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劇場版『21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス』ガイド

 4回の記事にわたって投稿した「TVアニメ『21エモン』全話ガイド」の全39話に続き、1992年3月7日に公開された『21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス』(上映時間:約40分)を紹介する記事です。本劇場版の存在は以前から知りながらも長らく未視聴だったのですが、今回のTV版全話再視聴とnoteへの記事投稿の勢いもあり、どうせなら劇場版のガイドまで作成しておきたいという動機から、DVDの購入と視聴に至りました。以降、全話ガイドと同様に全篇ネタバレの内容となっています。
 本記事はTVアニメ版のガイドより、かなり詳細になっています。目次をご覧頂いて、気になる項目だけにでも目を通して頂ければと思います。

舞台となる時期

 冒頭で「西暦2053年春」のテロップが表示され、TVアニメの第38話が終了して約一年後のお話であることがわかります(最終回の第39話は、これより約20年後の2071年)。アニメ版の各エピソードの日付が各放映日と連動していることを考慮すれば、映画公開日に合わせた本作の正確な日付は2053年3月7日。現在の日本の学制に当てはめると、エモンは中学1年生が終わる直前の13歳ということになります。

三つの主要素

本作を構成する要素は大きく三つです。以下にそれぞれ解説します。

①映画『ローマの休日』
 地球を訪れたノーブル星の王女が公務の毎日に退屈したことから王室を抜け出して街に飛び出し、偶然出会ったエモンらと冒険するといった『ローマの休日』のプロットをなぞる内容です。ただし、『ローマの休日』で王女が自らの役割を自覚して人間的に成長する側面は取り入れられておらず、美しいお姫様の息抜きにエモンたちが付き合うにとどまっています。

②『モジャ公』の「アステロイド・ラリー」
 ファナ姫を含むエモンたちが金欠状態で豪華ホテルに宿泊したことをきっかけに、ロケットレースへの参戦して勝利するまでは、同原作者による漫画『モジャ公』の「アステロイド・ラリー」のストーリーを踏襲しています。『モジャ公』は作者自身が「21エモンの二番煎じ」としているように、F氏が連載を楽しみながらも打ち切られた漫画『21エモン』の続きを描きたい欲求のもとに発表された連載漫画です。そのため主人公である空夫、モジャラ、ドンモたちは、『21エモン』の三人組と同じ少年、丸い宇宙生物、ロボットの組み合わせで構成されています。『モジャ公』の原作はTVアニメ版の第35、36話にも使用されていますが、作品の経緯もあって本作ともども違和感を感じさせません。
 ヒロインにあたる女性がライバルのひとりとしてレースに参加していることなどの一部を除いて、原作エピソードの多くが本作に活用されています。

③TVアニメ版同様の3バカトリオの活躍
 上記ふたつのストーリーを中心に、TV版と同様にエモン、モンガー、ゴンスケの三人の活躍を描いたのが本作です。一方で、3人を除くメインキャラクターたちの出番はわずかです。TV版との違いとしては、TV版の各エピソードの舞台は、地球のホテルつづれ屋か、宇宙冒険かのどちらかに分類できるのに対し、本作はその両方をひとつのストーリーに組み込んだ形となっています。大きくは「宇宙⇒地球⇒宇宙⇒地球⇒宇宙」と交互する流れで、全体としては宇宙パートがメインになっています。

ストーリー

 以降、所々でおおよその経過時間を挟みながらストーリーを紹介します。

 背景が光輝く、懐かしい「東宝」ロゴ表示とともに開幕。
 地球にほど近い宇宙空間でエモン、モンガー、ゴンスケがエモンのスペースシップを修理するシーンに始まる。作業終了後、発進したシップの不調で一旦停止するが、昔のテレビさながらゴンスケのパンチで再始動する。勢いよく再スタートするが、不注意から巨大なノーブル星の王室宇宙船に接触して制御不能となる。地球のホテルつづれ屋で流れ星を眺める20エモン夫妻のもと、エモンらはシップを破損しながらも自宅に帰着する。

03:45 (ここでタイトル表示。テーマソングなし)
 着陸した王室宇宙船の隣にトウキョウ迎賓館が映る。迎賓館で歓迎の催し(染之介染太郎に酷似したコンビの芸)を受け、太陽系各地のトップとの謁見をこなすノーブル星の王と王女。その後も続く公務に退屈し、倦み疲れた王女ファナ姫は、ペットであるバウバウの力を借りて迎賓館からエスケープする。入れ替わりでダースベイダー風の親衛隊長が重厚なBGMとともに登場し、バウバウを威圧する。

