見出し画像

【食のビジネスモデル検証Vol.1】ジャンキー肉で人を惹きつける、荒技食堂。

厳しい社会情勢でありながら、飲食業界においては、
次々に繁盛店が誕生し、行列ができています。

しかし、一見活況を呈しているように見えますが、
その数倍のお店が毎日閉店し、姿を消しています。

また、行列のできているお店であっても、
突如閉店ということもよくあります。

生き残るお店と消え去るお店では、
何が違うのでしょうか。

この疑問の答えは、永続的に食ビジネスに携わる
会社・商店の秘密を探れば、わかります。

事例をここに記しますので、解析してみてください。

きっと、あなたのビジネスに良い影響を及ぼします。

■「手土産」に重宝される、深夜営業のパン屋さん。

大阪市中央区東心斎橋。

2021年10月。
とあるパン屋さんがオープンしました。

北海道産小麦粉と自家製酵母を使った無添加の生地を、
小麦本来の味わいと旨みを引き出すための
低温長時間発酵させて作る、こだわりのパン。

高級感のある外装・内装で、
周辺地域に合ったお洒落なお店です。

ライ麦バゲットや明太フランス、ミルクフランスなどの
ハード系を中心に、メロンパン、カレーパン、
クロワッサン、あんバターサンド、
塩パン、ピロシキなど、
幅広い種類のパンを揃えています。

しかし、国産小麦や自家製酵母、発酵方法などは、
特に珍しいわけでもなく、いまどきはごく普通のこと。

つまり、際立った特徴はないのです。

また、価格的には若干高いので、
「コスパが悪い」という口コミが
ネットに流れているぐらいです。

ところが、このお店は大繁盛しているのです。

営業時間中は、次々にお客さまが来店し、
大量にパンを買い込んでいくのです。

両手に袋を持たなければならない量を買う
お客さまもいます。

それほど売れる秘密は、
このお店の出店場所と営業時間、客層にあります。

この場所は、「大阪ミナミ」と呼ばれる飲み屋街。
バーやクラブがたくさん並んでいます。

営業時間は、午後5時〜午前3時。
つまり、深夜営業をしているのです。

お客さまは、クラブのママや従業員、飲みに来た人。

すなわち、この街が活動する時間帯に
開店しているパン屋さんなのです。

夜営業するパン屋さんは極めて少ないので、
夜の街に“必要”なお店となっているのです。

仕事前にスタッフと食べるパンを買いに来る、
クラブのママ。

お客さまに差し上げるために買うことも。

馴染みのお店に手土産として買っていく、常連さん。

飲んだ帰りに翌朝用として買う人。

飲み会の終わりに、仲間たちへのお土産として手渡す人。

夜の街で、さまざまな“需要”が生まれているのです。

普通の繁華街や住宅地で、
普通のパン屋さんをオープンしても、
売れるかどうかはわかりません。

しかし、この真夜中のパン屋さんは、
深夜営業のパン屋さんが少ないことに目をつけ、
飲み屋街に出店し、手土産需要を掘り起こして、
成功しているのです。

普通のパン屋さんで、多少コスパが悪くても、
戦略次第で繁盛店になれることを証明しています。

良いアイデアです。

■「酒のモーニング350円」。話題性の裏に隠された本当の実力。

大阪新世界。
言わずと知れた、ディープな街。

以前は、柄の悪い連中や酔っぱらいがうろつき、
決して安全とは言えない場所でした。

しかし、いつの頃からか、そのレトロさが見直され、
観光客がやって来るようになりました。

安い居酒屋や串カツ屋、激安の寿司屋、将棋道場、
弓道場、大衆演劇場、スマートボールなど、
いまの若い世代が知らない“文化”が残っており、
物珍しさが注目されるようになりました。

