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【4/24日記】消えたアプリを思い出せない

スマホ画面からアプリが消えた。

下段右端。そこだけぽっかりと空いている。自分で消した覚えはないから、多分スマホを上着のポケットに入れたときかなんかに、画面が布で擦れて勝手に消されちゃったんだと思う。

しかも、1番前の画面にあるアプリ。ここに置くってことは私が頻繁に使うやつだと判断したからなんだろうけど、全然なんのアプリだったのか思い出せない。LINEとかTwitterとかが消えてたら流石にわかるので、多分そんなに使ってなかったアプリなんだろうなと思って、今は考えるのをやめた。

失った時はじめて、その人(物)の大切さがわかる。これはよく聞くし、たしかにそうだと思うけれど、逆パターンもあるよなと思う。

つまり、その人(物)を失った時はじめて、「あれ、そんなに大切じゃなかったわ」とわかることもあるってこと。

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思い出すのは大学3年生の時、初めて出来た彼のこと。彼は私より2つ学年が上の先輩で、付き合っていた時は5年生だった。要は留年組だった。

彼とは1年くらい交際して、ある日パタリと連絡が途絶えて、それから音信不通。自然消滅で別れた。

悲しかった。なんだかんだで私は彼のことが大好きだったんだと思う。自然消滅。噂には聞いていたけれど、こういうことかと理解した。想像以上に辛い。別れたいなら、そう言って欲しかった。一番大切にされていない別れ方なんだろうなと、幼心に悟った。

そのあと私が卒業して就職して、あらためて彼と連絡をとってみたらやっと繋がって会うことになった。

実は私と付き合っているとき、就活もしていなかったし単位も全然とっていなかったし卒業する気もなかったこと。それなのに私には卒業もするし就職も決まったと咄嗟に嘘をついてしまったこと。それで結局気まずくなって自然消滅するしかなかったこと。彼はあの時の自然消滅の理由を洗いざらい話してくれた。

その時、彼は大学7年生。3年留年して、やっと今就活中。私の方が先に卒業して社会人になってしまった。

それから何回か会ったけれど、別に付き合っているわけでもなく。友人にそのことを話したら「そんなやつに優しくする必要ないよ」と言われた。その言葉が、ずるずると会い続けていた自分を決心させてくれた。確か彼から「焼肉に行こう」とメールが来て、それを無視したか行けませんと返信したか忘れたけど、それっきり会わなかった。

今、そのことを久しぶりに思い出した。思い出したけれど、その時の気持ちとかは全然思い出せない。多分、何も感じてなかった。後悔した記憶もない。少なからず社会人1年目でちょっと心細かった私は、少しでも空いた心の隙間を埋めたいと思って彼に会っていたはずなのに、終わってみればあっけらかんとしていた。多分もう私にとって必要のない人だったんだと思う。冷たい言い方だけど。

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逆に、失って初めてわかる大切さで最近感じたのは、トースターである。家のオーブンレンジのトースター機能だけが壊れて、それでもレンジ機能だけは使えるから1ヶ月頑張って使っていたけれど、耐えかねて新しいのをつい最近買った。結果、トースト最高である。

そう考えると私の初彼はトースター以下だったのだなと。思えば友人とか家族(旦那さんを含め)は替えが効かないし、失った時の悲しみは想像するに大きいけれど、彼氏ってそうでもないよなと思う。ただ、こんな私でも付き合っている時は「彼以外私を好きになってくれる人はいないかも」と思い込んで多少の違和感も蓋をして見ないようにしていた。そんなだからか結局ダメになった時も、感傷にひたった記憶はあんまりなくて、「また相手探しか」という現実に打ちひしがられることの方が多かった。

かれこれ30年生きていて3人しか付き合ったことない(うち一人旦那)けれど、もう最初の彼の誕生日すら思い出せない。2番目の彼も怪しい。終わってしまったら、そんなもん。薄情だけど、薄情も芸のうち?こんなんだからか、私は生きていけるのかも。

今日の朝食。カリカリほかほかのトーストに少しバターを溶かして。未だにアプリが何だったのかも思い出せないし、初彼の誕生日も思い出せない。それでも生きていける。パンが焼けなくなるのは困るけど。本当に必要なものとそうでなもの。それについてちょっと考えた日だった。

一度はサポートされてみたい人生