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ノック10本目:ネゴシエーション100本ノック ~機能とアートの融合~

<プログラム概要>
ビジネスにおける交渉(ネゴシエーション)の基本スキルを身につける研修
作り込まれたケーススタディが特徴的


2008年1月、私は担当していた営業部で、当時新卒2年目メンバーのKさんの営業によく同行しておりました。
ネゴシエーション100本ノック」は、Kさんのお客様である外資系広告代理店様の案件で開発をすることになったのでした。
(Kさんは2021年春まで在籍。その後人事、カスタマイズ部門でご活躍いただきました)

外資系広告代理店様との取引は2007年10月に始まりました。2008年1月のロジカルシンキング100本ノックの納品成功を受けまして、追加依頼としていただいたのが交渉スキル(ネゴシエーションスキル)研修案件でした。

2007年、2008年当時のアルーは顧客数拡大、自社営業チャネルの確立を目指しており、既存テーマにない研修プログラムの新規開発に積極的にチャレンジしていた時期でした。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


①ラーニングポイント調査と絞込み

開発にあたってネゴシエーションというテーマに関するラーニングポイントづくりが必要でした。私の研修開発手法においてはラーニングポイントづくりはかなり重きを占めます。

ラーニングのポイントづくりは2つのフェーズがあります。

第1フェーズはラーニングポイントの理解です。
多くのケースにおいて開発テーマに対して私が知見を持っていることはあまりありません。むしろ「知識ほぼゼロ」という状態から開発に取り組むケースが多くありました。
ネゴシエーション・交渉術というテーマにおいて、世の中にどのような学びがあるのか、全体像を捉えることが大切でした。そのためには書籍調査、競合調査、インタビューという手法を取りました。

第2フェーズはラーニングポイントの絞込みです。
パスタブリッジ開発において深く教訓を得たように、ラーニングポイントが適切に絞り込まれていなければ受講者の記憶に残ることはできません。


ネゴシエーション100本ノック開発では、特に書籍調査や競合研修調査を重点的に行いました。書籍等既存の教材は、重要ポイントが著者によって絞り込まれています。もちろん書籍が適切な構造化がされていない場合も往々にしてありえるので、先入観を持たないことが大切です。そのため該当テーマに関して最低5~10冊程度の文献調査が必要となります。


ある程度ラーニングポイントに関する情報が集まった段階で、絞込みに移りました。
テーマによっては、このラーニングポイントの絞り込みが一番苦戦するところですが、ネゴシエーションに関してはシンプルに4つに絞ることができました。

上位概念として「ゼロサムではなくプラスサム
それを支える具体的な3つのポイントとして・・・
①WHATではなくWHY
②プラスサムを創る5つのルール
③強力な対案を持つ
というものになりました。

ネゴシエーション100本ノック開発では、ラーニングポイントの絞込みがスムーズに生きましたが、そうではないケースもあります。絞込みが中々上手く行かなかったケースについては別の事例にて解説をさせていただきます。

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②実話に基づくケーススタディ

ネゴシエーション100本ノックの開発では演習の作り込みが一番大変でした。交渉スキルの研修であるため、演習は必然的に交渉の練習を繰り返すことになります。しかし交渉演習は状況設定が「適当」では、演習がすぐに終ってしまうのです

論理に抜けがある等、状況設定が適当であると、受講者の方が簡単に譲歩したり答えを出してしまったりします。あくまで研修上の交渉なので結果に対してコミットがされません。現実の交渉であれば様々な「利害関係」「しがらみ」や「譲れない部分」があるのですが、研修というヴァーチャルであるため簡単に譲ってしまいます。

実際に簡単な設定で社内トライアルをやってみたところ、上述のような予想通りの結果となりました。
そこで私のとったアプローチは「実話に基づくケーススタディ」を創り上げ、その物語世界に共感してもらうこと、そして徹底的に論理を詰め簡単に終わらない仕掛けを作ることでした。

私は小説家ではありませんので、空想だけでビジネス上の様々なしがらみを設定して論理的に抜けのない演習設定をつくることはできません。だからこそ現実にあった出来事に基づき「表面」を変えた状況設定を作るのが最も効果的だと考えました。