観光客が来るようになると、
いままでゴミが散乱していたようなところも掃除され、
酔っぱらいが道端で寝ることもなくなりました。

「レトロ大阪」をテーマにした観光地の誕生です。

全国各地から、また海外からのお客さまも増え、
ディープな街というイメージは払拭されたかのようです。

明るく賑やかで、元気な街となっています。

しかし、居酒屋に入ると、
そこでは昔の新世界を見ることができます。

近寄り難き、酔っぱらいのおっさんたち。

外をうろつく姿はあまり見掛けませんが、
お店の中でたむろしていたのです。

酔っぱらい、健在。

その証拠に、
朝から開店している居酒屋もちらほらあります。

その中の一軒、
ジャンジャン横丁と呼ばれる小さな商店街の中に、
朝9時オープンの立ち呑み屋があります。

ここは、
テレビや雑誌でも度々取り上げられている有名店です。

なぜ取り上げられるのかというと、
「お酒のモーニングセット」があるからです。

生ビールまたはチューハイ+ゆで卵・塩昆布で、350円。

これが、注目を集めているのです。

モーニングと言えば、喫茶店のメニューですが、
立ち呑み屋で提供しているのは珍しく、
「酒のモーニング発祥のお店」と言われています。

周辺にも朝早く開いている居酒屋はありますが、
このモーニングを目当てにやって来る
お客さまが多くいます。

モーニングの集客力は絶大なのです。

しかし、このお店の本当の魅力は、
モーニングではありません。

確かに、注目度も集客力も高いのですが、
それはマスコミや新規のお客さまを
誘引しているに過ぎません。

多くの常連さんを抱える秘密は、お酒や料理にあります。

お酒は、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン、
テキーラなどを揃えています。

中でも日本酒は、「剣菱」「呉春」「賀茂鶴」など、
通好みの品揃え。

焼酎は、各種チューハイがありますが、
「コーヒー焼酎」や「紅茶焼酎」、
ヒアルロン酸とコラーゲンの入った「うるおい酎ハイ」
などのオリジナルも用意しています。

料理は、おでんや刺身、肉豆腐などの定番のみならず、
くじらおばけやくじらベーコン、マグロユッケ、
梅くらげ、肉スープ、ホルモン炒め、
おでんだし巻き、鶏のハラミなど、
多種多様な味わいを楽しむことができます。

酒呑みとしては非常に嬉しいことで、
毎日来ても飽きない品揃えなのです。

味の評判も良く、しかも安い。

これが、このお店の魅力なのです。

酒呑みが多く、周囲に居酒屋も多いということは、
それだけ競争も激しいのです。

その中で生き残り、勝ち抜いて来たのですから、
その実力は間違いのない、本物です。

「酒のモーニング」で注目はされたとしても、
それ以上の魅力がたくさんあるからこそ、
繁盛し続けることができるのです。

素晴らしいお店です。

■チキンナゲット定食? 
 観光客をも引き寄せる、沖縄大衆食堂の魅力。

沖縄県那覇市に、昭和49年創業の大衆食堂があります。
沖縄県民で知らない人はいないと言われるほどの人気店。

9:30〜23:00の長時間営業の間には、
お店の前にある沖縄大学の学生や
周辺のサラリーマンがたくさんやって来ます。

地元のおばあたちが作るメニューは、約80種類。

毎日来る人が多いので、飽きさせないように、
メニューが多くなったのです。

メニューには、沖縄の郷土料理が並ぶので、
県外(内地)の人から見れば、
驚きとワクワク感があります。

地元の人が食べる日常食を体験できるので、
観光客も多くなっているのです。

「ヘチマ定食」「中味いりちゃー定食」
「麩ちゃんぷる定食」「ゆし豆腐定食」
「やんばるそば定食」など。

その中でも、ちょっと異質なものが目に留まります。

「チキンナゲット定食」。

チキンナゲットとマカロニサラダ、
山盛りポテトフライ、ソーセージ、沖縄そば(小)、
ご飯がセットになっています。

これは、沖縄県民でさえ、驚くものです。

ナゲットでご飯を食べることが想像し難いからです。

しかし、これは沖縄県民の
食の好みを知っているからこそ、生まれたものです。

沖縄県民は、鶏肉好きです。

フライドチキンやチキンナゲットを
イベントの度に食べます。

生活に欠かせない料理になっているのです。

このお店では、ふと食べたくなった時に、
そこにあるメニューなのです。

長年に渡る営業で、地元の食を知り尽くし、
お客さまが欲する料理を揃えていった結果が、
80種類のメニューとなったのです。

このお店の一番人気は、ランチセット。
「Aランチ」「Bランチ」「Cランチ」があります。

たとえばAランチは、トンカツ、
ポーク(ランチョンミート)、玉子焼き、ウインナー、
ハム&チーズ、ポテトフライ、ハンバーグ、
マカロニサラダ、クリームスープ、ご飯。

