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TVアニメ『21エモン』雑感&まとめ

 7回に渡って投稿してきたアニメ『21エモン』に関する記事の締めくくりです。今回はこれまでに書き残した事柄などを綴りながら、取りまとめとしています。これまで通りネタバレ前提です。まずは関連記事のリンクから。

関連記事リンク

1.「TVアニメ『21エモン』全話ガイド①」(第1~10話)
2.「TVアニメ『21エモン』全話ガイド②」(第11~20話)
3.「TVアニメ『21エモン』全話ガイド③」(第21~30話)
4.「TVアニメ『21エモン』全話ガイド④」(第31~39話)
5.「劇場版『21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス』ガイド
6.「TVアニメ『21エモン』キャラ紹介
7.「TVアニメ『21エモン』原作との比較
8.「TVアニメ『21エモン』雑感&まとめ」(本記事)
※.「元気があれば、何でもできる?」(一例としてエモンに言及)

打ち切りではない「全39話」

 全39話という中途半端な話数から、レビューなどで打ち切りとの誤解が散見される本作だが、放送期間を見る限りは打ち切りではない。
第1話:1991年5月2日
第39話:1992年3月26日(最終話)
 まず、第1回が5月2日になっている点について。前番組は、同原作者の藤子・F・不二雄による『チンプイ』で、これを見る限りむしろ、前番組『チンプイ』のほうが4月18日という半端な時期に番組が終了している。『21エモン』は1992年1月9日の第28話以降は最終回まで毎週途切れなく放送が続き、最終回は年度末でTV番組の多くが入れ替わる3月最終週である。
 さらに一年間のなかで放送されなかった週を確認してみると、「1992.6.6|7.4|8.1|9.26|10.3|10.10|10.31|12.26|1992.1.2」の9回。このうちの6回はやはり特番の放送が多くなる四半期区切りの時期である。そして当時は地上波でのプロ野球中継が多かったことを考えれば、全39話が特別少ない放送話数とは考えられない。
 その裏付けとして、同時期に放送されていた30分TVアニメの「世界名作劇場」を確認しても、1991年の『トラップ一家物語』、1992年の『大草原の小さな天使 ブッシュベイビー』ともに全40話であり、『21エモン』が一ヵ月遅く開始していることを加味して比較すれば、全39話は決して少ない話数ではない。原作が単行本4巻、50話の短さであることを考えれば、約一年間での放送終了は予定通りだったのではないだろうか。
 打ち切りの話題に関連して、番組の人気を計ることができる視聴率は、こちらのファンサイトの情報として掲載されていた。平均は約8.6%。前番組『チンプイ』と比較できれば良いのだが、こちらは情報が見つからなかった。代替の比較として、同じく先ほどの「世界名作劇場」の二作品が14.8%、15.0%の数字を取っているのに比べると、『21エモン』の視聴率はそれほど芳しい成績とは言えないだろう。
 ここまでの情報から考え合わせると、作品は打ち切りではないものの、継続延長するほどではないと判断され、当初の予定通りに年度末で終了したというのが当時の実情だったのではないだろうか。ちなみに本作終了後のスタッフのほとんどは、別枠の『クレヨンしんちゃん』に移行しており、その後の作品の人気は広く知られている通り。

作品の魅力

 作品の魅力の多くは、既に「TVアニメ『21エモン』キャラ紹介」や「TVアニメ『21エモン』原作との比較」をはじめとした、冒頭のリンク先で紹介している既存の記事を通して結果的に語ってしまったが、最終回の記事として改めてざっくり確認しておきたい。

①宇宙冒険を夢見るエモンのポジティブな情熱
②硬派なSFエピソードの存在
③モンガー・ゴンスケの漫才的なやりとりを始めとしたコミカルさ
④BGMを含めたテンポの良い展開
⑤掘り下げられたキャラクターの魅力
⑥完璧なヒロイン・ルナを通した淡い恋愛模様
⑦実質最終回の38話の終結などに表れる叙情性

 ②については、主に原作のエピソードを起源としているが、その他の6点はいずれも原作にはないTVアニメ独自の魅力といって良いだろう。もちろんアニメ版ではなく、あくまで原作の『21エモン』を愛好している方もおられるはずだ。ただ、今回原作を確認したうえでアニメ全話を見直した私個人にとっては、やはり『21エモン』はTVアニメあってこその作品であり、私が感銘を受けた要素の多くは、アニメ作品に吹き込まれた原作とは異なるアニメ独自の成分であることが確認できた。

 そして、上記やこれまでの記事では挙げなかった作品のもうひとつの魅力と思えるのは、1991年という放映時期にも拠る。当時、まだバブル崩壊直後の日本は今よりずっと楽天的であり、多くの人が未来をポジティブに捉えていたはずだ。その時代の雰囲気は作品にも反映されているのではないだろうか。アニメ『21エモン』の世界は明るい希望に満ち溢れており、宇宙の人々が仲良く暮らす世界はユートピアといっていい。私が本作を愛好する理由のひとつは、まだ明るかった時代への懐古にもあるのかもしれない。

最後に

 過去の子供向けTVアニメについて、8回に渡ってなぜここまで長い文章を書く気になったのか。主なモチベーションはいい年になっても子供の頃に見た特定のTVアニメ作品を愛好する自分自身に対する不可思議さにある。5年前にDVDセットを購入・再視聴し、今回は新装版が出版されていることを知って原作本を読んだことをきっかけに再び全話を視聴しただけでなく、新たに未視聴だった劇場版にもあたった。そのうえで私の本作に対する思い入れが、実質最終回の第38話を視聴したTV放映直後に大きな喪失感を抱いた頃から変わっていないことを確認できた。

 私の本作への思い入れは「偏愛」に属するものだろう。放映当時も本作を評価していた当時の同級生は記憶にない。先に触れたとおり作品の視聴率はけっして高くはなく、打ち切りではないものの一年未満の放送で終わっている。そして放送終了後も、カルト的な作品によくある、後日の人気爆発といった現象は起きていない。つまり、本作は決してそこまで多くの人を惹きつけた作品ではないのである。しかし、そのような作品に対して自分自身が長く愛着を持っているからこそ、本作について書き綴ることを通して、何かが見つかるのではないかと考えたのだ。それが今回の一連の記事を書いた主な動機である。

 そしてもうひとつの動機は、過去に本作を視聴した方のなかには、作品に対する私の思いを理解する方も、どこかにいるかもしれないと考えたからだ。一連の文章が、いずれそのような方の目に留まれば、とても嬉しい。

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