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TVアニメ『21エモン』全話ガイド④

 前回につづくTVアニメ『21エモン』全話ガイドは、今回が最終回です。第31話から第39話まで。全篇ネタバレです。

第31話 目玉と口が散歩する? エモン・ゼロ次元の恐怖!

原作:4巻10話「銀河系No.2の星」
 エモンたちが到着したオートマ星は地球よりも遥かにテクノロジーが発達した惑星で、生活の全てが自動化している。星の住人たちも自分の身体を使うのをやめて、目と口だけで飛び回っており、表を出歩くのはロボットと旅行者のエモン一行だけである。エモンたちは意地悪な住人達に野蛮だと馬鹿にされながら、唯一親切なオジイさんに案内されてホテルに落ち着く。技術の進歩による長寿化のため星の住人はみな高齢で、オジイさんは既に2000歳であること、そして星の全てを管理するコンピューターシステムによって200歳以上の人間の「ゼロ次元」行きが決まったことを聞く。ゼロ次元の意味がわからないエモンたちだったが、外で偶然再会したおじいさんが、ベルトコンベヤーでゼロ次元に運ばれるのに途中まで付き添い、ゼロ次元が「死」であることを理解して急いで引き返す。200歳以上の人間がゼロ次元に送られる情報を知らずにいた、エモン達を馬鹿にしていた住人たちは慌てて自分の身体に戻るが、久々のことで自分の身体を上手く動かすことができない。イモと勘違いして巨大コンセントを抜いたゴンスケの偶然の活躍や、モンガーのテレポートなどで、ゼロ次元行きを回避した住人たちは、力を合わせて人間を管理していたシステムの電源を停止することに成功する。エモン一行は住人達がシステムの管理から解放されたことを喜びながら、オートマ星を後にする。
 比較的若い住人たちはゼロ次元行きを免れたが、エモンたちに親切に接してくれたオジイさんは人生に飽いた様子のまま、ゼロ次元に飲み込まれた。本作中でおそらく唯一、人間の死がはっきりと描かれるシーンで、オジイさんが消えゆく瞬間の虚無もしっかりと演出されている。
 「『21エモン』には意外と硬派なSF回がある」という流れで紹介されることの多い代表的な二篇のうちのひとつ。もう一篇は後述の第33話。

第32話 モンガー大解剖! 不思議工場の発明実験室

原作:―
 第29話で知り合ったポロロッコリーが住む星を訪れるエモンたち。不思議グッズの生産で有名なマジカル星は、元々は小さな町工房と住民のためを思って特許使用料を取らないギャロット博士の発明で成り立っていた星だった。しかし最近は工場で質の悪いグッズを量産するゼロリー博士が特許認可委員会も押さえて星を牛耳っている。営業を辞めてギャロット博士の助手を務めるポロロッコリーに再会したエモンたちは、成り行きとゼロリーによる横暴への反発からギャロット博士の研究に協力する。モンガーのテレポート能力を機械化することに成功したギャロット博士は、モンガーそっくりの大型テレポート装置でゼロリーを撃退。同時にテレポート装置の特許取得によって星の主導権をゼロリーから奪還することに成功したのだった。
 敵役のゼロリー博士はとっつぁん坊なキャラで、常にお菓子を食べるなど、言動に子供っぽい点が多い。ギャロット博士に発明用パーツを納品する可愛い少女が今回のヒロイン役で、彼女と話す度に赤面するポロロッコリーが微笑ましく描かれている。29話で吞み込んでしまった無限トランクを取り出してほしいモンガーの要望は、便利だからとエモンたちに却下される。

