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フレームワークより大切なもの

ビジネスにはいろんなフレームワークがあるけれど、フレームワークだけ知っててもなんの価値もない。

逆にフレームワークなんて知らなくても、考え方があっていれば問題ない。

フレームワークはあくまで考え方を体系的に整理するためのもの。

つまり、何をしたいのかによって、当然活用するフレームワークは変わってくるということなのだが、どうもフレームワークだけが一人歩きしてしまっている場面に遭遇することが多々ある。


当社では、マーケティング人材育成を目的に若手社員を中心とした実践型データ分析研修をしており、ぼくは中堅社員ということでアドバイザーとして参加している。

その研修では自分たちでテーマを決めて半年程度をかけて分析し、その結果を発表していくわけだが、当然ぼくのような社内の素人アドバイザーだけでは心許ないということで、社外のコンサル会社のアドバイスを受けている。

先日もテーマ選定についてのアドバイスを受けたわけだが、さまざまな業務上の課題から漠然としたテーマを相談。

テーマをなかなか絞りきれないメンバーに、AIDMAというフレームワークで考えてみるようアドバイスをもらった。

そこから丁寧にAIDMAの考え方やフレームワークを使って要件を整理する手法を学んだのだが、なぜ今回ような場合にAIDMAのフレームワークを使うのか、ということには言及されなかった。

この相談に対するアドバイスとしてはもちろん間違っていないが、メンバーが今後のマーケティング分析を行っていくうえでは、フレームワークをどういう時に使えばいいのかということがわからなければ、結局は使いこなせない。

フレームワークだけ覚えても、どういうときに使うのが最適なのかがわからない。

それなのに、みんなたくさんのフレームワークという手法を覚えようとする。

ぼく自身も、これまで数多くのフレームワークを活用してきてはいるものの、どの場面にはどんなフレームワークを使うべきかなどは習ったことがない(単純に覚えていないだけかもしれない)ので、代表的なものだけでもまとめてみようと思う。

ロジックツリー

これは、フレームワークというのかどうかも怪しいが、比較的意味がわかりやすい。

課題に対してあらゆるアプローチを探るため、考え得る要素をひたすらあげて、それぞれを深掘りしていく。

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これをやることで自分自身の頭が整理されて、より課題の解像度が高くなる。
これをやる前は複数の要因だと思っていたけど、根っこの部分は同じだったりすることも多々あり、これによって対策が根本的な対策に絞られるのでシンプルでわかりやすいフレームワークだが、効果は高い。

担当者がまずは1人で考えるときの一歩目として作成し、それをそのままたたき台として使うことで、周りに抜け漏れを気づいてもらったり、全体像を把握することで優先順位をつけやすくしたり、議論の的を絞ることにも繋がる。

まず1人で考える場合は、活用してみると意外と気づいていない本質が見えたりなんてことも決して少なくはない。

3C分析

Company(自社)、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)の頭文字を取った、現時点のマーケティング環境を把握するためのフレームワーク。

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自社環境=経営資源やビジネスモデル、自社商品やブランド価値などの中から自社の強みや弱みを把握する。
市場環境=業界の市場規模や成長性、顧客ニーズや購買行動などを把握する。
競合環境=競合の有無や業界内でのシェア、参入障壁や競合の業績などを把握する。

上記の事実を明確に把握することで、現行事業の戦略や新規事業へのリソース配分などを検討する
また、自社の軸でなく競合や顧客を軸にした3C分析と組み合わせることで、自社の強みの活かし方を明確にしていくこともある。

現状把握のフレームワークとなるので多くの場合、他のフレームワークと合わせて活用される。

SWOT分析

強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの頭文字を取った現状分析を行う上でのフレームワーク。

上の3C分析とあわせて使われることの多く、3Cで把握した事実情報に解釈を加えていくことで、企業の現在の立ち位置を明確にして戦略策定などに役立てる。
3C分析とあわせて使われるのは、事実情報の把握が正確にできていないと間違った解釈のまま戦略策定がされてしまうため。

SWOT分析では、この4つの事項をクロスして分析していく。
横軸=内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)
縦軸=プラス要因(強み・機会)とマイナス要因(弱み・脅威)

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内部環境は、組織や社員などのリソースのことで、ある程度は自分たちでコントロールが可能なもの。一方で外部環境は業界動向や法律などの外的要因のことで、なかなか自分たちではコントロールすることができないもの。