07:23
 場面が変わって、TV版ヒロインのルナがつづれ屋のエモンを訪れる。シップ修理中のエモンをノーブル星歓迎パレードへのデートに誘い、エモンは喜んで応えようとするが、早く修理しろと急かすモンガー、ゴンスケに阻まれる。ルナは諦めて一人でパレードに行くと立ち去る(ルナの登場はこのシーンのみ)。エモンは二人に絡まれながら残念そうにルナを見送る。

08:20
  街に出て服屋で試着するファナ姫は、店員にお金がないことを伝えてひんしゅくを買う。一方、姫が家出したことに気付いた王と大臣は、親衛隊とバウバウにファナ捜索を命じる。そんななか、風船をもらい、ハチ公前を訪れ、試飲した無料ワインに酔うなど、ファナ姫はトウキョウの街での自由な一人歩きを楽しみながらも一抹の寂しさを感じている。

11:03
 再びつづれ屋。夕方になって修理を諦めたエモンらは、ホテル正門前で酔って居眠りしているファナ姫と出会う。目が覚めたファナがつづれ屋に泊りたいと話すと、ホテルの面々は可愛いお客さんだと歓迎する。その後、エモンとモンガーがファナの着替えに鉢合わせするアクシデントを挟み、エモンの自室でくつろぐ一同。窓の外を眺めるファナが、親衛隊の捜索に気付き、「いますぐ宇宙旅行に行きたい」とせがむ。シップが破損しているエモンは困惑するが、ファナが所有するシップの提供の申し出を受け、モンガーのテレポートでファナのシップ格納庫に移動する。入れ違いでネズミ風の親衛隊員たちがエモンの部屋に殺到。親衛隊長は大臣に捜索失敗を報告する。

15:29
 ファナのシップで宇宙に出発するエモン一行。エモンたちはファナがノーブル国の王女と知って尻込みするが、開き直って旅の続行を決断し、ファナを喜ばせる。バラ星雲のバイオパークに到着した一同は、それぞれ空中を飛ぶ機能をもつ虫の衣装に着替えた後、植物のテーマパークを存分に楽しむ(エモン:トンボ、モンガー:てんとう虫、ファナ:モンキチョウ、ゴンスケ:カメムシ)。金欠状態で豪華ホテルに宿泊したエモンらは、無賃宿泊で逃げ出す他の客を100年の強制労働送りにするホテルの対応を見て震え上がる(この辺りからが『モジャ公』のエピソード)。王女のファナに宿賃を借りようとするも、ファナがお金を所持したことすらないことを知って愕然とする。そんなおりに、ホテルのパーティーで翌日開催されるロケットレース参加者であるヒロン、ガルガと知り合ったエモンたちは、売り言葉に買い言葉でレースに参加することになる。ここにゴンスケの一計が加わり、レースに参加するフリをしてホテルの宿泊費を踏み倒す算段を立てる。

22:41
 翌朝、レースのスタート地点に集合するファルコン号のヒロン、デスデビル号のガルガ、そして芋掘り号に搭乗するエモンら4人。スタート直後に逃げだせば怪しまれると、当面は他の参加者と同様にレースに加わる。スノーパーク、恐竜パーク、ギャンブルパーク(スターウォーズ第一作のデススターでのドッグファイトへのオマージュらしいシーンを含む)を通過するなか、ライバル船を破壊するガルガのラフプレーや、どん尻を走る謎のシークレット号の存在が描かれる。

27:56
 レース参加者たちが最大の難所とされるアステロイドゾーンに到着する。このタイミングでレースを抜け出そうと航路を変更する芋掘り号だったが、これを作戦と勘違いした参加者たちに追従され、離脱困難になる。小惑星が浮遊するアステロイド内に突入後、ガルガに追突されて停止する芋掘り号。ゴンスケひとりはレースを離脱できると喜ぶが、ガルガのラフプレーへの反発からレース続行を決意した一同に押され、ゴンスケも意見を翻す。

