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息長く飯を食っている人がやっている3つのこと

一時期ものすごく元気に気を吐いていたのに、そのうち見なくなってしまう人と、仮に目立たなくても長い期間、飯を食い続けている人の違いとは何でしょうか。

業界や職種にもよると思いますが、少なくとも、フリーランスやコンサルっぽい仕事をしている人であれば、「書く」「話す」「実務をしている(実務ができる)」の3つのバランスが良い人だと思います。

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僕は26歳~27歳の2年間、マーケティング会社に勤めていました。

その会社は、社員数30人くらいの比較的小さな会社でしたが、40年以上に渡る業歴の長さと、大手広告主の宣伝・広報・販促・マーケティング・事業部の鮮度の高いデータベースを有していたことから、コンサル、リサーチ、チャネル戦略など、良質かつ多様な業務を請け負っていました。

また、年間200本を超える有料公開セミナーを開催していたことから(講師を務める)著名な独立コンサルタントの方々とチームを組み、有料セミナーの企画開催、社内研修やコンサルなどの提案・受注・実務を行う機会にたくさん恵まれました。

チームを組む方々は、独立したての若手コンサルタントから、その道ウン十年のコンサルタントまで、それはもう多数かつ多様な方々がいらっしゃったわけですが、その方々との仕事を通して、いっときすごい勢いで人気コンサルのスターダムにのし上がるものの、すぐにいなくなってしまう(勢いがなくなってしまう)人と、息長くずーっと飯を食べている人の違いは何なんだろう?と興味を持つようになりました。

そして、長く飯を食っている人に共通する三種の神器を見つけたんです。

①書く

独立コンサルの方々は、ほぼ例外なく本を書いていました(本を出版している著者でした)。

少ない人でも一冊、多い人では10冊以上の本を書いており、ビジネス雑誌にも連載を持っていたり、ご意見番としてテレビのコメンテーターをしている方もいらっしゃいました。

それもそのはず。

僕がその会社に勤めていたのは1999年~2000年ですから、まだブログもmixiもありません。

だから、業界で一目置かれるためのツールが、本(書籍出版)しかなかったんです。

当時、僕が新しい公開セミナーを企画するときに一番最初にやっていたことは、八重洲ブックセンターのマーケティング棚の前に行き、ひたすら(まだ比較的有名ではない)気鋭の著者(コンサルタント)を探すこと。

出版されているマーケティング本を片っ端から頭に入れ、誰がどのテーマに強く、どの会社でどのくらいのセミナー講師をやっているのか。

日経ビジネススクールなどですでに講師をしていれば、僕が勤める会社で二番煎じのセミナーを企画しても高い集客力のセミナーにはなりません(=儲かりません)

そのため、1~2週間に一度は八重洲ブックセンターに通い、新しく出た本にすべて目を通し、大手企業に勤める宣伝・広報・マーケティング担当者の課題に合致するか、新しい切り口か、まだ他の機関で売り出されていないかを確認し、行けそうであれば、著者プロフィールから連絡先を割り出し、「僕と一緒に(うちの会社で)公開セミナーやりませんか!」と営業するんです。

当時は、ネットに転がっている情報もまだまだ圧倒的に少なかったので、テレビ局がご意見番(そのテーマに詳しいコメンテーター)を探すときも、雑誌社が新しい連載を依頼する人を探すときも、だいたい「著者をあたる」のが一般的でした。

そういうことからも、「書く(本を出す)」ことは、まず当該テーマに詳しいことを世に示し、信用あるオーソリティ(権威者)として一目置かれるために重要な時代でした(いまでもそうですけどね)

もうひとつ、書くことには重要な要素があります(どちらかと言うとこちらの方が大事です)

