見出し画像

TVアニメ『21エモン』キャラ紹介

 全話ガイドに続いて、TVアニメ『21エモン』に登場する主要キャラクターを紹介します。ネタバレ前提で、各人物を原作と比較しながら特徴を説明し、キャラクター同士の関係にも触れます。

21エモン(つづれ屋21エモン/通称エモン)

 本作の主人公。作中の年齢は、おそらく現代の小学六年生にあたる11~12歳。宇宙への強い憧れを抱き、宇宙旅行への願望が生活の中心となっている。作中で起こる出来事の多くは、エモンの宇宙への情熱が発端となる。一方でエモンは江戸時代から東京で20代続く「ホテルつづれ屋」の跡取り息子でもあり、宿泊客が少なく閑古鳥が鳴くつづれ屋の状況や、大ホテルの子息であるルナとリゲルへの対抗心から、ときにはつづれ屋を立派なホテルにすると息巻くこともあるが、本心からやりたいことが宇宙冒険であるという一点においてはブレない。
 原作との違いでまず目につくのは、主人公エモンの外見である。原作では上唇がとがり、頬が赤丸が塗られ、トボけた表情をしたギャグ漫画らしい顔立ちだが、アニメ版では子供っぽい頬の赤丸も取れて、すっきりしており、かつ原作よりも意志の強そうな少年として描かれる。服装で大きく違うのは着用している帽子。原作はホテルスタッフが被るようなステロタイプな帽子を使用しているが、アニメ版ではバッジのついたキャップを愛用しており、トレードマークにもなっている。この帽子は幼時に幼なじみのハルカから贈られたものであり、第19~22話は引っ越したハルカに再会することを目的とした木星旅行になっている。なお、エモンが中学生となった劇場版や、31歳のエモンを描く最終回ラストシーンでは、既にこの帽子を着用していない。
 性格面では、原作のエモンは宇宙への想いもやや曖昧なもので、宇宙を旅する願望とホテルを継ぐ想いの間を行き来し、宇宙旅行に行くたびに自宅での安楽な生活を懐かしむなど、優柔不断で意志の弱い点が強調されている。他方でアニメ版のエモンは、前述の通り宇宙への憧れが強く、困難にあってもその情熱が消えることはない。設定上、原作はアニメ版よりも年長の中学生とされているが(Wikipedia情報)、言動を見る限りはアニメ版のほうが大人びている。個人的には、原作のエモンは設定年齢より幼く見える。

モンガー

 第1話の終盤に密航者として現れて以降、ホテルつづれ屋の居候となる、ヘッコロダニ星雲タンバ星系ササヤマ星出身の「絶対生物」。宇宙空間をはじめ、温度や大気など、どんな環境にも適応し、何でも食べることができる、ほぼ無敵の存在。そして何といっても最長3kmの距離を瞬間移動する能力が最大の特徴で、このテレポート能力が作中の様々な問題を解決し、そして多くのトラブルも引き起こしている。強力な生存能力と特殊能力をもつモンガーだが、丸いボール状の柔らかそうな外見は愛らしく、とぐろを巻いてエモンの上で眠り込む姿などは愛玩動物のようである。一方、モンガーと度々衝突するゴンスケやリゲルからは「宇宙ダヌキ」などとも呼ばれ、そのたびに腹を立てている。
 エモンとは出会ってすぐに大親友となり、生活を含めてほとんど全てのシーンで行動をともにする。エモンとの三人組になることの多いゴンスケとはお互いに張り合うことが多く、モンガーとゴンスケのどつき漫才さながらのやり取りは本作の大きな娯楽要素のひとつである。一貫してコミカルな二人のやりとりは、ときにはエモンたちが死の恐怖を感じるエピソードでも変わらず、ときにシリアスに振れる展開を緩和する役目も果たしている。
 エモン同様、原作の上唇の尖ったデザインは、アニメ版では滑らかに調整されている。声については、後に『ポケットモンスター』のピカチュウを担当する大谷育江の演技が素晴らしい。「モア」を語尾につけ、「ムイー」などを口癖にするモンガーを実在の生物のように感じさせる愛らしさは、大谷氏の力量あってこそであり、モンガーの可愛らしさを十全に表現している。
 能力面での原作との大きな違いは二つ。まず、原作では第一巻の最終話まで「一週間に一言しか話せない」制限があるが、アニメ版では初めから無制限に話すことができる。この設定は原作でも煩わしかったせいか、アクシデントによって解除されている。もうひとつは、原作にないアニメ版独自の後天的な能力であり、第29話でマジカル星のポロロッカのもつ、不思議グッズが詰まった無限トランクを呑み込んで以降はランダムに不思議グッズを吐き出すことができるようになる点。『ドラえもん』がもつ四次元ポケットの不思議道具と、『モジャ公』でモジャラが口からランダムに道具を取り出す設定を折衷したような能力で、モンガーやエモン一行にとって重要な強化のはずだが、この能力は後のエピソードでそれほど活躍しない。
 モンガーは主人公エモンと並んで、本作で最も重要なキャラクターであり、『21エモン』の核は、主人公エモンの宇宙冒険への情熱と、相棒モンガーのテレポート能力で構成されているといって過言ではない。
 余談だが、モンガーは「人間」のような種族名のはずだが、固有名として呼ばれることについては全く気にしていない。自身の名前である「モンガー」を口癖(鳴き声)にしている点ともども、同じく大谷育江氏が演じるピカチュウとの共通点である。