30:59
 トンネルを通過する地獄の風穴ゾーンを目前に、ヒロンとの一騎打ちを控えたガルガは、ピットストップで燃費の悪いデスデビル号への燃料補給と同時に他船妨害用の装備に換装する。同時期に難破船のパーツで芋掘り号を暫定修理したエモンたちがレースに復帰。修理が功を奏して芋掘り号が猛スピードで一気に他船をまくって一躍トップに浮上。一方、二番手を走るヒロンは、中継カメラが入らないトンネル内でのガルガの反則によりリタイアしてしまう。ガルガはさらに芋掘り号にも追いつき、エモンたちに直接攻撃をしかけるが、好機を捉えたファナの操作で切り離された難破船部品で構成されるブースターがデスデビル号を直撃。これにより、トンネル内でガルガのデスデビル号が爆発する。

35:34
 画面はゴール地点の惑星に切り替わる。半壊した芋掘り号は制御不能になりながらも一位でゴールを通過。エモンらは通過と同時にパラシュートで芋掘り号を脱出する。ここでレース中は常に最下位を走っていたシークレット号が突如現れ、ファナを捕獲する。シークレット号に乗船していたのはファナの捜索にあたっていた、ノーブル星の大臣、親衛隊長、バウバウたちだった。嫌がるファナを乗せたシークレット号は、ゴール地点の惑星を離れる。

36:13
 地球に帰ったエモンら一行。高額なレースの賞金はホテル宿泊代、帰りの運賃、エモンのシップの修理代に消えている。テレビを通し、王女としてインタビューに答えるファナを見るエモンたち。ニュース番組は、「心の温かい人たちがたくさん住む星だとわかった」と語る満足そうなファナの様子を伝える。これを見たエモンらは修復したシップで即座に出発。
 宇宙へと旅立ち地球を離れつつあるノーブル星王室宇宙船内では、ファナを発見した親衛隊長たちが国王からお褒めの言葉を授かっている。ここで、ダースベイダー風の親衛隊長の外見が実はハリボテであり、中身は他の隊員たちと同じく可愛いネズミ風の生物だったことがわかる。
 自室でエモンたちとの楽しい思い出に浸る寂しげなファナは、別れを告げにスペースシップで現れたエモンたちの姿に喜ぶ。ファナが窓越しに唇の動きで「ま、た、あ、い、ま、しょう」と再会を約束したところで、満足したエモンたちはファナのもとを去る。最後はTVアニメ版次回予告でお馴染みの「さあ、宇宙冒険へ?テイクオーフ!!」のセリフで締め、「おわり」の表示とともに幕引き。

37:57~39:57
 「原作:藤子・F・不二雄」に始まるエンドロールが流れる。BGMはTV版のテーマソングではなく、歌詞のない穏やかなインストゥルメンタル。右側にスタッフロール、左側はバラ星雲のバイオパークを楽しむエモンたちのカットが順に切り替わる。

レギュラーキャラについて

 ここでは主にTV版からのキャラクターについて、本作での描かれ方を紹介します。

エモン(つづれ屋21エモン)
 TVアニメ第38話から約一年後、エモンの中学一年生の終わりごろにあたる本作では、体格や顔つきもやや成長しているように見える。装着品としては、幼馴染のハルカにもらったキャップ、第9話で入手したスペーススーツは既に着用しておらず、普段着、作業着、スペーススーツは劇場版向けに一新されている。一方、TV版で大破して実質的な最終回で移動遊星に置き去りにしたはずのスペースシップが、本作冒頭とラストで登場している。
 本作のエモンは、劇場版ヒロインのファナ姫に随所でデレデレと見惚れている様子が描かれる。また、一度だけ登場した本来のヒロイン・ルナからのデートの誘いにも喜んで応えようとしていた(モンガーらに妨害された)。TV版の第14話でルナからの富士山へのデートの誘いに戸惑っていたエモンの反応とは違う。過去のエモンなら何よりもスペースシップの修理を最優先しただろう。ファナへの反応も併せて、成長とともに異性への好奇心が強くなっていることの表れに見えなくもない。

モンガー
 TV版と同様にテレポート能力で活躍。ファナ姫に対しては、エモンと同様に彼女に見惚れている。ファナの存在もあってか、ゴンスケとの漫才シーンは鳴りを潜めている。そしてやはり、TV版第29話で呑み込んだ無限トランクが活躍するシーンは描かれていない。

