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400年の伝統の本質を見極め、現代の感覚で文化を創造し続ける。暮らしの中に豊かな時間を作る、岩鋳の南部鉄器

ー作り手

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江戸時代、京都より南部盛岡藩にきた文人等の影響で、「武」より「文」を重んじ、茶の湯を愛した藩主に守られて発展してきた南部鉄器。400年経た今、なお続く岩手を代表する伝統工芸です。


長年使い込まれた鉄瓶は、湯あか(水に溶け込んだミネラル分が鉄瓶内部に付着したもの)や、被った灰や煤でさえその家の歴史を物語るような重厚感を作ります。黒く渋い艶が出るところなど、他の何にも見られない独特の美しさがあります。


その経年変化による美しさもさることながら、湯の味が甘くまろやかになったり、蓄熱性の高さから温度ムラができず料理が美味しく仕上がったり、味の面でも優れています。丁寧に扱えば100年持つと言われるくらい丈夫で長持ちすることから、一生ものの道具として昔から愛されてきました。

また、現代の食生活では不足しがちな鉄分、しかも体に吸収されやすく貧血予防にもよい「二価鉄」を摂取できることもあって健康志向の人にも注目されています。

急須石榴 JRイメージ

昔ながらの南部鉄器は黒や茶色でフォルムも素朴な印象でしたが、現代の職人さんたちはその印象をガラリとかえるカラフルな急須やデザイン性の高いフライパンなどのキッチンウェアを作り出しています。

今回はそんな新しい南部鉄器の世界を展開する、岩鋳さんの商品をご紹介したいと思います。



岩鋳さんは、産地では珍しく製品のデザインから販売まで一貫した生産体制をとり、国内はもとより海外へも展開されています。その数はなんと年間100万点にもおよび、明治35年の創業以来、その長く続く南部鉄器の伝統を守りながら、”今の暮らし”に馴染む製品作りに励まれています。

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こちらは熱がじっくり伝わることで卵がふっくらと焼きあがる「オムレット」。女性でも扱いやすいよう持ち手にスリットを入れて軽量化するなど細やかな気配りが嬉しいです。


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数ある岩鋳のキッチンウェアの中でも特に人気の「ごはん鍋」。ザラメホーロー加工を施し、機密性、蓄熱性に優れています。炊きあがったお米は、ふっくらつやつや、おこげもちゃんとできます。蓋を開けた瞬間の幸福感はたまりません!キャンプなどに持っていけばダッチオーブン代わりにも。

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岩鋳のキッチンウェアは、その厚みから全体にムラなく熱が行き渡り、素材にゆっくり火が通るので旨味が引き出されます。また砂型を使用してつくられるため、小さな凹凸が油馴染みをよくし焦げ付きません。


急須白

白地に金色がアクセントとなってとても上品な仕上がりの「急須」。他にもいろいろなデザインやカラーが展開されているため、自分好みの1点が必ず見つかるはずです。急須は全て内側をホーローで仕上げ、錆びを気にせず扱いやすくなっています。

ーものがたり

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岩鋳さんは創業されて120年。一般的にみれば立派な老舗ですが、400年の歴史がある南部鉄器の世界では後発組になるそうです。それゆえ、「伝統と革新」をコンセプトに南部鉄器の未来を創るための挑戦を2代目の頃からしてこられました。


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例えば先ほど紹介したカラフルな急須は、岩鋳さんにとっても、南部鉄器にとっても大きな挑戦だったと聞きます。

こちらの急須はフランスの老舗の紅茶屋さんから、「フランスの家庭に似合う色の急須を作って欲しい」との依頼を受けたのをきっかけに、着色方法を独自に開発して辿り着いたデザインです。これを持って業界でもいち早く海外進出をし、今ではヨーロッパの小売店などで「IWACHU」が鉄器の代名詞になるほど浸透しているそうです。

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パリのQuai branly Museumでの展示風景。背景の絵は岩手山、道具や材料も一緒に並べて、言葉だけでは伝えきれない南部鉄器の大事な構成要素も見せています。


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フランスのデザイン事務所「les Sismo」によるデザイン。五徳の上でお湯を沸かしている日本の伝統的なスタイルを底に表現されています。蓋は、1818年創業のフランスで最も権威のある磁器のブランドの一つ、「PILLIVUYT社」製。洋の東西を超えた老舗のコラボ商品です。

焼型 文様捺し

伝統の南部鉄器から、世界のIWACHUへ。挑戦は今も続いています。

新しい商品開発に取り組むチャレンジングな姿勢。しかし、こうした挑戦ができるのは、400年続く伝統技術を代々きちんと受け継いできているからです。ゆるがない伝統という土台があるからこそ、新しい世代が新しいものを生み出せるのです。まったく新しく見えるものの中にも、昔から変わらぬ東北人らしい堅気な職人さんのプライドやこだわりがつまっています。

焼型 鋳込

1500度の鉄を鋳型に流し込む。個人の腕だけでなく、職人さん同士の息が合わないと良い製品にならないそうです。

焼型 着色

約250度に熱し漆を手塗りした後のおはぐろ(鉄片を漬けたサビ汁に茶汁を混ぜ合わせたもの)を塗る様子。南部鉄器はこうした細かな工程をいくつも重ねてやっと完成します。

丈夫であること、そして使うたびに愛着が深まっていく道具であること。
確かな品質に支えられた「本物」だけが持つ南部鉄器の魅力を
製品を通してみなさまへお伝えしていきたいと考えています。

一点一点丁寧にものづくりをする職人さんの真心が製品にこもっているのですね。

ー想い

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使い込むほどに風合いが出てくる。使い手によって味わいが変わる。使う人のくらしが、そのまま写しとられる、それが南部鐵器です。

電気ケトルでパパッとお湯が沸く。それはもちろんとても便利で、その便利さに助けられている方も多いはずです(特に忙しい朝の時間なんて)。

しかしこうしておうち時間が増えた今、職人さんが丁寧に作った鉄瓶で沸かしたお湯でコーヒーやお茶をいれ、ふんわり焼けたオムレツと香ばしいトーストをほおばる。炊きたての白いごはんを噛み締める。毎日の生活の一部を少しこだわってみるだけで、身も心もほかほか満足しそうです。


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守るべき伝統は守り、常に時代のニーズに応えることができる製品づくりを行う。

守るべき伝統とは、もちろん技術的なこともあります。昔から伝わる形もあるでしょう。でも、使う人が「豊かだな」と感じる時間の過ごし方は時代によって変化していくものです。もしかしたら、岩鋳さんが守っているのは、
「美味しいね」「楽しいね」「ほっとするね」
という、その時代を生きる人々の気持ちなのかもしれません。
岩鋳さんの南部鉄器を通して、本質的な豊かさが次の世代にも伝わっていくことを願っています。

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ー作り手情報


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