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ギャラについて考える

テレビ曲が勝手に小零細出版社のコンテンツを使って番組作る問題から、フリーの作家やライターにテレビ出演や番組制作に必要な資料提供を無料でさせ、出演の際も依頼しておいてギャラどころか交通費すら出さない問題が昔から当たり前のように続いていることについて考えていますが、そもそもテレビ番組を制作している制作会社は名前も聞いたことがないような中小企業で、だからギャラなんて払えないんだ、ということを知ると、他でも、一時期僕も働いたことがあるIT業界や、それこそ我々の出版業界も似た状況はあるなと思います。

IT業界では、大手が下請け、さらに孫請けにまで仕事を出して、現場で実際に働く制作会社の人達やフリーは薄給という現実、出版業界でも、大手版元の正社員は年収四桁でも、実際に本を制作する下請けの編プロの社員は手取り20万以下だったり、フリーは状況はもっと酷くて、僕の妻がフリーのDTPをやってるけど、先日、100万部のベストセラーの本を作っているような編プロから受けた仕事は、1ヶ月はかかる仕事がたったの5万円足らずと、時給にしたら果たしていくら?というあきらかに不当な金額でやらせようとしたり(しかも何度も出版社の都合で修正が入ってさらに膨大に制作時間がかかったのに5000円ぐらい上値せして済ませようとした)する現実。

我々小零細版元も小さいとはいえメーカーなので、この問題は考えなくてはならないが、弊社のような小零細版元は、今度は取次会社の支払い条件が大手版元よりかなり悪く、正味も低い上に、売上の入金は刊行の6ヶ月後になるまで全額支払ってくれない(しかも新刊の委託だと、支払う時は返品を引いた金額だから、6ヶ月後にいくら入るかも見えない。安心して資金繰りもできない)という条件なので、フリーの作家やライターやデザイナーに多額のギャラを支払い続けたら、毎回80%以上売り切るような本を作り続けない限りは、確実に資金繰りに行き詰まる。

ここがポイントなんだろうなと思う。同じ穴のムジナに弊社が入らないためには、新刊は全て80%は売り切るというものにすれば、作家やライターやデザイナーに、ギャラをもっとたくさん払っていける。さらに毎年1万部ぐらい売れ続けるようなロングセラーの本を出せれば資金繰りも安定する。
かなり高いハードルだが、そこを目指さないことには、弊社に未来はないのだろう。

出版の怖さは、やはり返品だ。
突然のヒットに調子に乗って、本を作り過ぎてしまって最終的に返品が想定以上に出てしまうと結局6ヶ月後の取次からの入金は製造原価以下だったりして、そこで資金繰りはアウト、資金ショートして下手すると倒産したりする。ベストセラー倒産というやつだ。
だから小零細版元の経営者は(全員がそうだとは言いませんが、私の知り合いの小零細出版社の経営者数十人の90%はそんな感じですね)泣く泣く、どんなにケチと言われようと、ギリギリの制作費で回して会社を潰さないようにしていることが多い。
返品を減らすためには、本が出た後も店頭にある本をなるべく多く売り切るような営業宣伝広告が必要になる、またここで金がかかるわけだが、ここでまたヘタにケチると結果的に返品が増えて、取次からの売上の入金も減り、首を絞めることになるから、「ここは勝負する」という時の判断力と決断力と覚悟も小零細出版社の経営者には必要になる。

まあでも、多額の広告収入と社員に数千万の給料払えるようなテレビや大手企業は、数万でもいいからフリーの人にギャラと交通費ぐらい払えるような状況にしないと、結局安いギャラの芸人ばかり使った同じような番組ばかりで視聴者がテレビを見なくなって、最終的にスポンサーも離れて広告収入も減っては元も子もないから、何とかした方がいいと思います、という話。

と長々と書き終えて、弊社がすべての作家さんやライターさんやデザイナーさんに、満足するギャラを払えているわけでもなく、それこそ無償で手伝ってくれている人も中にはいるので、他の業界のことを上から目線で書いている自分が、ちょっと嫌になって、一瞬消そうと思いましたが、自分への自戒も込めて、やはり消さないで残しておくことにします。

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