ゴンスケ

 ホテルつづれ屋で働くボーイロボットのゴンスケは、前述の二人に続いて本作で三番目に活躍の多いキャラクターである。元々は芋掘りロボットだが、廃棄されかけていたところをエモンの父、20エモンに助けられてホテルで働くようになり、開始時点でホテルつづれ屋の古参従業員として扱われている。ゴンスケの芋掘りに対する情熱は、エモンの宇宙への憧れに負けず劣らず凄まじく、イモ作りのための行動が作中で多くのアクシデントを引き起こすとともに、ときには結果的にエモンやつづれ屋の窮地を救っている。また、ロボットでありながら金銭に対する執着が強く、宿泊客からのチップ獲得競争ではエモンのライバルにもなる。小遣いを貯めてクレジットカードまで手にするなど経済観念に優れる一方、女性型ロボットには滅法弱いうえにあまり相手にされず、彼女やナンパ相手にフラれるシーンが何度か描かれている。宇宙には興味をもたないが、「イモの星を探す」という動機でたびたび強引にエモンたちの宇宙旅行に同行している。また、モンガーがつづれ屋に現れてテレポートサービスでホテル一同に感謝されて以降、モンガーに嫉妬してライバル視しており、そのモンガーと繰り広げる漫才さながらのお馴染みのコミカルなやりとりは、作品の売りのひとつ。
 原作ではゴンスケが購入した土地から偶然鉱物が発掘されて大金を手にし、その後の宇宙旅行のスポンサーとして、エモンたちへの主導権を握るが、アニメ版ではこのエピソードは削除されている。このほか、原作でゴンスケをフィーチャーした回の多くがアニメ版では採用されていない。原作はアニメ版よりもさらに守銭奴である点が強調される一方、女性型ロボットに対して惚れっぽい一面はアニメ独自の設定である(女性型ロボット以外では、唯一劇場版で登場するファナ姫には惚れこんでいる)。
 エモン、モンガーに次いでほぼ全てのエピソードに絡むゴンスケは、本能ともいえる芋掘りに固執し、異性とカネが好きで、嫉妬深く、生命への執着を隠さないという、ロボットでありながら非常に人間臭いというギャップをもつ、本作屈指のコメディ要員である。そんな俗っぽいゴンスケが唯一といっていい「男を見せる」エピソードが、実質最終回の第38話。
 リペアロボットには故障だと勘違いされ、骨董品屋からはマイナス3万円の査定、宇宙旅行では三度も凍結し、磁場で高性能化したり、謎のナレーションをつとめるなど、そのキャラクターから本作屈指のネタの宝庫である。随所に見られる独特のセリフ回しも愉快。第9話でスーツデザイナーの助手として同型ロボットのガンスケが登場しているが、こちらはゴンスケと違い至って真面目な性格だった。

