見出し画像

el 17 de octubre : 映画『光のノスタルジア』

原題は『Nostalgia de la Luz』

監督・脚本・ナレーション:パトリシオ・グスマン(Patricio Guzmán)
2010年:製作、2015年:日本公開
フランス・ドイツ・チリ合作
字幕:原田りえ

スペイン語の勉強、やる気になれず。でも何かやらねば。じゃあせめてスペイン語の映画を見よう。タイトルのフォントがかわいい。しかも、先日教えてもらったアタカマ砂漠について云々。これにしよう。

画像1

この静かに淡々と進む感じ、好きだなぁ。登場人物同士がまくしたてるようなドラマじゃなくて、穏やかなナレーションが続いて、スペイン語の聞き取り練習にも良い。これがチリのスペイン語かぁ。sがfと聞こえたり、無音な感じがなんか良い。

アタカマ砂漠は、乾燥していて、宇宙から届く光がよく見える。ホントにきれい。天文台の話を中心に進むのね。科学的に言えば、「『現在』は存在しない」って、科学的だけど哲学的に聞こえる。

そうやって学術分野のお話が続くと思っていたら、アタカマ砂漠・高原のチリ硝石の話、ピノチェト独裁政権の強制収容所や虐殺の話になってきた。聞いていたら、結構最近の話じゃない!

アタカマ砂漠でとれたチリ硝石の採掘場に作られた労働者の収容施設が、そのまま政治犯の強制収容施設としても使われた話。虐殺された人たちの遺骨を、この広大な砂漠で、今も探し続ける女性たちの話。buscadorasって言ってたな。こんな気の遠くなるような作業を、もう28年もやっているわ、と答えた女性。

映画の冒頭で、このアタカマ砂漠を称して、
「何もいない。でも、多くの歴史で満ちている。」
「no hay nada. sin embargo está lleno de historia.」
と語っていた。
化石とか、地層とか、単純に科学的な見地で言っているのだと思っていたけれど、そうじゃないんだ。強制収容所とか、虐殺とか、本当に忘れてはいけない歴史が積み重なっているんだ。

チリと言えばチリワインしか知らなかったけれど、「スペイン語」というワードのみでたどり着いた映画で、チリについて深く考えることになってしまった。言葉を習うということは、その国の歴史や文化にも触れるということ。スペイン語の先生の言っていたこと、当然すぎるでしょ、なんて思ってたけど、実感した。

でも、この重々しいテーマを、ほんとうに美しく、でも美しい景色を映しただけではない、魅せる映像で表現している、この組み合わせがすごい。星の美しさを感じられる映画でもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?