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ノック8本目:プロフェッショナルスタンスシミュレーション ~やればできる~

<プログラム概要>
プロフェッショナルスタンス100本ノックの追加プログラムとして開発された研修。仕事の基本動作の習得度合いを実践的なシミュレーション形式の演習を通じて理解する。アルーの代表的研修プログラムの一つ。


プロフェッショナルスタンスシミュレーションの開発を思い出すと「やればできる!」という言葉しか思い浮かびません。
2007年3月~4月にかけて開発をしましたが、1か月後には納品が必要であるという極めて短期間でのプロジェクトでした。

それまでに開発をしてきた「100本ノック研修」とも全く異なる「シミュレーション研修」を創る必要があり本当に大変だった・・・という感想です。
ですが本プログラムを開発したことでアルーの研修プログラムの枠が大きく広がりました。

物事は何でもTryしてみることは大切ですね。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


①企画構想案だけの影も形もないプログラムの受注

元々このプログラムは「プロフェッショナルスタンス100本ノック」を開発した時点(2006年夏頃)から構想にありました。

元々、プロフェッショナルスタンス100本ノック(以下プロスタ)は、新入社員研修に必要な学びが全部入っているということをコンセプトにしておりました。プロスタを企画する際には、徹底的に競合他社のプログラムをベンチマークしました。

ベンチマークをした複数の新入社員向け研修プログラムには「仕事の疑似体験となる実践シミュレーション形式の演習」が含まれるということを把握していました。当社としても競合商品の良いところを踏まえると共に、それを超える商品を仕上げることを目指しました。


しかし、プロフェッショナルスタンスシミュレーションは企画案を提案書にまとめただけで当時のあまりの忙しさ・時間の無さのために開発が進んでおりませんでした。

「少し仕事が落ち着いたら開発をしよう」と思っていたのですが、当時のパートナー企業であるF社のW社長、Iさん、Kさんが、私の作ったプログラム案をまとめた企画書を持って様々なお客様に提案していただいていたのです。


そして・・・2007年3月下旬にF社のKさん(現在は人材育成分野のトップコンサルタントとして幅広く活躍されています)が、このプロフェッショナルスタンスシミュレーションを「受注をしてしまった」のです。初回案件は大手製造業様の新入社員研修の「総括」という位置づけで実施をするものでした。


そもそも、企画段階で影も形もないプログラムの資料を営業の方々にお渡ししていたことや、コミュニケーション不足が大きな問題でした。

私は恐縮しながらも「実は間に合わない」ということをKさんにお伝えしたのですが、最終的には、お客様やF社様にもご迷惑をかけることはできないので、開発に着手することになりました。

実施予定日は2007年4月26日。印刷や教材の配送を考えるとその3日前の4月23日が納期でしたが、さらに私自身がお客様の研修への講師登壇が入ったため、4月16日が納期となりました。

仕事の疑似体験を行うシミュレーションという新アーキテクチャのプログラムの開発なのに開発期間は1ヶ月間しかありません


本件の営業責任者であるKさんと話し合いからスタートしました。お客様と約束している与件をヒアリングしきると以下のことが判明しました。

①約1か月間の新入社員研修の「総括の位置づけ」として実施する研修であること
②職場の疑似体験(シミュレーション)研修形式であること
③研修プログラム内での「振り返り」が充実していることが重要であること

特に③の振り返りにおいて「できたこと」と「できなかったこと」を明確にすることが絶対に外してはいけない与件でした。
一方、それ以外については開発側にゆだねられていることがわかりました。

顧客ありきの案件の場合は、初動で「与件」を整理することが大切です。

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②アーキテクチャ設計

このプログラムの開発において大切なことは、アーキテクチャ設計に時間を掛けたことに尽きます。既存の100本ノック研修とは違う演習方法であるため、演習の枠組みからデザインをする必要がありました。


アーキテクチャ設計資料」という企画資料の作成に着手しました。
これは現在でもファイルの形で残っております。「シミュレーション演習」という新しい形式の構造を一つずつ定義していきました。

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要点だけを以下に記載します。

①シミュレーション開発にあたり定義が最初に必要だったこと
「ある一定の演習時間の中で、複数の課題(タスク)が提示され、各タスクには締め切り時間が設定されている。終了後に各タスクが採点される」という基本構造の整理です。

②インプット形式・アウトプット形式の定義
各タスクがどのような形で受講者に提示されるかという「インプット形式」を定義しました。インプットは全て情報シートを配布する形で提示することとしました。
続いて受講者はどのような形で「アウトプットするか」を定義しました。これも全て書類を作成することを定義しました。その際に指定の「帳票」を添付することを必須とすることで提出管理を可能としました。

③シミュレーション全体時間の設定と、タスク数の検討を行いました。
当初演習時間が「150分間タスク数15」という案で開発を進めていましたが、全体の研修時間との兼ね合いから「120分間タスク数10」に変更しました。このタスク数の設定には、受講生の作業量を定量的にモデリングし、妥当な稼働率に収まるように設計しました。