ルナ

 エモンの同級生で、つづれ屋の隣にそび立つ大ホテル・ギャラクシー社長の一人娘。2040年、月のコペルニクスシティ生まれ。ヒロイン役の美少女であり、主人公エモンや、同じく同級生のリゲルから好意をもたれている。エモンたちとの木星旅行では、一同が生命の危機に陥っても唯一冷静で適切な行動をとるなど非常な落ち着きを見せる一方で、第2話でエモンに煽られて空中レースで張り合ったり、エモンたちを助けるために宇宙空間にボートで飛び出すなど行動的でもある。開始当初のエピソードでギャラクシーに隣接するつづれ屋の買収をエモンに持ちかけたり、ギャラクシーを馬鹿にしたワントナック公爵に憤るなど、父の経営するホテル・ギャラクシーには強い誇りと自信をもっている。
 エモンと同様、原作から大きく外見が変化したキャラクターで、アニメキャラクターの美少女として受け入れられやすい容姿に様変わりしている。作品内の活躍としては、原作よりアニメのほうが圧倒的に出番が増え、多くのエピソードで原作にはなかった役割を与えられている。原作では、遠足で行く火星旅行以外で地球を離れることはないが、アニメ版では木星旅行に行くというエモンに自ら同行を申し出て、これを実現している。
 また、原作ではお互いに偶然隣に住む同級生という程度であるエモンとの関係性も、アニメではお互いに異性として意識し、好意をもつ関係に替わっている。主に小学生以下をターゲットとする同原作者のアニメ化作品のなかでは、比較的恋愛要素がはっきり描かれた作品で、とくに本作は主人公エモンからルナへの好意より、ルナからエモンに対する想いがより強調されている。ルナ自身も作中で、エモンをデートに誘ったり、間接的な告白に近い言葉を伝えるなど積極的である。ルナが唯一(別人の)エモンに幻滅するのは、エモンに擬態した宇宙人の少年マルスが「もう旅になんて行きたくない」と漏らすシーンであり、ルナが宇宙に夢を抱いて困難にあっても情熱を絶やさないエモンの姿に惹かれていることがわかる。
 行動力、決断力、洞察力に富み、夢を抱き続ける限りは決して主人公エモンを見捨てず、自ら積極的にアプローチもする美少女。そんな(エモンにとって)完全無欠のヒロインがアニメ版のルナであり、ところどころでくすぐったく演出される、エモンとルナ淡い恋愛模様も見どころである。本作は最終話のラストシーン、成長して夫婦となった二人を映す場面で幕を下ろしている。アニメ版のルナは原作よりずっと重要なキャラクターという位置づけであり、エモンの両親を超えているといって良いだろう。
 なお、作中で父親がギャラクシーの社長として度々登場する一方、母親については第23話の夢オチ回のルナが父親にお土産を渡すシーンで「これはママの」という一言があるのみ。