とにかくボリュームがあり、1000円以下。

お腹一杯になる満足感が、人気の理由です。

他のメニューも、価格、味、ボリュームで驚かされます。

また、初めて来たお客さまは、戸惑うかもしれません。

たとえば、
「豆腐ちゃんぷる」というメニューを注文すると、
豆腐ちゃんぷるだけではなく、
沖縄そば(小)とご飯がついてくるのです。
すでに定食です。

しかし、
「豆腐ちゃんぷる定食」というメニューが別にあり、
こちらは、沖縄そば(小)とご飯に加えて、
まぐろの刺身がついてきます。

すべて、サービス精神なのです。

なので、料理を単品で頼むことは、ほぼ不可能なのです。

お腹一杯になることを覚悟しなければなりません。
嬉しいサービスではありますが。

最後にひとつ。

このお店は、
飲み物がセルフサービスになっているのですが、
水と麦茶の他に、レモンティーが用意されています。
つまり、飲み放題なのです。

これは嬉しいですよね。

このレモンティーは美味しいと評判になり、
紙パック飲料として、製品化されています。

一個人の大衆食堂の飲み物が市販されるのは珍しく、
それだけ地元民に愛されている証拠だと言えます。

本当に素晴らしいお店です。
食堂のお手本のようです。

お客さまを飽きさせず、お客さまのお腹を一杯にする。

これが、このお店の心なのではないでしょうか。

■兵庫のローカル即席麺が、石川で爆発的に売れている理由。

イトメンの「チャンポンめん」をご存知でしょうか。

タンメンのような味わいで、
海老と椎茸のダシが利いたインスタント塩味ラーメン。

兵庫を中心とする関西圏では、そこそこ知られており、
袋入りとカップ麺があります。

イトメンは、日本で2番目に
袋入りインスタントラーメンを
発売したメーカーなのですが、
関西以外ではあまり見掛けません。

ローカル即席麺と言っても良いでしょう。

しかも、知っている関西人の中でも、
日常的に食べているのは、
イトメンの本拠地「たつの市」周辺の人のみ。

まさに、ご当地グルメなのです。

全国展開を望んでいないわけではありません。

発売当初から、全国各地に営業マンを派遣し、
売り込みを行いました。

しかし、結果は……。

地方のメーカーだからなのか。
味の問題なのか。
営業マンの力不足なのか。

私もこのラーメンを知っていて、何度か食べましたが、
常備することはなく、スーパーの棚から
手に取ることもあまりありませんでした。

それは、見ために魅力を感じなかったからです。

サッポロ一番やチキンラーメン、
ワンタンメンと一緒に並んでいると、
どうもチープに見えて、食べたいとも思いませんでした。

間違いなく美味しい、他のものより美味しいという
認識があれば手に取るのですが、残念ながら、
そこまでの魅力はありませんでした。

マズいわけではありません。
素朴な味であっさりしていて、美味しいのです。

ただ、他のメーカーよりは落ちてしまいます。

しかし、長年に渡って生き残っているのですから、
商品力は高いと言えるのではないでしょうか。

最近であれば、昭和レトロがブームなので、
興味を持つ人は多いかもしれません。

チープさが、“可愛い”となるかも。

そんな少し残念なチャンポンめんですが、
兵庫以外の地で、圧倒的な地位を築いています。

石川県。

各家庭には必ずと言っても良いほど、
常備されています。

なぜ、石川なのでしょうか。

チャンポンめんは、昭和38年(1963年)に発売された、
イトメンの看板商品です。

50数年前の発売当初から、石川の人には好評だったので、
さらに営業に力を入れることで、
定着させることができたようです。

特殊な営業方法を取り入れたわけでもなく、
ただただ石川の人の口に合ったということです。

「ダシの利いたあっさり味」がウケたのです。

そして、発売当初から食べていた子どもが大人になって、
その子どもにも食べさせることで、
50数年人気を保つことができたのです。

「特に石川県で売れているのはなぜか?」
という疑問に対し、特別面白い事情があったという
答えを用意することはできませんでした。

しかし、不思議なことではあります。

口に合うというだけなら、
他の地域でも売れる可能性は高いのに、
販売すらされていません。