④タスク数が決定された後、各タスクの中身を検討しました。
プロフェッショナルスタンスシミュレーションのタスクには「別の資料が混入したアンケートを分析する業務」や、「参加予定者の全員の都合が合わない会議の日程調整」など、少し難しい状況を想定して、アイデア出しをしていきました。そして各タスクの受講生への提示順番、提示時間や締め切り時間を設定していきました。

⑤各タスクの採点評価ロジックを検討しました。
採点評価は定量的に行うか・定性的に行うか、何段階程度で実施するのかなどを検討しました。結果として定量的に5段階で採点をすることを決定しました。開発予定の10タスク分の採点ロジックを作成しました。

⑥シミュレーション全体の進行管理をするための資料類を整備する


という順番でアーキテクチャ設計を進めました。
研修のラーニングポイント(学びのポイント)を企画する前に、アーキテクチャを優先しました。上記作業は実質2週間程度で集中して実施をしました。

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シミュレーション演習部分が出来た後は、1日間研修プログラムの形として仕上げるだけ、という順番で開発を進めました。

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③ロジスティックス関係の整備に注力

研修プログラムの中身づくりと同時に、もう一つ重要な大事なことがありました。それは「ロジスティクスの整備」でした。

プロフェッショナルスタンスシミュレーションはその特性上、配布資料や備品が極めて多いプログラムでした。配布資料・備品総数は50種類を上回ります。実際に運用する場合、資料不足や誤配布等のトラブルが発生するであろうことは予期できました。そのためトラブルを最小化するためのロジスティクスの設計が必要でした。

検討の結果、上記の50種類以上の資料類・備品類を管理するドキュメントフォルダ構成を作成しました。
フォルダ構成は、ファイル数が多いことから時系列で資料をまとめられるようにしました。資料・備品リストもそのフォルダ構造に全て合わせる形に整理しました。

最終的にロジスティック整備を含めて納期の4月16日ギリギリに完成しました。4月26日の研修に向けて、私自身がF社様に伺い、ファイルの受け渡しを行いました。

また備品類の設定も全て私が行いました。初回の備品は原宿の100円ショップまで私が買い出しに行きました。

大手製造業様の新入社員研修は、F社Kさんと、当日の講師をご担当された「お二人のS講師」の多大なるご尽力により大成功に終えることができました。


④アートの感性を持ち込め

余談でありますが、プロフェッショナルスタンスシミュレーションの開発の頃、私がラテン音楽にはまっていた時期でした。

納期は差し迫り、新規のアーキテクチャでどうすればいいのか・・・という状態でバタバタと落ち着かない日々でした。私自身が暗くならないように、明るい軽快なしたラテン音楽がマッチしていたのでしょう。

そのため本プログラムのシミュレーション演習を体験していただいた受講生の方はお感じになられたかもしれませんが、非常にバタバタする演習になっています。ラテン音楽が大きく影響を与えていると思います。

開発途中から意図的にラテンノリの研修にしよう!と考えておりました。ラテンノリがこのプログラムのいい個性になっているのではないでしょうか。


⑤【2021年加筆】プロフェッショナルスタンスシミュレーションの進化

プロフェッショナルスタンスシミュレーションは、その後アルーを代表する研修プログラムの一つとして多くのお客様にご導入をいただいております。

上記の開発の10年後、2017年には全体構造を抜本的に整備したリメイクバージョンを制作しました。当初のお客様の与件であった「『できたこと』と『できなかったこと』を明確にすること」がより深みを増して行うことができるようになりました。またシミュレーション演習自体のリアル度、ラーニングポイントとの結びつきもより強まりました。

2020年には、オンライン研修に対応した「プロフェッショナルスタンスシミュレーションオンライン」に進化をしました。紙も備品も一切使用しない一方で2017年改訂バージョンで実現していたワークが完全にオンライン上で再現されております。また動画を活用し、シミュレーションの臨場感を更に高めています。
リモートワーク時代に仕事の進め方を実践的に学ぶトレーニングとなっております。

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プロフェッショナルスタンスシミュレーション 開発における教訓


DNA36:やればできる。できるかできないかではなく、やるかやらないか
短納期であっても、新アーキテクチャであっても、覚悟を決めて実行した
やったらできた


DNA37:最初にお客様と握っている与件を把握する
F社Kさんから徹底的に与件のヒアリングをした


DNA38:アーキテクチャの設計を固めてから、中身(演習内容・ラーニングポイント)を創りこむ
シミュレーションの基本構造(アーキテクチャ)設計を優先して実行した


DNA39:実行段階での資料印刷・備品準備のトラブルを回避するための徹底的な工夫をする
ロジスティクス関係でトラブルが起きることを予期して、なるべくミスが発生しないようなフォルダ構成を作った


DNA40:音楽やリズム感、ビジュアル、香りのイメージ等、アート的な感覚をプログラムに入れる
ラテン音楽のノリを意識してプログラムを作りこんだ

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本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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