第33話 7627番目の客 幸福の星はパッピーだらけ

原作:4巻12話「しあわせの星」
 パッピー星に到着したエモンたちは「7627番目の記念ゲスト」として盛大に祝福される。市長の歓迎式典を抜け出したエモンとモンガーは、常に笑顔で一様に同じ人形を背負う住人たちを不思議に思う。出歩いているところを警察官に連れていかれたエモンらは、パッピー人形に憑りつかれる。ここで二人はようやく、パッピー星の住人達が背負っている人形に寄生され、支配されていることに気が付く。パッピーに馬としてこき使われる二人だったが、二人のパッピー人形を気絶させたレジスタンスのメンバーによってアジトに案内される。アジトでは、パッピーは元々他の惑星の生物で、住民が持ち帰ったことによってパッピーたちに支配されてしまった経緯を知らされる。レジスタンスのメンバーはパッピーの支配を逃れるために手術で頭を切り離して脳を電子化し、偽の人形を背負うことで生き延びていた。頭を切り落とす手術をしようと誘われ、慌ててテレポートで逃げだすエモンたち。シップを見つけて惑星を飛び出し、パトロールに連絡しようと急ぐが、途中で気絶していたパッピーたちの目が覚める。パッピーたちがエモンとモンガーを苦しめるも、ロボットであるためにパッピーが寄生できないゴンスケの活躍で二人から離れたところパッピーたちを船外にテレポートして危機を脱する。宇宙管理局に事態を連絡して、パッピーに支配されていた星の住人を救うことに成功するのだった。
 第31話の「ゼロ次元」と同様、硬派なSF回として紹介されるエピソード。原作のレジスタンスメンバーに機械式の頭部はなく、首無しで描かれる。今回の原作の後半部分は、後述の第38話に分離して流用されている。

第34話 太陽が復活する モアモア伝説モンガーの予言

原作:―
 一面が雪と氷に覆われた惑星に着陸したエモンたち。ゴンスケに蹴り飛ばされて行方不明になったモンガーに再会したところ、星の住人たちに神として崇められていた。ピヨピヨと呼ばれるマンモスのような生物との対決を経た後、エモンたちは住人が恐れる「氷の神の洞窟」の調査に向かう。洞窟内にみつけた「氷の神」は冷気を吹き出す球体の機械だった。球体の正体は気候調節装置で、事故でスイッチが暖房から冷房に切り替わってしまったことが原因で、惑星が寒気に包まれていたことが判明する。エモン達の手によって暖房に切り替わった装置は人工太陽として星を照らし、惑星を覆っていた氷雪は一気に溶けて温暖な気候へと生まれ変わる。毛むくじゃらの住人達が何重にも重ね着していた毛皮を脱ぎ棄てると、実は彼らもエモンと同じ人型の住民だった。感謝する住民たちにエモン一行がもてなされるシーンで終わり。
 モンガーが崇められる原因になった、モンガーの似姿とともに石板に刻まれていた文字は宇宙共通の言葉である「キョウチュウ(共宙)語」。ゴンスケは三度目の凍結。凍結が持ちネタのひとつになっている。

第35話 決闘ナイナイ星! エモン親の仇と狙われる!!

原作:『モジャ公』より「ナイナイ星のかたきうち」
 エモンのシップを尾行していたムエという男が、父の仇討ちのために24時間後にエモンと決闘して殺すことを宣告する。身に覚えのないエモンは話を聞かないムエから逃れるため、パトロールの制止を振り切って立ち入り禁止のナイナイ星に侵入する。無人のナイナイ星だったが、尾行をやめないムエは再びエモンたちの前に現れ、テレキネシスとテレポートの圧倒的な能力を見せつけてエモンを絶望させる。ムエは証拠として父親が殺害されたときの映像をエモンに見せる。ムエの父親を殺した人物は900年前のミナモトノヨリマサだったことを知ったエモンは改めて別人だと訴えるが、聞く耳を持たないムエは、それまで身につけていた白装束を取り払って本来の「ヌエ」の姿(猿の胴体、虎の手足、蛇のしっぽ)を晒した後に立ち去る。なんとかムエから逃れようと、エモンたちの前に現れたパトロールロボットに、無断侵入した自分を逮捕するよう持ち掛ける。しかしパトロールロボットは、ナイナイ星が伝染病のために閉鎖されたこと、保菌者となったエモンは星から出られないことを伝えたうえ、数時間後に惑星が爆破されることを予告する。仇討ち、伝染病、惑星爆破と八方ふさがりの絶望的な状況で、シリアスな効果音とともに「つづく」のテロップ表示。
 TVアニメ版で唯一、『モジャ公』のエピソードを原作としている。『モジャ公』は、原作のF氏自身が『21エモン』の二番煎じと呼んだSF作品でもあり、ストーリーとしても違和感なく取り込まれている。この他、劇場版の『21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス』が『モジャ公』の「アステロイド・ラリー」をメインプロットに組み込んでいる。
 エモンが死の恐怖に怯えるシリアスな展開のなか、モンガーがゴンスケの言動を疑って漏らした「ホントかな~…」の一言が可笑しい。