それは、書くことを通して頭の中が整理されることです。

本を書くメリットは

にも書きましたが、大量の文章を書くことの一番のご褒美は、自分の頭の中にある暗黙知が形式知化されることです。

140文字は直感で書けます。勢い余って1,000文字なら手が滑ったら書けます。2,000~3,000文字ならウンウンうなりながら頑張れば書けるかもしれません。

でも、一般的なビジネス書は10万文字です。

その分量を、読者が知りたいことに対して、わかりやすく、順序立てて、論理的に、まとめなければなりません。

パワポじゃなく、ワードなので、図版の美しさでごまかすこともできません。

文章で、読者を飽きさせず、最後まで読んでもらえ、かつ、読了後に「読んでよかった!」「ためになった」と思わせなければなりません。

10万文字書くのは大変です。

書きながら、あれ、ここ変だな。あれ、ここ言ってること違うな。あれ、これなに言ってるのかわからないな。あれ、これちょっと情報怪しいな。などが死ぬほど出てきます。

いつもお客さんや上司・部下・同僚に話していることが、いかに曖昧で非論理的なことだったのか、文章に整理することを通してすべてが白日のもとにさらされるのです。

だからこそ、10万文字を書き上げたときの頭の中の整理整頓具合はヤバいのです。

ぐちゃぐちゃだった押入れを、プロの整理整頓アドバイザーが片付けてくれた後のようにスッキリします。

本を複数冊出している人は、定期的に頭の中を(執筆というプロセスを通して)整理整頓している人ですから、常に頭の中がスッキリしています。

これが、書くこと、書けること、書き続けることができることの強さです。

②話す

三種の神器の2つ目は話す(話せる)こと。つまり、講師業です。

ビジネス界には大きく分けて、講演、講義、社内研修講師と、3つの話す仕事があります。

[講演]

講演は、大規模カンファレンスや全社員が集まる集まりなどでの基調講演のようなもの。

その後の実務につながることはあまりなく、基調講演のスピーカーとして呼ばれ、話し終わったらお役御免というケースがほとんど。

その代わり、フィーは比較的高く、超有名人であれば1時間200万円、有名人で100万円、売れっ子コンサルであれば50万円くらいもらえます。

事前に1回の打ち合わせをして、あとは当日会場に行って1時間話せば終わりですから、手離れがよく、美味しい仕事と言えるかもしれません。

[講義]

講義は、各社が主催する公開セミナーや、日本マーケティング協会、宣伝会議などの講師(業)です。

公開セミナーのような「旬そのもの」を一度きりの基調講演で話すものではなく、現在進行形で必要なテーマを、主催者に呼ばれて担当のコマを話すのが一般的。

具体的なソリューションがなくても、聴講したあとになんとなく「興味深かった」と思ってもらえればOKな(ことが多い)基調講演に対し、実務に役立つノウハウとドゥハウを提供しなければいけない講義は、実務家でなければできない仕事です。

[研修講師]

最後の研修講師は、どこかの会社に呼ばれて行うものです。

フルカスタマイズでプログラムをつくる場合もあれば、汎用的な内容を少しだけカスタマイズして提供する場合もあります。

基調講演、講義講師は、不特定多数の人が対象になりますが、社内研修講師はクライアント(対象者)が一社ですから、業界知識やその会社の研究などをある程度行い、きめ細かな情報を提供する必要があります。

講演、講義、研修講師と、3つの話す仕事がありますが、人気講師に共通する特徴は(当たり前ですが)話がおもしろいことです。

「講演も講義も研修も、内容がすべて!」「どんなに話がおもしろくたって、内容がスカスカだったら意味無し!」と思う人もいるかもしれませんが、正しく有益なことをつまらなく話せる人はたくさんいます。

そして、話がおもしろいだけで内容がスカスカの人が、継続的に仕事を得ることができるほど世の中は甘くありません。

正しく、有益なことを、おもしろく話せる話法や話術。長く飯を食っている人は、例外なく、みな人気講師でした。

そして、実はこの「書く」と「話す」はセットなんですね。

10万字を書く工程で頭の中の情報がすべて理路整然と形式知化されているから、難しいことをわかりやすく話すことができるんです。

「話がわかりやすい人」は、話法や話術が優れているだけでなく、何周も、何十週も、思考を回転させ、それを文章でまとめているから、わかりやすく話をすることができるのです(書いたことを話しているだけだから)。

そして、話せば話すほど、書く力も向上します。

多くの聴衆を前に何度も講演や講義をしていると、話している最中に(たまにですが)神様が降りてきます。

なんとなく差し込んだたとえ話がすごくウケたり、ふとホワイトボードに展開しながら話した図版がとても秀逸だったり。

書いたことを話し、話しているときに新たな気付きを得る。この回転をさせている人が強いのは、そういう理由があるのだと思います。

③実務をしている(実務がデキる)

三種の神器の最後は、実務をしていること(しているだけでなく、当然、優秀な実務家であるということ)です。

「書く」と「話す」だけでも飯は食えます。それだけの方が手離れよく稼げると言っても過言ではありません。

では、なぜこの「実務をしている」が揃って三種の神器なのか。

当時勤めていた会社で、何人もの気鋭コンサルタントの方とお仕事をさせていただきました。

某超有名企業を退職し、書籍を出版して独立された方。話も上手で、2時間の講演講師のフィーは50万円でした(営業手数料があるため、会社がクライアントに請求する金額はもっと高い金額です)。

