マガジンのカバー画像

小説

11
僕が書いた小説です。
運営しているクリエイター

#試し読み

波を数える(短編小説試し読み版)

波を数える(短編小説試し読み版)

それはハイライトブルーのような夏だった。
その夏は僕に「薄い」という印象を思わせた。
そしてそれがどういったことなのか考えるにはあまりに暑かった。
僕はアパートに空調器具を持ち合わせていなかった。金銭もなかったし、その類の作り出す独特で近代的な空気が苦手だった。
僕は部屋中の窓を開けて、汗を吹き出させながらひたすらハイライトを吸い、十代の内に浴びるように読んだ文庫本を読み返した。昼は大抵蕎麦を茹で

もっとみる