#ショートストーリー
【観察記録】 カトチャン
キューティクルの光る栗色の髪の毛。
スマホを触る細長い指には、ラメ入りのピンクのネイルが施されている。
肩から垂れている白いブラ紐。
大きい背中。
「こちらの席です」という声に誘われて、オペレーションが大変そうな小上がりになった半個室の部屋に通される。彼女は振り返った。サラサラした髪が揺れ、花のような香りが漂う。目が合うと、カトチャンはニッタリと目を三日月形にした。
「久しぶり」
【観察記録】サリサワ・ワイ2
「やっぱり人とは違うって思われたいじゃん?」
サリサワ・ワイは、久しぶりにお酒を飲んでいた。
顔色を変えずに、次から次に、お酒を頼む。
サイコロを二つ振って、出た目によってグラスのサイズが変わるという、チンチロリンなんとかを何度も楽しんだ。
メガサイズのジョッキに注がれた大量のお酒が、サリサワ・ワイの胃袋に流れていく。
「別に目立ちたいワケじゃないんだけど。やっぱりアイツは凄いって思われ
【観察記録】 サリサワ・ワイ
サリサワ・ワイは、いつも笑っている。
大きな目を見開いて、口を左右に広げて笑う。背が高く、手足も長い。
なにより愛嬌があるのは、彼女の母親が外国人だということが影響しているのかもしれない。年齢も性別も関係なしに交友するせいか、サリサワ・ワイはいつもクラスの中心にいた。当然、影では嫉妬をかうことも多かったようだ。
歯並びは整っていても、口元が少し出っぱっているというだけで、友達からは「ゴリラ
【観察記録】 ミキカムラさん
「よーい、はじめ!」
一斉に部屋の中にタイピングする音が響く。
カチャカチャと叩かれるキーボード。
日頃のストレスをぶつけるかのように強く板を叩く人、撫でるように滑らかにタイプする人。音を聴いているだけでも、その人の性格が現れる。
ミキカムラは、この音が好きだった。
心が鎮まり、人と一緒にいることを実感できるからだ。
少しだけ周りの音に耳を澄ませてから、ミキカムラはモニターに目を移した