第36話 惑星爆破! エモン絶体絶命!! クエ星人の敵討ち

原作:前回と同じ
 仇討ちの時間になりエモンの前に姿を現したムエは、エモンに襲い掛かる。絶体絶命のエモンの前に、ムエの婚約者であるミエが現れて仇討ちを認める法律が廃止されたことを知らせる。戸惑いながらも再びエモンに襲い掛かるムエだが、伝染病の発症により倒れる。その後、婚約者ムエに続いてエモンも発症して倒れるものの、モンガーの無限トランクが吐き出した診察ロボの診断で病気が地球のインフルエンザだとわかる。薬で回復しながら、倒れたムエに仇討ちが誤解であることをようやく納得させるエモン。他の種族の顔は見分けがつきにくいことから、ムエは同じ地球人というだけでエモンをヨリマサと誤解していたのだった。惑星爆破のために発射された大量のミサイルを前に大ピンチを迎えるが、モンガー、ムエ、ミエの三人のテレポート能力を結集してミサイルの信管をカットすることで爆破を阻止する。宇宙管理局にナイナイ星の伝染病が地球の薬で簡単に治ることを伝える。誤解による仇討ちを謝罪するムエに別れを告げ、惑星に帰還するナイナイ星人と入れ替わりにエモンたちは再び旅立つ。
 原作では、インフルエンザはおたふく風邪、婚約者ミエは存在しない。ミサイルは一発限りで、信管カットではなく方向転換で爆破を阻む。

第37話  エモンの遭難! シード星50億人の地球侵略!!

原作:4巻12話「しあわせの星」
 実質的な最終回の前編にあたる37話は、そろそろ地球に帰ろうかと里心のついたエモンのひとり言で始まる。通信で救援を求める声を聞いたエモンたちは、怪物に襲われる少年マルスを助けるが、実は旅の一座の稽古芝居だったことがわかる。巨大宇宙船でのザムフシード一座の歓迎に気を良くするエモンたちは、一座が星間連合にも認められておらず、安心して居住できる惑星を探していることを知る。タネイモを探して船内を漁っていたゴンスケは船員に咎められつつも、お土産のタネイモを貰って満足する。ザムフシード一座を後にするエモンたちの船内で、ゴンスケが約束を守らずに栽培を始めたイモは急速に巨大化、エモンのシップは宇宙空間で半壊する。タネイモは一座の指導者の罠で、安住の地を求めるザムフシード一座は、エモンたちから伝え聞いた地球を移住先に定めていた。マルスらを乗せた巨大宇宙船が不気味に地球へと接近するところで幕。次回に続くが、「つづく」テロップ表示なし。
 つづれ屋、ルナ、リゲルが29話以来の登場。シード一座と別れたエモンから、ファックスのような機械で帰還予告メッセージを受け取って喜ぶ。自家用スペースシップを見せびらかすために訪れたリゲルに、ルナがエモンから届いたファックスを見せる場所は、強風のホテル・ギャラクシー屋上。
 原作のエピソードが使われるのは、タネイモを手に入れたゴンスケが船内で栽培してしまい、シップが半壊してしまうくだり。原作では、ゴンスケはパッピー星でタネイモを入手しており、TVアニメ版では第33話と第37話が原作を分け合うかたちになっている。

第38話  異星人の宇宙センター 移動惑星が地球を救う!!

原作:―
 次の第39話はほぼ総集編で、この第38話が実質の最終回。
 ザムフシード一座の指導者がゴンスケ、少年マルスがエモン、女性クルーがモンガーにそれぞれ擬態して地球に入星する。他のクルーは植物の種に変化し、彼らの本来の姿は植物型宇宙人であることがわかる。壊れたシップを捨ててきたと嘘をついて宇宙港から帰還した、マルス扮するエモンたちを迎える、つづれ屋の面々とルナ、リゲル。エモンたちの帰宅を素直に喜ぶ一同のなか、ルナだけが、もう旅には出たくないなどと話すエモンの異変に気付く。場面が変わって無人の緑豊かな移動遊星に不時着したエモンたち。船の全壊で絶望的な状況のなか、ゴンスケが自主的にバッテリーの提供を申し出て機能を停止する。ゴンスケに感謝しつつ遊星外にSOSを飛ばすエモンは、偶然近くを航行していた宇宙探検家スカンレーとの接触に成功し、猛スピードで宇宙をさまよう遊星を脱出する。エモンたちの話を聞き、即座にザムフシード一座による地球侵略の企みに気付いたスカンレーは、エモンたちを連れて地球に急行。既に擬態したマルス達が入星しているため、入星を拒まれるエモンたちの囮になったスカンレーは、パトロール隊とチェイスを繰り広げる。地球ではエモンが別人だと気づいたルナが、リゲルとともにマルス達に詰め寄る。ルナたちを黙らせようとするシード星の指導者と、エモンに好意をもつマルスが揉み合うなか、テレポートしたエモンら三人が上空から落下して結果的にルナたちの危機を救う。ザムフシード一座の移住にぴったりの移動遊星を見つけたとマルスたちに伝えるエモン。感謝して地球を去るザムフシード一座の巨大宇宙船は、エモンが残したエンドレスループの曲(初代エンディングテーマ)が流れる遊星に向けて出発する。エモンと短い会話を交わし、今度こそ本物のエモンが帰ってきたことを確信して感激するルナ。エモンたちは両親のもとへと帰宅の報告に向かう。