受講者は実話に基づく物語の中で、交渉の担い手となります。すなわち受講者が担当する登場人物も、実在の人物をモデルに置くことが必要でした。

こうしたアプローチであれば、受講者にケーススタディの登場人物の置かれた状況を伝えることは容易です。あとは情報量が多くなりすぎないように気を付けることが大切でした。

ネゴシエーション100本ノック開発において私が選んだ実話とは、アルーと当時のパートナー会社様との間で起こった提携に関する実際のいくつかの交渉でした。
私自身はその提携においてまさしく「一方の当事者」であるため、状況設定や当事者同士の状況、都合、感情なども良く知っておりました。


こうして私は約1ヶ月間を掛けて、ひたすらケーススタディの物語を書き、状況設定を創りこむという作家のような時間を過ごしました。

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2008年3月にネゴシエーション100本ノックは初期版を完成させることができました。
100本ノックシリーズとして学びの効果を作り出す構造をとりながら、ケーススタディを読むだけでもビジネス小説のような物語になっている「機能とアートが融合したプログラム」として形作ることができました。


③納品後の改善

そして2008年4月に外資系広告代理店様にて初納品。しかしそこで課題に直面しました。
全部で4つある演習のうち前半2つは狙い通り受講者が共感し、盛り上がる形で研修が進んでいきました。しかし、後半3問目・4問目の演習が受講者の方々の業界と乖離した演習設定であったがゆえに一気に空気が冷え込んでしまったそうでした。

ネゴシエーション100本ノックは、お客様に合わせる形で広告代理店を舞台としたケースストーリーを創っていました。
しかし元となる実話は教育研修会社の話のため、置き換えただけでは不整合が起こるような設定になっておりました。

受講者の所属する業界を舞台にケース設定をすると、細部に目がいきがちになります。この点に対する配慮が不足しておりました。

また、もう一つの課題は受講者同士のレベル差でした。どの研修でも起こりえる話ですがが、ネゴシエーション100本ノックはペアワーク主体の研修であり、受講者の力量差により結果に大きな差がついてしまうという問題が起きました。


2回目の納品に向けて改定を進めました。
一つはレベル差対策。受講者レベルに合わせて研修に参加できるように、レベル別の取り組み方法を明示する形で対処をしました。
もう一つは広告代理店にてありえる設定にケースを変更しました。この改定により第2回納品は無事完了することができました。

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このネゴシエーション100本ノック自体は、アルーの開発史の中では大きな意味を持ったプログラムでした。

このプログラムで作り出した、「交渉型演習の基本アーキテクチャ」は、次のアルーの主力商品となった「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」における「巻き込む力」の基幹パーツとして取り入れられています。

交渉型演習は、受講者の方が共感できる設定・ストーリーと、簡単に交渉が決着しない論理の詰めが必要とされる、演習開発においても最も難易度が高いものの一つと私は考えています。

(※「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノック」は、本すごい開発バイブル11本目としてご紹介します)


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ネゴシエーション100本ノック 開発における教訓


DNA46:ラーニングポイントを作る際には、書籍・競合情報を徹底的に解読する
複数の書籍や競合情報を徹底的に研究し、ラーニングポイント調査の骨子とした

DNA47:実話に基づくケーススタディストーリーを創る
アルーとパートナー企業様の実際の交渉をモデルとした状況設定を作った

DNA48:ケーススタディの登場人物は、実在の人物をモデルにする
実在の人物に基づく設定にすることで、受講者が設定に共感しやすくなる

DNA49:受講者レベルに合わせた研修への参加ができるように、レベル別の取り組み方を明示する
受講者のレベル差があることを想定して、レベル別の研修に対する取り組み方を明示した

DNA50:受講生の所属する業界と近いケース設定を作る場合は、現実から乖離しないようにする
初期版では広告代理店のビジネスにありえない設定を作ってしまった
受講生の視点に立って設定を創り上げる

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よろしければ、続きの記事もご覧ください!

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本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

<「スタートアップ営業組織作りの教科書」をまとめて読むには↓>

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