リゲル

 エモンとルナの同級生。華美な服装のキザな美少年。ルナと同様、父親が巨大ホテルチェーン・ギャラクシーを営んでいる。ヒロインの美少女ルナに惚れ込んでおり、ルナがエモンに好意を持っていることを知ってか、エモンをはっきりとライバル視している。自身が大ホテル経営者の子息であることに引き比べ、弱小ホテルであるエモンの自宅のつづれ屋を「つぶれ屋」と毎度のように馬鹿にしており、反発するエモンと毎回のように言い争う。また、裕福な家に育っていることで、金銭面の自慢でもエモンをいつも悔しがらせている。過保護に育ったためかピンチに弱く、宇宙旅行中に危険な目に遭った際には二度ほど泣き出してしまっている。嫌味で情けない存在として扱われることが多いが、大ホテルの跡取りであることへの自覚からくる経済的な知識はエモンを圧倒し、学校のクラスメイトには美少年であるリゲルに憧れる少女も複数いる。
 エモンとルナとの三角関係については、エモンがルナへの想いをはっきり自覚していないのに対し、リゲルのルナへの想いは自他ともに認めるあからさまなものである。一方のルナは、自分に好意を見せるリゲルに対してけっして邪険にはしないものの、エモンとは違って自分からは積極的に関わらず、リゲルを友達の範囲に押し留めるよう腐心している様子が窺える。
 作品中一度だけ、リゲルの両親がそれぞれ別の回に登場している。夢オチの第23話で登場するリゲルの母親は押しが強そうな女性で、火星旅行から地球に帰ったリゲルを過保護な様子で出迎えている。リゲルの父親は、第28話のなかでルナの父親、エモンの父20エモンと同級生だったことがわかる。劇中ではエモンとリゲルの関係と同じく20エモンと子供っぽく競い合い、最終的にルナの父に諫められている。この回ではリゲルの父親のフルネームが「オリノ・マサカズ」であることも判明する。
 オープニングとエンディングテーマにも登場する主人公のライバル役を担う重要キャラのリゲルだが、原作には登場しない。ただし、原作にはリゲルとほぼ同じ位置づけのカメキチという同級生が存在し、ことあるごとにエモンの邪魔をしている。カメキチの人物造形は、アニメ版のリゲルよりも『ドラえもん』のスネ夫に近い。
 レギュラー格のキャラのなかで唯一、最終話に描かれる20年後と、劇場版『宇宙いけ!裸足のプリンセス』に登場せず、ルナに比べれば明らかに出番が少なく、やや不遇ではある。第38話では「来週からは僕が主人公」と見えを切って、ルナにたしなめられる一幕もある。

パパ(つづれ屋20エモン)

 主人公エモンの父親。弱小ホテルつづれ屋を営む20代目である。常に閑古鳥が鳴くつづれ屋だが、江戸時代以来続く伝統もあって、ホテルに強い誇りをもっている。そのため、家業を継がせたい一人息子エモンの宇宙への憧れには常に強い不満を抱え、エモンへの小言と言い争いは日常の光景である。
 生年ははっきりしないが、エモンの「さすが20世紀生まれ」という発言から遅くとも2000年であること、放送開始時点で若くても50歳だとわかる。ちなみにルナとリゲルの父親も同級生。つづれ屋の利益のためなら、普段はどんな客であっても腰が低い20エモンだが、団体旅行契約の代わりに賄賂を持ちかけるハッピー商事の男に対しては毅然とした態度で断固拒否してエモンを感動させ、ミリオネア星人が残したダイヤモンドを高価すぎて受け取れないと返却するなど、客足が少なく貧窮するつづれ屋にあっても清廉潔白な態度を崩すことはない。また、貴重な宿泊客が訪れてもエモンの行方が知れないときなどは商売そっちのけで心配してしまう子煩悩な一面も見せている。
 外見・性格ともに原作との違いが少ないキャラクター。50歳以上という年齢については、アニメ版制作時に原作から時代設定が30年ほど後にずらしたものの、それを考慮せずエモンに「20世紀生まれ」と発言させてしまったために辻褄が合わなくなったのが真相かもしれない。20年後を描く最終話では21エモンの息子である22エモンをつづれ屋で養育している様子が描かれており、父親同様に宇宙を夢見るマゴエモンの言動にやきもきしている。

ママ(20エモンの妻、21エモンの母親)

 「ママ」以外で呼ばれることがないため固有名不明で、年齢も不詳。息子エモンへの見解について、夫の20エモンと意見がぶつかることもしばしばあるが、基本的には20エモンのことを信頼しており、夫と同じくホテルつづれ屋には誇りと愛着を持っている。エモンに対する愛情は深く、基本的にはかなり優しい母親といえる。息子に対して口やかましい20エモンと比べるとやや天然気味でおっとりしており、ピンチにあっても動じない一面をもつ。夫20エモンか、メイドロボットのオナベとセットで登場するシーンがほとんどで、リゲルの父との過去のエピソードや、ハッピー商事のズタ袋の男に啖呵を切るような見せ場がある20エモンと違い、個別にフィーチャーされる機会はない。
 やや幼く見える原作と比べ、アニメ版は小学生の母親として不自然ではない外見になっている。性格も原作よりアニメ版のほうが落ち着きがあり、微妙なアレンジがなされている。