内部と外部の環境に対してそれぞれプラス要因、マイナス要因を掛け合わせることで抜け漏れなく要因を分析することができる。

この4つの軸を結びつけることで、自分たちの現在の立ち位置を把握した上で、攻めて競合を潰していくのか、競合にシェアを奪われないように守りを固めるのか、などの戦略につなげていく。

役割を理解する

この他にも現状把握や戦略・施策の立案に活用するフレームワークは沢山あるが、このままいくとただのフレームワークの説明だけで終わってしまいそうなので、どこかで改めてまとめたいと思う。

今回はひとまず、ぼくがなんとなく知っている代表的(だと思っている)フレームワークを簡単に分類だけしておく。

・5フォース=直接的な取引関係の中の環境を分析するのに最適な手法
・3C=自社を取り巻く市場環境を分析するのに最適な手法
・SWOT=現状の環境を踏まえて自社の戦略策定の基盤を作る
・PEST=社会的な課題と自社の取り巻く環境を分析する
・STP分析=自社の狙う市場、立ち位置を把握して戦略策定に活用する
・4P分析=具体的な施策の立案に際して4つの軸で考える手法

こうやって整理してみると、それぞれのフレームワークは結構重複する部分が多く、でも少しずつ視点が異なっていることがわかる。

経営戦略的な会社全体の戦略や事業戦略について考える際は、社会環境との関係性を分析するPEST分析や自社を取り巻く現状の環境把握をする3C分析やSWOT分析が効果的なようにも思うし、商品・サービス・ブランディング的なことを考える際には5フォース分析やSTP分析、4P分析などが効果的なのだろう。

それぞれが微妙に重複しながら存在するので、全ての分析を行うことが出来れば、かなり骨太な戦略が立てられそうだが、それにしても重複部分も多く無駄が多いだろうし、そんな時間をかけている間に社会情勢が変わってしまうかもしれない。

現状分析、戦略策定それぞれのフェーズで自分自身で考えやすいフレームワークをひとつ持っておくことで、ある程度整理された情報を素早く引き出しから出せるようになるだろう。

偉大な経済学者たちが考えたフレームワークは、要件を整理したり、分類したりするためには非常に便利な手法ではあるものの、やはりあくまでも手法なわけで、使い方を誤ると間違った方向へ進んでしまうことすらある。

間違った方向へ導いてしまったからといって、そのフレームワークが不完全なわけではなく、例えば現状把握ができていない状態でSTP分析や4P分析を行ってしまうとせっかく考えた戦略もあまり意味をなさないものになってしまうだろう。

AIDMA/AISAS

最後に、先日のデータ分析研修でアドバイスを受けたAIDMAの使い方について紹介して終わりにしたいと思う。

「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字をとったAIDMA。
消費者が商品やサービスを購入するまでのプロセスを表したものとなるので、これまでのフレームワークよりも随分と具体的な内容である。

この5つを考えるにあたっては、自分たちの商品やサービスのターゲットを明確に定義することから始まる。

いわゆる5W1Hで「誰が、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように」購入するのかというところを突き詰めていくため、競合の“右へ倣え”でとりあえず市場が拡大しているから参入した事業などの場合は、改めてここの定義をすることで、戦略策定に役立てられる。

今回のぼくらの場合、まさにこのターゲティングの部分がかなり曖昧だったことから、まずはそこの整理をしろということを暗に示されたということなのだろう。

そして、このAIDMAの進化系というか、現代版のようなものがAISAS。

「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Shere(共有)」の頭文字を取ったもので、インターネット時代にあわせてAIDMAをアレンジしたものではないかと思う。

現代では2つの”S”(「検索」と「共有」)が消費者の意思決定にとってより重要視されてきているというのは納得感があるし、AIDMAの中で「欲求」と「記憶」という項目は少し考えづらいのは、もしかしたら自分たちも消費者として「欲求」「記憶」よりも「検索」「共有」が意思決定プロセスに重要視しているからなのかもしれない。


このように、フレームワークといっても時代の変化によって変換をしていくことも重要。
ただ、正しくフレームワークの使い方や意味を理解していないとそんな変換ができず、いつまでも昔ながらの手法を使い続けてしまい、なんだかしっくりこない結論となっていては何の意味もない。

正しく理解して、正しく使う。
当たり前のことではあるが、この手のものはつい便利に使ってそのまま使い捨て、となりがちな部分でもあるので意識的に意味を理解することが重要なのだろう。

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