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楽食探訪:そば屋のもてなしに、驚く。

ドライブの帰り道、
山の中で手打ちそばのお店を見つけた。

茅葺き屋根の農家を移築したようなそのお店は、
とても風情あるものだった。

昼前に通り掛かったのだが、
外ではたくさんの人が待っていた。

12時開店のようだ。
でも、行列はできていない。

面白そうなお店だと思い、入ってみることに。

入口には何も書かれていない。
“もしかして予約しなければ入れないのかなぁ”
“そんなに有名店なのかなぁ”
と不安ながらも、少し待ってみた。

12時になって開店し、中に入ってわかったが、
外で待っていた人たちは、やはり予約の人たちだった。

私が「ここは予約制ですか?」と聞くと、
「いえ、大丈夫ですが、
 しばらくお待ちいただけますか」と、
待ち席に座らされた。
席を用意するという。

ぞくぞくと予約の人が入って、
あっという間に広い店内はいっぱいになった。

私たちにもすぐに声が掛かったが、
コース料理や会席膳はできないらしく、
単品だけになるとのこと。

席に案内され、しばらくすると、
和紙のお品書きと「そば茶」が出された。

「そば茶」は初めての経験だ。

そばの名店に行っても、
あまり「そば茶」は出てこない。

注文をすると、すぐに「そばせんべい」なるものが、
素焼きのごつごつした器に入れられ、出てきた。
こちらも初めて口にする。

そば茶は、そばの香りがほのかにただよい、
口に入れると香りと甘みが広がった。

せんべいは、おそらく打ったそばの切り落とした端を
揚げたものだと思うが、これまた美味なるもの。

単品しか注文していないお客にも、
こんなサービスをしていることに感心した。

お茶を飲み、せんべいを食べながら、店内を見まわした。

非常に高い天井で、古い農家らしい太い梁。
床は板張り。

靴を脱いで入る。

一角には、囲炉裏がある。

窓は、お店らしく大きくとられており、
新緑の景色が見渡せる。

陽の光もたくさん入り、店内を明るくしている。

外にも板張りの席が設けられている。

入口近くにはかまどがあり、そこでそばが茹でられる。

そば打ちを見せるようになっていないのが、少し残念だ。

また、待ち席横には、
このお店が紹介された雑誌とお店の名刺、
周辺施設のパンフレットが並べられていた。

紹介された雑誌を置くことは、
個人的にはあまり好きではないけど、
演出効果はあるだろう。

ピアノも置いている。

田舎の方では、
よくお店などでミニコンサートが開かれたりするので、
そのためにあるのだろう。

店内を見ているだけでも、なかなか楽しめる。

コース料理や会席膳を頼んでみたかった。

しばらくすると、
今度は「きゅうりの浅漬け」が出された。

“へぇ~、やるね”などとまたまた感心した。

この浅漬けが、これまたイケる。

芸が細かい、とでも言うのか。

待たせる間も、お客を飽きさせない。

普通のお店なら、“遅いなぁ!”となるところだけど、
まったく気にならなかった。

コース料理や会席膳が中心なので、
みんな予約するようだ。

そばの単品は、700~1200円程度。

そばがきやさばのなれ寿司など、
酒の肴もいくつかある。

さばのなれ寿司というのは、この地方の郷土料理で、
さば寿司を2~3日置いて、少し発酵させ、
味を馴染ませたもの。

これは、1貫200円で単品注文できる。

私たちはこれも注文した。
単品注文できるのがいい。

お酒も、地酒をいくつか揃えている。

注文した品が出てきた。

手打ちそばは、まず、つゆをつけずに食べてみると、
そばの香りもしっかり残っているし、食感も絶妙。

美味い!

ただ、手打ちそばはどこもそうなのだが、
大食漢の私には、量が少な過ぎる。

この単品だけで価格を考えると、高いなぁと感じる。

しかし、お店の雰囲気や注文したものが出てくるまでの
サービス品を考えると、やはり“大満足”だと言える。

サービス品の原価は、たかが知れている。

これで、どれほど付加価値が高まっていることか。

非常にもてなすことが上手なお店だと感じた。

ふらっと立ち寄ったお店だけど、得をした気分になった。

いいお店には、なかなか出逢えないものだから。

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