オナベ

 ホテルつづれ屋の業務を手伝う、ひょうたん形の体型でタラコ唇のメイドロボット。第2話ラストのモンガーによるテレポートサービスでホテルが繁盛したのを受け、20エモンが取り寄せた。強い腕力をもち、ゴンスケを頻繁に投げ飛ばしている。おばさん風の女言葉で会話し、お節介なところもある働き者のロボットである。つづれ屋に引き取られたことを感謝しており、常に20エモン夫妻の見方に立つ。そのため、つづれ屋を継ごうとしないエモンにホテルの苦境を実感させたり、身勝手な行動を繰り返すゴンスケを制止するなど、自ら教育的指導を買って出る行動が多く見られる。役柄上、つづれ屋でもっとも「常識人」であることから、ゴンスケのように宇宙冒険をするわけでもなく、レギュラーキャラの中では地味な存在に収まっている。第26話では、ガトミック老人のお手伝いとして、同型のオミソというロボットが登場する。
 アニメ版ではモンガーのテレポートサービスによる、つづれ屋の(一時的な)大繁盛を受けて第2話で途中加入する一方、原作ではゴンスケ同様に初めからつづれ屋に存在する扱いで、三話目から何の説明もなく登場する。

スカンレー

 生きる伝説とされる地球人の宇宙探検家で、主人公エモンにとって憧れの存在(のちにリゲルも密かに憧れていたことがわかる)。第5話での初登場以降、第21、26、27、38、39話と後半のエピソードでたびたび登場する準レギュラー的な存在。エモンの宇宙パイロットとしての適性を高く買う一方で、スカンレーの登場で宇宙熱が高まるエモンを心配する20エモンの意向を汲んだモンガーの頼みを聞き入れ、宇宙冒険に憧れるエモンに義手、義足など冒険による深手の跡を見せつけることで宇宙の危険を知らしめる。
 アニメ版ではエモンを正しく導く大人として重要な役割を果たすスカンレーだが、原作では豪快なだけの単純なキャラクターとして、アニメ版第5話に相当する一話に登場する限り。外見と肩書を除けば、ほぼアニメオリジナルといっていいキャラクターである。
 第26、27話では、エモンがスカンレーに憧れるように、少年の頃のスカンレーが憧れた伝説的パイロットのガトミックが登場している。最終話で描かれる20年後の世界でレギュラー格のリゲルが登場していないのに対し、白髪と皺で加齢を演出されたスカンレーが登場して不自然ではないあたり、アニメ版でいかに彼が重視されていたかがよくわかる。

その他の人物

ハルカ
 第17~22話に登場するエモンの幼なじみの少女で、アニメオリジナルキャラクター。幼い頃にエモンと仲が良かったが、彼女が家族で地球外へと引っ越して以降、エモンは彼女の行方を知らずにいた。エモンが愛用するサイクリングキャップは、引っ越しするハルカから餞別として贈られたことが第17話で明らかになる。エモンは木星旅行の動機として彼女との再会を挙げるが、モンガーには旅行の動機は何でも良かったと打ち明けている。だが、その動機によってエモンに好意をもつルナと、エモンとルナを二人にしたくないリゲルが木星旅行に同行する流れが生まれている。
 ハルカ自身だけでなく、ルナとリゲルの木星への同行や、4話にわたる一同の旅のエピソードはほぼアニメオリジナルである。原作の木星行きは強制労働や詐欺、無賃乗船などを扱うややハードな内容となっており、おそらくアニメ版にはそぐわないとして全篇が書き替えられたと思われる。
 木星編のラストでエモンは無事ハルカとの再会を果たす。エモンへの好意から同行したルナも、ハルカと楽しく談笑している。ハルカの登場シーンは主に幼時の回想や過去のビデオ映像などで、実際のハルカが登場するのは木星編の最終話のみ。再会を果たした第22話の後は登場しない。