ゴンスケ
 三バカトリオのなかで、もっともファナ姫に執心なのがロボットのゴンスケ。TV版ではたびたび女性型ロボットに言い寄る(そしてフラれる)シーンが描かれるゴンスケだが、ルナやママをはじめ、人間の女性に感心を示すことはこれまで一度もなかった。ゴンスケが今回の冒険にスムーズに強力する流れは、ファナ姫あっての展開である。エンドロールのカットでは、バイオパークで望み通り芋掘りをしている様子も描かれている。

エモンのパパ(20エモン)とママ
 登場は序盤のみ。冒頭で流れ星を眺めながらエモンの話をするシーン、宿泊客としてファナ姫を迎えるシーン、ルナを応対するシーン(声のみ)、ノーブル星親衛隊がホテルに殺到して驚くシーンの4箇所に限られる。お金を持たない客(ファナ姫)を、そうと知らずに迎え入れてしまう点は相変わらず。本作ではパパがエモンに小言を述べるお馴染みのシーンはない。

オナベ
 メイドロボットのオナベの登場シーンはつづれ屋での2箇所で、セリフも「つづれ屋へようこそ」「何なのあんたたち」のたった二言のみ。パパかママが替わって話しても全く支障のないセリフでしかない。常識人であることから、TVや原作同様に地味な扱いである。

ルナ
 登場シーンは一度きり。序盤で故障したスペースシップを修理作業中のエモンたちの元に訪れ、エモンをノーブル星歓迎パレードへのデートに誘うが、モンガーとゴンスケに粘着されるエモンを見て諦めて立ち去る。
 せいぜい1分程度の短い登場に終ったのは、本劇場版のヒロインがルナではなくファナ姫であるためだろう。それでもわざわざストーリーに影響しない出場機会が与えられたのは、TV版での重要キャラの地位あってこそ。

リゲル
 本作に登場しない。前述のとおり、必然性はなくとも一度は姿を見せるヒロイン・ルナとの格差である。リゲルはこのほか、TV版第39話の最終回、主要キャラの20年後を描くシーンにも登場していない(ちなみに総登場話数が6話のスカンレーは、最終回でつづれ屋の面々を宇宙のエモン・ルナ夫婦の元に運ぶ役割を担う)。毎回オープニングで主人公エモンと派手なレースシーンを見せる、レギュラー的扱いのキャラに似合わぬ不遇ぶりである。

劇場版キャラクター
 この他に劇場版オリジナルキャラクターとして、ファナ王女、ノーブル国王、ペットのバウバウ、大臣、親衛隊長、大量のネズミ風のモブ親衛隊員たち。原作からの流用で銀河レースに参加するレーサーとして、クールな宇宙人ヒロンと、本作のラスボスでもある乱暴な恐竜風宇宙人のガルガ。このあたりが主な登場キャラクターとなっている。

作品背景と収録メディア

劇場公開
 本作劇場版の公開日は1992年3月7日。一方、TVアニメは1991年5月2日~1992年3月26日。映画公開日は、アニメ版の実質的な最終回の前編である「第37話 エモンの遭難! シード星50億人の地球侵略!!」の3月12日の直前ということになります。スタッフはもちろん最終回の内容を知りながら、TVアニメと並行して劇場版の制作を進めていたのでしょう。大破したはずのエモンのシップを何食わぬ顔で登場させるあたりも、最終回でのアクシデントを予期させないための、スタッフの配慮かもしれません。
 同時上映が『ドラえもん のび太と雲の王国』であることと、TV放送が一年限りだった本作の人気を考えると、上映順序によっては『21エモン』を鑑賞せずに映画館をあとにする観客もいたのではないかと想像してしまいます。

収録メディア
 今回私が視聴したのは、amazonで購入した「映画 おばあちゃんの思い出/21エモン 宇宙いけ! 裸足のプリンセス/ザ・ドラえもんズ ドキドキ機関車大爆走! [DVD]」の、三本セットのDVDです。amazonに投稿されたレビューを確認すると想像通り、感動作として名高い「おばあちゃんの思い出」を目当てに購入された方がほとんどです。
 三篇の上映時間は、「21エモン:40分/ドラえもんズ:17分/おばあちゃんの思い出:27分」と、最も長いのは本文で取り上げた『21エモン』ですが、パッケージ上はやはり「おばあちゃんの思い出」が最大の扱いです。特典映像としては予告編、「21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス ひみつ図鑑」、「ドラえもん・ドラえもんズのひみつ道具図鑑」の三つ。『21エモン』のひみつ図鑑の内容は、本編を21項目に切り分けただけの内容です。

