小林範之
スピノザとティール、そして、ありえたかもしれない近代(2)
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スピノザとティール、そして、ありえたかもしれない近代(2)

小林範之

■コナトゥス
・ 「コナトゥス」とは、ある傾向を持った力で、個体を今ある状態に維持しようとして働く力のことである。
・ 「コナトゥス」という力は「本質」であり、「本質」という「形相」でもある。
(注)コナトゥスは「力」でもあり「形」でもある

この、「コナトゥス」という言葉を、「セルフマネジメント」に置き換えたら、そのまま文脈はつながります。

・    「セルフマネジメント」とは、ある傾向を持った力で、個体を今ある状態に維持しようとして働く力のことである。
・    「セルフマネジメント」という力は「本質」であり、「本質」という「形相」でもある。

説明は以上!ではあるのですが、(注)とした「コナトゥスは「力」でもあり「形」でもある」については、触れておかなければなりません。

ティールを説明する上で、多くの人が誤解していることが二つあります。一つは、ティール組織はフラットで、ヒエラルキーがない組織のことだと思われていることです。そもそもの提唱者であるラルー氏が、必死にこの誤解を解こうとしています。コンセプトが独り歩きしているのです。

ティールが欲していないのは、従来のような固定的なピラミッド構造と力の偏在です。一部の人に権力が集中し、多くの人がその構造に支配されている状態では、「セルフマネジメント」が機能しません。一方で、「セルフマネジメント」が機能する状態とは、メンバーすべてが組織運営に一票投じることのできる「力」を持っていることです。両者を対比したら分かりやすいと思います。例えば、何かトラブルが発生した時のことを考えてみましょう。まず、力が固定化した組織の場合、起こったトラブルに対し、マネージャーが勇み介入し、鎮火させると本人は満足げに本部に帰っていきます。解決プロセスにおける裁量は彼の気分次第だったのかもしれません。これでは人も育ちませんし、マネージャー個人のモノサシで決定がコロコロ変わっていたら、仕事に対するモチベーションも高まってくることはないでしょう。これに対し、「セルフマネジメント」が機能する組織は、予めのプロシージャ―にのっとって処理されるか、あるいは、アドバイスプロセスというプロジェクト型の討議会のようなものが開かれて、そこで解決が図られます。「『セルフマネジメント』とは、『ある傾向を持った力で、個体を今ある状態に維持しようとして働く力のこと』でしたね。組織の恒常性を維持するための免疫システムとして覚えておくのがいいかもしれません。組織活動を維持するための「機能」として、そして、そこに働く「力」そのものとして、「セルフマネジメント」は存在しているのです。

もう一つの誤解が、ティールはルールや決まり、制度がないと思われていることです。まず、ティールの兄弟とされる、ホラクラシーには「ホラクラシー憲法」といったかなり強い意思決定基準があります。同じく、ソシオクラシーにもテクノロジーを駆使した意思決定システムがあります。ティールでは、ルールや決まりを明文化するかどうかの決まりはありません。しかし、「セルフマネジメント」が機能するには、一定のルールが必要です。アドバイスプロセスがどこに帰結を求めるかその基準は存在します。それが「エボリューショナリー・パーパス」です。ティールには、ルールも決まりもあります。アドバイスプロセスの開催もルールの一つです。「コナトゥスは『力』でもあり『形』」でありました。この「形」が、「ルールや決まり」のことを指します。

今回は、1つのワードにしか触れられませんでした。また、ほとんどがティールの誤解を解くための説明になってしまいました。次は、「変状する力」から始めます。


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小林範之
最近「サーキュラー・エコノミー」や「リジェネラティヴ」という言葉が気になっているアラフィフ男性。