ルナの父
 ヒロインであるルナの父親で、宇宙をまたにかける大ホテルチェーン、ギャラクシーを経営する人物。本作中でも月や木星衛星のイオなどに支店が存在することがわかる。第2、6、18、22、23、28話に登場。準レギュラー格の登場人物が少ない本作にあっては珍しく、前述のスカンレーに匹敵する登場回数を誇る。木星編の最終話にあたる第22話でも、病気になった娘を心配して惑星ガニメデにまで出向いている。いかにも大企業の経営者然とした風格を備え、第28話では年齢に似合わぬ子どもっぽいやりとりを見せる、同級生の20エモンとリゲルの父を諫めるなど、落ち着いた大人として描かれている。
 初登場の第2話では買収を目論むホテルつづれ屋に対してギャラクシー社長室内で傲慢な様子を見せたり、第6話でつづれ屋20エモンとよそよそしい会話を交わすシーンを見る限り、放映当初は20エモンと同級生で旧友という設定は存在しなかったのかもしれない。
 原作からのキャラクターだが、ルナ同様にアニメ版のほうが出番が多い。

ポロロッコリー
 第29話で不思議グッズの営業員として登場するマジカル星出身の若者。小心な人物で、自らを営業職に向かないと悩んでいたが、エモンたちとの出会いをきっかけに故郷に帰る。この29話のラストで宇宙旅行に出発したエモンたちがポロロッコリーに再会するのが第32話。故郷に帰ったポロロッコリーは博士のもとで助手の仕事に就き、恋愛対象の女性も現れるなど、地球滞在時より幸福に暮らしている姿が描かれる。
 本作のなかで、つづれ屋の宿泊客と他の惑星上で再会するのは、このポロロッコリーが唯一で、さほど重要な人物ではないにも関わらず間を空けた二つのエピソードに登場するという、イレギュラーなパターンとなっている。ポロロッコリーが持っていた無限トランクをモンガーが呑み込んだというつながり。モンガーの項目でも触れたとおり、モンガーが呑み込んだ無限トランクからランダムに道具を吐き出すという設定は、放送が残りあと10話に迫った時点でわざわざ追加した新要素の割には、その後あまり活用されなかった。
 わざわざポロロッコリーを二回登場させたこと、モンガーに能力を追加しながら活用しなかったあたりには、個人的には脚本の時点で延長も想定して仕込んでおいたが、結局年度末での番組終了が決定したためあまり出番がなかったといった経緯があるのではないかと、推測しないでもない。
 そんな違和感もあって、ストーリーの大筋には絡まんでいないポロロッコリーをここで紹介した。

ガトミック
 アニメオリジナルキャラクター。第26、27話の宇宙の危険区域サルガッソーにまつわる物語で登場する。スカンレーの項目でも触れたとおり、少年時代のスカンレーが憧れた伝説的な宇宙パイロットで、宇宙航行局の副局長を務めた経歴をもつ。過去に若く美しい妻を亡くし、妻と新婚旅行に出掛けた思い出のスペースシップを保管しつづけていたが、宇宙冒険に夢を抱くエモンのために自らのシップを解体してエンジンを提供している。連続する2話のみの登場だが、ガトミックが回想する過去のシーンなどの力の入った演出が印象に残ったこと、スカンレーとの関係性から取り上げた。
 エモンが自身が所有するスペースシップで第30~38話の宇宙旅行に出かけることができたのは、第17話のウキキの木から贈られた金塊、父20エモンがこの金塊をホテルに使わずエモンのシップを購入したこと、そして古く珍しい型式(2021年式 STR392C)として入手できなかったエンジンをガトミックが提供したという、この三つによるものである。

 以上、TVアニメ『21エモン』のキャラクターを原作と比較しながらご紹介しました。次回は原作とアニメ版の作品全体の相違点について述べてみる予定です。

スキ♡を押すと、好きな映画10作品をランダムで表示します。