2人目のデザイナーができること
2ヶ月ほど前にイタンジというITベンチャーにUI/UXデザイナーとしてジョインして、Webサービス OHEYAGO(オヘヤゴー)の開発に携わっています。
その前は3年半ほど日産自動車でカーデザイナーをしていました。
日産自動車
・グローバルで2万人を超える大きな組織
・700人くらいのデザイナーがいるデザイン部がある
イタンジ
・全員合わせて60人くらいのコンパクトな組織
・専属で実働しているデザイナーは1人だった
この環境の変化から、2ヶ月という短い期間でも「感じたこと、やってきたこと、これからチャレンジしていきたいこと」など様々な気づきと思考がありました。というか現在進行形でたくさんあります。
この記事ではその辺りのことを「2人目のデザイナーができること」という切り口で書いてみようと思います。
似たような境遇にある方のお役に立てたら嬉しいです。
+1 の貢献をする
まずひとつ目のできることは文字どおり「+1 の貢献をする」です。
組織に2人目のデザイナーがいることで、これまでは1人のデザイナーが抱えていた、あるいは抱え切ることができなかったタスクをカバーすることができます。
そんなの当たり前だろう。と思うかもしれませんが、実際にちゃんと正味+1の貢献をするのはなかなか難しかったりします。
たとえば、1つのタスクに2人同じアプローチで取り組んでしまったらアウトプットが重複してしまい、+1の貢献になりません。
もう1人の動きを見て、コミュニケーションをとりながら、チームとして2以上のアウトプットを出していくことの難しさと面白さを感じる今日この頃です。
いわゆる"チームでのタスクマネジメント"というものの必要性が初めて現れるフェーズでもあります。
そのあたりは、前職の仕事でよく行っていた「複数のサプライヤーさんやモデラーさんにモノづくりの依頼をしてマネージメントする」という経験で培った肌感覚を活かして、スプリント内のタスクの見積もりや割り振りを自主的にやってみてます。
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×2 の視点になる
これは2人以上いるからこそできることの代表選手かもしれません。
ひとつのタスクや課題に対して、2つ目の視点・意見が生まれます。
また、アウトプットをデザイナーの視点からレビューし合うことができ、見落としていた観点などに気づくことができます。
ただ、没頭してしまうといつしか「デザイナーにしか判別ができない域の違いについて議論している」なんてことも、しばし起こりうるので注意が必要だったりもします。
このとき個人的に感じている難しいポイントが「GOサインのタイミング」です。
これは自分が「レビューをお願いする立場」「レビューする立場」の両方で感じる難しポイントなのですが、チーム全体として開発のクオリティとスピードをどうバランスしていくかというテーマにつながるとも思っています。
レビューを綿密に行い、GOサインを出すまでに時間をかければかけるほど、ディテールの作り込みが進んでクオリティが上がったりするのですが、当然開発スピードが代償になります。
かといって、スピード優先で「とりあえずこれで行こう!」とゆるくGOサインを出してしまうと、結局あとで作りなおすという出戻りが発生することも珍しくないです。
上記の問題を回避しつつ、開発を確実に推進していくために、最近自分が心がけていることをもろもろ書き出すとこんな感じです。
レビューをお願いする立場のとき
①レビューの目的を伝える
(確認なのか、選択なのか、アイデア出しなのかetc.)
②デザイン上の課題とソリューションの意図を明確に伝える
③その案に行きつくまでに悩んだところも伝える
レビューをする立場のとき
①基本的に「いいね」の姿勢で入り、本人のやりたいことを全力で伸ばしていくためのアドバイス
②ユーザー目線で不便が起こりそうな心配ポイントだけは解消できるように粘り強くコメント&一緒に考える
③フィードバックを反映するかどうかは本人の裁量にお任せ
とくに「レビューをする立場」のときは、前職で自分の上司(デザインマネージャーやダイレクター)の方々がやってくれていたようなことを意識してみてます。
一方で、「ポジティブなフィードバックばかりだと逆に不安になってしまう」ときが経験上ありました。
おそらくこれは提案する側の人間であれば誰しも抱きうる感情だと思うので、相手に対しても同じ不安を抱かせてしまわないよう、真摯で奇譚なきフィードバックは常に心がけたいところです。むずい。
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第3の手段を見つける
3つ目はまだ試行錯誤をし始めたばかりですが、デザインをアウトプットする「第3の手段を見つける」です。
どの職場においても言えることだと思いますが基本的に、組織に人が増えるほど、事業が大きくなるほどに仕事は純増していきます。たぶん。
それに対して全てを自らの手を動かして対処していこうとするとすぐにキャパシティの限界が訪れちゃうので「第3の手段」が必要になってきます。
デザイナーが手を動かさずとも一定クオリティ以上のアウトプットが生まれる環境づくりです。
2人目のデザイナーとしてジョインして、まだ「視野の広さ」や「外からやってきた視点の鮮度」があるうちだからこそ気づいてできることだと思いました。
一概にコレといった銀の弾丸は存在しないと思いますが、僕が試してみていることを書き出してみます。
①アウトプットは編集できる形式で「成果物&素材」として提供
例: 資料やプレスリリースで載せる簡単な1枚絵であれば極力アドビツールではなくGoogleスライドなどで作成して、誰でも再利用可能な資源にする。
②ノンデザイナーにデザインの観点をシェアする
例: 制作物の相談や依頼に対して、ソリューションをポンと提案するだけではなく「なぜそうすると分かりやすくなるのか」などの観点と思考もセットで説明して、組織のデザインパワーの底上げをする。
③本体から切り放すことができるタイプのタスクの外注
例: 単発もののグラフィック制作などは重要度やブランドとの関連度を見極めて可能であれば外注。ディレクションとクオリティチェックのみ行う。
③に関しては効果が大きそうですが、まだチャレンジしたてのところでして、上司である執行役員に提案して、委託業務をお願いできそうな制作会社さんと最近ようやく契約が結べたところです。
ひとつひとつは小さな改善の積み重ねですが、中長期的に効果がでてきたら良いなと思ってます。
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「新しい力」になることの難しさ
「2人目のデザイナーができること」について現時点で僕が考えたこと&やってみたことのまとめでした。
もしかしたらデザイナーにかぎらず、まだ若い組織やチームにジョインするときに誰しも感じることや思うことなのかもしれません。
これらの感じたことや思ったことは、ざっくりと一言で言うと「新しい力になることの難しさ」なんだと思います。
今回この場で書き出した、テクニック的なことは今後もどんどん思いつくとは思うのですが、マインドセット的な方で僕が大切にしたいな。と思っていることが
「事業にこめられた思いと今に至った経緯を理解し、リスペクトしたうえで新しい力になる」
です。
自分がジョインするタイミングが、事業が生まれるまさにその瞬間でもない限り、今そこに至るまでに積み上げられてきた「思いや経緯」って、たくさんあるはずです。
新しいメンバーとして「いち早く期待に応えなければ」という焦りはつきものですが、そのベクトルが大きいあまりに、今まで積み上げられてきたこととベクトルが真逆なことをしては本末転倒ですよね。
また、既にある全てに対して「完全に共感をして、頷くばかり」でも新しい力としてバリューにかけてしまいます。
バランスが難しい。と日々、思いますが、心のアプローチとしてはまず
「事業にこめられた思いと今に至った経緯を理解する」
次に
「それらをリスペクトしたうえで、自分独自の視点を足したり掛けたりして新しい力になる」
そんな風にして、組織やチームの一端を担えるようになって行けたらいいな。と思うのです。
つづく。
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