感想と余録

感想
 本作について、ここまでは事実に基づいた情報を記述してきましたが、最後に個人的な感想と総評を述べておきます。

 TV版全話ガイドの最後に書いた通り、TV『21エモン』は当時の私にとって大きな楽しみだっただけに、実質的な最終回38話の視聴時にはその内容も相まってTVシリーズが終了してしまう事実にショックを受けました。そこまでアニメ『21エモン』を愛好しながら、その後劇場版を視聴しなかったのは、当時それだけの最終回を見た後に劇場版の内容にガッカリして、作品への喪失感(ロス)をさらに深めることを恐れたためです。以下は、そのような前提での感想です。

 ストーリーとしては、TVアニメ版の1エピソードとして放送しても不自然ではない内容です。前述通り、『モジャ公』原作のエピソード流用にも違和感はありません。ルナではないヒロインを登用していること、作品の常に似合わず一作のなかで地球と宇宙をともに舞台とすることなどは、一話のなかで作品の前提知識なしに楽しめるよう制作した結果でしょう。本作だけで作品世界を覗き見ることのできる内容となっています。

 TV版のファンから見た難点をいくつか。まず、TV版の随所で見られるモンガーとゴンスケの漫才的なやりとりが少ないことです。ゴンスケがファナ姫に惚れ込んでいる設定が、展開をスムーズにする役割を果たす一方で、本来の魅力のひとつを削いでしまったとも考えられます。
 もうひとつはルナとリゲルが関わらないこと。とくにエモンとルナの淡い関係は、やはりTV版の見せ場のひとつであり、こちらも劇場版向けに新たなヒロインを用意した弊害といえなくもありません。
 最後に、ファナのお忍びの冒険が最後まで息抜きに過ぎないこと。姫の成長を描く元ネタの『ローマの休日』と比較すれば明白な欠落です。アニメ作品なのだから、この程度で仕方ない割り切れなくはないのですが、TV版の後半で、原作のシビアなエピソードを上手く料理していたことを併せて考えると、やはり本作最大の登場人物のはずのファナ姫の掘り下げには物足りなさが残ります。もちろん全て、40分弱でできることは限られるという一点に集約すれば、それまでの話です。

 総評としては、先の通り一作でアニメ『21エモン』の世界を味わうことができる反面、TV版キャラクターの関係性を前提にした魅力の一部は反映されなかったと言えそうです。とはいえ、TV版同等クオリティの作品として、TV版に収録されなかった、もう一話として見るには十分でしょう。

余録
・TV版で登場する通貨が"円"であるのに対し、本作の通貨は漫画『モジャ公』と同じく"ボル"となっている。
・冒頭の国王とファナ姫が各地の代表に謁見するシーンでは、ヨーロッパ州、日本州、火星州といった形で、太陽系の各惑星が地球の地域レベルで扱われ、州ごとにまとめられていることがわかる。

あとがき

 今回のDVD購入と視聴は、冒頭にも書いたとおり「原作購読⇒DVD再視聴⇒noteへの投稿」の流れを受けてのものですが、もう一つの理由があります。現在、TV版のDVDセットは絶版で中古が高額になりながらも、amazon上で一話単位で全話を視聴できることを考えると、今後も多くの方が視聴可能な状況が続きそうです。一方、劇場版の本作品については動画ストリーム視聴形式では販売されておらず、現状新品で購入できるのは今回視聴したDVDのみのようです。今後DVDが絶版となれば、それほど人気のないアニメ『21エモン』の劇場版のみが視聴できなくなる状況も十分考えられます。今回の視聴は、これに備えて今のうちに購入しておこうという動機にもありました。

 もう一点、作品の内容とは関係なくnoteの記事として、TV版の全話ガイドを半ば記憶を頼りに書いたのに対し、動画フィクションの全てを視聴しながらストーリーを正確にトレースする作業を試したい考えもありました。結果、40分足らずの子ども向けアニメ作品であっても、なかなかの作業量でした。

 このほか、アニメ『21エモン』についてはさらに二、三の記事を投稿する予定です。もしご興味があればあわせてお付き合いください。

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