考えられるのは、発売当初の営業マンが
努力を怠ったのではないかということ。

石川県を担当した営業マンだけが、
成果を上げたのかもしれません。

昔のことなので、同じ営業マンが
他の地域もまわっていた可能性はありますが。

ならば、
これから営業に力を入れれば良いのかというと、
時代の違いが大きな壁になるかもしれません。

メーカーも増え、商品も増え、
競争の激しさが違います。

素朴な味であるチャンポンめんが、
受け入れられるのかどうか。

先に書いたように、「昭和レトロ」でアピールすれば、
面白がる人は出てくるかもしれません。

イトメンとしては、
全国展開を望んでいるのでしょうが、
現状維持で、濃いファンを守っていく道も
あるのではないでしょうか。

■ジャンキー肉で人を惹きつける、オフィス街の荒技食堂。

「ダブダブ、行こか!」。

大阪市瓦町界隈では、昼休みになると、
この言葉が聞こえてきます。

ある料理のことを指し、
それを食べに行こうという意味です。

レストラン「ニューハマヤ」。

ご飯がすすむ焼肉定食で有名なお店です。

その定食を目当てに、毎日行列ができています。

お客さまの注文の7割が、この「ダブダブ」です。

豚の焼肉定食で、肉が2盛りと
玉子(スクランブルエッグ)が2枚のっています。

肉がダブルで、玉子がダブルなので、
「ダブダブ」となっています。

他に、肉が3盛りと玉子1枚の「トリプル」、
肉が3盛りと玉子2枚の「トリダブ」、
玉子にイカが入った「ミックス」、
「日替り定食」などがあります。

焼肉はにんにく醤油味で濃いめ。

スクランブルエッグには塩が入って、
ややしょっぱめになっています。

この濃い味が食欲をそそり、ご飯がすすむのです。

かなりのガッツリ系。
なので、ご飯はグループでもひとりでも、
おひつに入ったものが運ばれてきます。

お茶碗に普通に盛って3杯分あり、
無くなれば、さらにお代わりもできます。

テーブルには福神漬けが置かれ、食べ放題。

赤と緑のタバスコとウスターソースも置かれ、
味変が楽しめます。

そして、赤だしの味噌汁も。

オフィス街の食堂にしては、
味もボリュームもガテン系寄り。

なのに、ホワイトカラーの行列ができるのは、
不思議です。

それほど美味しいということでしょうか。

そこには、ご飯をガツガツ食べたくなる、
味の秘密があるのです。

正直に書くと、味の評価は賛否あり。

絶賛する人が多いものの、
「濃過ぎる」「脂っぽい」「しょっぱい」
という人もちらほら。

強烈な味であることは間違いありません。

強い味は、人を惹きつけます。
濃いものは、ご飯がすすみます。
たくさん食べると、満足感があります。

これが、このお店の評価に繋がっているのです。

では、人を魅了する味の秘密はどこにあるのでしょうか。

それは、ほとんどの人が見ていないであろう、
焼肉の下準備にあります。

注文が入ると、あらかじめ焼いておいた肉を温め、
皿に盛るので、下準備を見ることはありません。

この下準備の光景を見ると、
食べることを躊躇する人がいるかもしれません。

大きな鉄板に最初にのせられるのは、
角切りにされた、大量の白い物体。

豚の脂のみを角切りにして、鉄板に敷き詰めるのです。

その上に、これまた大量の豚肉をのせていきます。
どうやって混ぜるのかというほどの量です。

平らな鉄板が山盛りになり、
まるでエアーズロック状態。

これを下から上へ、ゆっくりと混ぜていきます。

ある程度火が通ったら、
大量のおろしにんにくと醤油で味つけします。

大きな特徴は、やはり脂の角切りでしょうか。

豚の脂は甘く、肉をしっとりさせ、旨味にもなります。

この脂が人びとを惹きつけているのです。

ご主人曰く、「ジャンキー肉」。

確かにそうなのですが、
かなり魅力的なジャンキーだと言えます。

荒っぽい料理かもしれません。
上品とも言えません。

しかし、人びとは虜になり、「ダブダブ、行こか!」
という食文化を生み出したのです。

料理にはさまざまなジャンルがあり、
それを好む人もさまざま。

なので、優等生になることなく、
極端で弾けた味を作り出せば、
大人気店となることができるのです。

■おでんの老舗の名物に驚き! ご飯に豆腐をのせただけ?