 ストーリー終了後、移動遊星で流れる初代エンディングテーマをバックに、天気予報風のテロップを流しながら各地の様子を映す。

「明日の各地の天気」
「東京 はれ」
「日本 はれ」
「地球 はれ」
「移動遊星 はれ」(※)
「銀河系 はれ」

(※全壊したエモンのシップ、マルスたちに遊星の場所を知らせるために曲をエンドレス再生しているオーディオが映され、ダモスシード一座の宇宙船が移動遊星に接近する。)

 この後、広大な銀河系の映像を背景に、「あなたが地球を離れたとき、暗黒の宇宙空間で道を見失うことがあるかもしれません…」に始まる女声のナレーションが流れる。ナレーション終了後、つづれ屋の一同がホテルのカウンターで再会する静止画を映し、エモンの「ただいま!」の声で閉幕。

第39話 大冒険秘録!! 誘われてセンチュリーボーイ?

原作:―
 時は2071年、放送第1話の20年後。父21エモンと同じく宇宙旅行に出発するためつづれ屋を抜け出そうとする、エモンの息子22エモンをゴンスケが制止するシーンに始まる。22エモンにせがまれたゴンスケは、エモンとの思い出を語り始め、これにモンガー、おじい(20エモン)、おばあ、オナベ、そして宿泊に訪れたスカンレーが順に加わり、一同が過去の放送を振り返る形での総集編となる。使用される放映回は第1,3,4,20,21,15,6,7,16,27話(回想順)。やはり22エモンにつづれ屋を継がせたい20エモンが愚痴を漏らすなか、21エモンからの連絡を受けた一同はスカンレーの船でエモンが待つ宇宙へと向かう。そこで彼らが見たのは「ようこそ つづれ屋 大宇宙支店」と電光掲示板を掲げた大宇宙船。宇宙冒険による大発見で富を得たエモンとルナ夫妻は、つづれ屋の支店として巨大な移動ホテルをオープンしたのだった。感激する20エモンだが、マゴエモン(22エモン)が見当たらない。気が付くとスペーススーツを着た22エモンがモンガー、ゴンスケとともに宇宙空間に飛び出して両親のもとに向かっている。宇宙ホテルの窓際で息子の22エモンに手を振る、成長したエモンとルナの姿を映して終了。
 回想時にそれぞれの年月日がテロップ表示されるが、月日は基本的にそれぞれの放映日に合わせている。西暦は2051年か2052年のいずれか。
 20年の経過で、モンガーと、ロボットのゴンスケとオナベを除く登場人物の外見は変化している。20エモンとママ、スカンレーは白髪が増えてシワが描き込まれている。31歳になったエモンとルナは身長が高くなり成人している。エモンは既にトレードマークのキャップを被っておらず、ルナは長髪にカチューシャと髪型を変えている。OP、EDに登場するレギュラーのなかでは唯一リゲルだけ出番がない(劇場版にも登場しない)。

あとがき

 以上で4回に渡ってお送りした「TVアニメ『21エモン』全話ガイド」は終了です。今回は毎週の放送を楽しみにしていたTVアニメ視聴時の感情が甦る作文になりました。とくに実質的な最終回の第38話は、印象的なナレーションで締め括られる放送を観た直後、深いロスに陥ったことを思い出しました。当時は「○○ロス」のような言葉もありませんでした。

 今後、このほかにも劇場版『21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス』のあらすじ、各キャラクター解説、原作とアニメ版の違いなどの投稿も予定しています。もしご興味があれば併せてお付き合いください。

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