったと感じております。

画像6


(2021年追記)
本プログラム「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」については、その内容を解説した書籍を、高橋浩一さんが2009年に出版をされました。ご関心がある方はぜひこちらの書籍をご参照ください。

画像1

※よろしければ「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」(前編)もご覧ください

==================================

自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック 開発における教訓


DNA51:ラーニングポイントが書籍に落ちていないテーマは、インタビューを重ねて創り上げる
若手社員の頃からリーダーシップを発揮していた人物にインタビューを重ねてリアルなラーニングポイントを収集することができた


DNA52:売った人、創る人、進行管理をする人でプロジェクトチームを創る
営業、開発、進行管理について得意なメンバーで役割分担をしたプロジェクトチームを作ったことで良いものができた


DNA53:ラーニングポイントはキャッチーなタイトル付けをする
切り拓く力、巻き込む力、育てる力というキャッチーなタイトルをつけることで受講者の記憶に残すことができた


DNA54:世の中にあるインパクトのある演習を元ネタにして、設定を全部作り変えることでオリジナルにする
「アルー山」の演習は、元々世の中に存在していた演習を参考にしている。それをアルー流にアレンジしたことで成功した


DNA55:アルーのコンセプトを体現するメッセージを発信する
「自分から動くことで人を動かす」というアルーの主要コンセプトの一つをキーメッセージにした

==================================

よろしければ、続きの記事もご覧ください!

==================================

本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

<「スタートアップ営業組織作りの教科書」をまとめて読むには↓>

スタートアップ営業組織作りの教科書トップ画像

==================================

お問い合わせ・資料請求

アルー株式会社への研修のご相談はこちらからご連絡をいただけますと幸いです。

お問い合わせ・資料請求

新入社員研修、管理職研修、DX人材育成、グローバル人材育成、Eラーニング、ラーニングマネジメントシステム等、企業内人材育成の様々な課題にお応えいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?