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【観察記録】 サリサワ・ワイ


 サリサワ・ワイは、いつも笑っている。
 大きな目を見開いて、口を左右に広げて笑う。背が高く、手足も長い。
 なにより愛嬌があるのは、彼女の母親が外国人だということが影響しているのかもしれない。年齢も性別も関係なしに交友するせいか、サリサワ・ワイはいつもクラスの中心にいた。当然、影では嫉妬をかうことも多かったようだ。
 歯並びは整っていても、口元が少し出っぱっているというだけで、友達からは「ゴリラ」や「猿」なんて言葉を言われることも多く、「調子乗ってる」「日本人じゃないくせに」「ぶりっ子してる」という謂れのない言葉の暴力を浴びせられることもしばしば。
 子どもは残酷なもので、人のコンプレックスというものを平気で突いてくる。内面をイジられるる分には気にならなかったが、「ハーフ」だとか「ゴリラ」など、持って生まれた資質を罵られることはツラそうだった。
 しかし、サリサワ・ワイは持ち前の明るさで、決して塞ぎ込むようなことはなかった。むしろ、自ら生徒会長に立候補するなど、存在感をさらに発揮していた。
 学生時代の経験から、サリサワ・ワイは「出る杭は打たれる」という言葉を胸に刻み込んだらしい。同時に「出過ぎた杭は打たれない」とも。
 いつしか、彼女の心には「誰もが羨むビックな人になる」という想いが生まれた。

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