一般的な講演や企業研修の請求額は、2時間で30万円~50万円。そのうち、講師に支払われるのは、15万円~30万円くらいがほとんどです。だから、講師が一コマで50万円を請求するのは、かなり高いレンジ(人気講師)である証です。

その方が話す鉄板プログラムは3つ(主に1つ)。いずれも、前職で得たノウハウをベースにしたものです(クライアント各社はその会社のノウハウを欲しがっていました)。

1回50万円の仕事がおもしろいように受注できます。

講演や研修会は春と秋に集中しますので、その時期は午前中に1本、午後に1本、夜に1本と、1日にトリプルヘッダーなんてことも珍しくありませんでした。

講師の方も、いままでは月給で仕事をしていたのに、1日で150万円を稼ぐわけですから、おもしろくて仕方がなかったでしょう。

稼働できる日で空き枠があれば、それを埋めるよう、強い要請がきました。そして、そのうち、「こういう会社は嫌だ」「こういう案件は受けたくない」と、要望も横柄になって行きました。

その方の年収は、初年度で7,000万円を超えていたと思います。ひとりコンサルで外注原価は無し。交通費も宿泊代もクライアント持ちですから、ほぼ全額が利益です(納税は大変だったと思いますが)。

でも、その講師の仕事は翌年にはほぼなくなっていました。

それだけの回数話せば、ほとんどの対象クライアントの人たちは「あの人の話は一度聞いたことがある」という状態になります。

実務をせず、過去(前職)の経験と知識を切り売りして換金していたわけですから、新しいプログラムはつくれません。だから、いつも同じ話になってしまいます。

翌年、2時間50万円のプログラムは、20万円にしても売れることはありませんでした。

お金を稼ぐことだけに集中するのなら、話すことに特化をした方が効率的です。

でも、わかりやすく話すためには、書くことが必要です。執筆作業の換金効率はものすごく悪いですが、わかりやすい話(講師)をするために不可欠な工程ですし、業界内での自身のブランド力向上への近道となります。

そして、何より重要なのが、実務を続けることです。

実務を通して、クライアントが抱える最新の課題を把握し、正解のない現場業務の中で粘り強く解決の糸口を探り続ける。

その工程が新たな気づきの蓄積と、書くことのこれ以上ないインプットになるのです。

実務を手放したら終わりです。

話すことはアウトプットです。インプットしたことをすり減らしながら換金しているという意識を強く持つべきです。

取り組む順番と換金効率は下記の通りです。

・実務を頑張る(=短期的な換金効率「中」/中長期的な換金効果「大」)
・書くことで形式知化しながら業界で一目置かれる(=短期的な換金効率「小」/中長期的な換金効果「大」)
・話す(=短期的な換金効率「大」/中長期的な換金効果「小」)

あくまで実務がベース。

そして、書くことと話すことは、短期・中長期で「得られる”効果”」と「換金”効率”」が真逆なことを知っておいてください。

だから、それぞれへの投下時間と換金(=収益化)をポートフォリオで考え、意識的にコントロールすることが大切なのです。

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2020年現在、僕が当時の会社に勤めていたときから20年もの年月が流れました。

いまやネットバリバリ。TwitterやFacebookで多くの人と交流できる。noteで自身の考えを発表することもできる。ビジネスYouTuberとしてデビューすることだってできます。

でも、だからこそ、手段やツールに踊らされていないでしょうか。

大切なのは、書くこと、話すこと、実務をすることの3つだと思います。それさえちゃんとやっていれば、Twitterのフォロワー数もnoteの読者も仕事の依頼も、ちゃんと増えます。

世の中の人は、頑張っている有能な人をちゃんと見ています。この3つを愚直にコツコツと続けていれば、必ず誰かが見つけてくれます。

逆に、この3つをすっ飛ばして、はやりのツールや手段を使って有名になろうとしても、一瞬はなれるかもしれませんが、すぐにメッキが剥がれてしまいます。

大切なのは、長く、飯を食うこと(活躍しつづけること)。

ということで(実務が最も大事なことが前提ですが)まずはまとまった文章を書くことから始めてみませんか。

このnoteが5,000文字です。その分量を書くのは、すぐには難しいかもしれませんが、始めなければいつまでもできないままです。

1,000文字でいいから書き始めてみる。そして、週に1~2本でいいから、多くの人に役立つ内容を考え、書き、発信してみる。

読む側から、書く側になってみましょう。そうすれば、あなたも10,000人に100人(まずは1%)です。

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