創業大正12年。
東京・日本橋に、
東京おでんの老舗「お多幸本店」があります。

濃く甘めの出汁に浸ったおでんには、
古くからのファンが多く、
全国からお客さまが集まってきます。

かつお節と日高昆布をベースに、
継ぎ足し継ぎ足しを繰り返し、
美味しさを積み重ねています。

大根をはじめとする野菜や練り物、玉子が、
静かに煮込まれ、
ジワジワと出汁の旨味が染み込んでいきます。

このおでんの他に、串焼きや魚料理などが用意され、
全国の銘酒とともに楽しむことができます。

しかし、
おでん屋さんとして親しまれている存在なのですが、
あるメニューの方が目立っています。

おでんをメインにしているのですが、
時に、食堂のような光景を見掛けることがあります。

お客さまが、丼飯を掻き込んでいるのです。

お酒の締めとして食べる人もいれば、
この定食を目的にやって来る人もいます。

「とうめし」。

ご飯の上に、おでんの豆腐をのせたもの。
単品と定食があります。

これが、名物となっているのです。

話題になった時期もあり、真似して作る動画が、
ユーチューブにたくさんアップされていたことも。

お酒を飲みに来るのではなく、
「とうめし」を食べに来る人も多くいます。

白ご飯に豆腐がのっているのではなく、
茶飯の上に、味の染み込んだおでんの豆腐をのせ、
出汁をたっぷり掛けています。

トロトロに煮込まれた豆腐と茶飯を混ぜて食べると、
優しくもしっかりと舌にまとわりつく
味わいを感じることができます。

新しい食体験となるはずです。

かつては、
常連さんの要望に応えた裏メニューだったのですが、
あまりの人気で、表舞台に立つようになり、
いまやお店の代名詞とも言える存在となっています。

かなり庶民的な食べ物、食べ方ですが、
お客さまがもっとも欲するメニューなのです。

おでんの出汁と豆腐が美味しいからこそ、
生まれたものですが、
常連さんの“思いつき”がなければ、
この名物は存在していません。

これは、お客さまとのコミュニケーションが、
いかに重要かということを表しています。

軽い挨拶から始まって、世間話をするようになり、
やがて個人的なことまで話すようになると、
それはもう常連さんであり、お友だちです。

この繋がりができると、お客さまもお店に対して
遠慮なく要望を伝えることができるようになります。

お店としても、お客さまの望みを知ることができます。

「とうめし」は、そんな人間関係から生まれたのです。

料理人であれば、
ご飯に豆腐をのせるという発想は出てきません。

淡白な味どうしなので、合わないと考えてしまいます。

素人であるお客さまだからこそ、
面白い思いつきがあるのです。

しかし、料理に対して頑固な店主では、
受け入れてもらえません。

やわらかい頭で、サービス精神旺盛な店主だから、
新しいメニューは誕生し、
お店の名物へと育っていったのです。

お客さまを大切にし、お客さまの声を聞き、
できる限りお客さまの望みを叶えてあげることが、
お店の繁盛に繋がるのです。

■秘策で復活!? 閉店しても、味と雇用を守った中華料理店。

2022年4月。
大阪府箕面市に、
冷凍食品専門店「FROZEN Lab」が開店しました。

「薬膳麻婆豆腐」「薬膳お粥」「黄金だしちゃあはん」
「牡蠣塩とんこつらーめん」「濃厚とまとらーめん」
「生餃子」など、中華料理を中心とした品揃えです。

手軽さで流行となっている冷凍食品専門店であることと、
商品の美味しさが評判となり、
いま大きな注目を集めています。

実は、このお店に並んでいる商品は、
すべてオリジナルで、しかも製造ラインではなく、
普通の厨房で作られています。

料理人が、中華料理店と同じ作り方をしているのです。

たとえば、麻婆豆腐は大量に作ると味がブレるので、
3人前ずつ作っています。

スーパーに並ぶ冷凍食品とは、
まったく違う作り方なのですが、
なぜ、これほど手間を掛けた
作り方をしているのでしょうか。

それは、このお店が誕生した経緯に関係しています。

お店の商品に中華メニューが多いのは、
このお店の前身が中華料理店だからです。

1963年創業の老舗だったのですが、
コロナの影響を受け、
今年4月に閉店してしまったのです。

しかし、オーナーは、
すべてを終わりにするつもりはありませんでした。

先代から続く伝統の味と腕のある料理人たちの職場は、
何としても守りたいという思いがありました。

そこで目をつけたのが、冷凍食品事業です。

中食や内食はまだまだ伸びしろがあり、
伝統の味を守り続けることができるのではないか
と考えたのです。

さらに、その味を守ってきた料理人にも、
同じ仕事で働き続けてもらうことができます。

お店と同じ作り方をしながらも、
冷凍食品として販売できるのは、
現在の冷凍技術の進歩があるからです。

できた料理を熱々のまま真空パックにし、
マイナス30度の急速冷凍機に入れるだけなのです。

このような最新の機器が、
小さな事業所でも導入できるようになったのです。

これがあれば、飲食店は自慢の料理を冷凍食品として
販売できるようになるのです。

外食産業が落ち込んでいるいま、
たとえお店が無くなったとしても、
その味を残すことができます。

かなり勇気のいる決断ですが、
考えられない選択ではありません。

長年営業してきたお店を手放すのは辛いことです。

しかし、お客さまの減ったお店を維持することは、
もっと辛いのではないでしょうか。

もちろん、営業を続けながら、
冷凍食品を手掛けることもできます。

お店の置かれた状況によって、選ぶ道は違ってきます。

冷凍食品事業という選択肢があることを知れば、
これから歩く道を
明るく照らしてくれるのではないでしょうか。

#創作大賞2024

この記事が参加している募集

マーケティングの仕事

仕事について話そう

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

よろしければサポートをお願いします!頂いたサポートは、取材活動に使わせていただきます。