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■子ども虐待の基礎知識(公式統計+関連法) 『子ども虐待防止策イベント in 東京 2022』より

こんにちは、ライターの今一生です。

親から虐待された100人の手記集『日本一醜い親への手紙』などの本を作ってます。

【施設や職員を増やせば、虐待相談が増えるだけ】

まず、全国の児童相談所に寄せられた子ども虐待の相談件数は、調査を始めた1990年からの31年間で200倍以上に増え続けました。

政府は、31年もの長い間、虐待の相談件数を一度も減らせず、増やす一方。

その主な理由は、三つです。

一つは、児童相談所や一時保護所などのハコモノや職員を増やしてきたこと

二つめは、虐待通告ダイヤル189の普及ばかりに多額の税金を投資してきたこと

三つめは、そもそも親に子どもを虐待させない仕組みは作ってこなかったこと

新たに施設や職員を増やせば、増やした分だけ相談窓口が増えます。このままでは、虐待はなくなりません。

消防士を増やせば、火事が減りますか? 減るわけない。それと同じです。

相談件数が増え続け、いつまでも頭打ちしない点に着目すると、実態は相談件数よりはるかに多いと推測されます。
相談件数の20万件の10倍か、100倍か、誰にもわかりません。

もっとも、虐待されている子を保護できても、その子の悲劇は続きます。一時保護所からは、多くの子どもが児童養護施設に行き、それ以外は里親などの家や施設で暮らし始めます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf

 保護者のない児童、被虐待児など、家庭環境上、養護を必要とする児童などに対し、公的な責任として社会的養護を行う対象の児童は、全国で1年間に約4万2千人もいます。

しかし、施設の職員や里親などに預けられた先で、虐待される子がいるのです。

厚労省のホームページにある、児童養護施設での事例の一部を紹介します。

・職員が複数回、児童を自宅に誘い、性交渉を行った

・児童と性的な関係を持ち、服を着ていない写真をデジカメ等で撮影

・職員と児童が性的な関係を持つようになり、ラブホテルや職員が住んでいる部屋、児童の居室で複数回、性行為を行った

こうした施設内虐待は、「被措置児童等虐待」と呼ばれていて、実は年々増えています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf

実は、子どもが大人に虐待される割合は、児童養護施設でも、里親でも、一般家庭でも、さほど変わらないのです。

それどころか、児童養護施設に移送されば、大学進学にとってハンデになります。

今日では、高校生の過半数が大学へ進学しています。

でも、児童養護施設に送られると、受験勉強のためのお金や入学金、学費を調達できるチャンスが乏しいので、約18%しか進学できていません。

親に虐待されたのは自分のせいではないのに、保護されて施設で暮らせば、理不尽に将来の希望を奪われてしまうんです。

だから、その絶望に耐えきれず、施設から脱走する子どももいます。

保護された先でも虐待される恐れがあり、大学進学の夢も断たれるなら、子どもを保護するより、虐待した親を家の外に出す方が、子どもの生存権と進路選択の自由を守れるとは思いませんか?

【虐待通報から、親権事件になるのは超レアケース】

 

また、「虐待通報ダイヤル189に電話すれば、子どもは必ず保護される」という勘違いをしている人も多いです。

 2020年度に全国の児相へ寄せられた虐待の相談件数は、20万5044件。

そのうち一時保護された件数は、2万7390件。
保護されたのは、相談件数全体の約13%。
児相に相談をしても、85%以上は保護されていないんです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000987725.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf

もちろん、児相に保護されなくても、親権停止や親権喪失を家庭裁判所に認められれば、子どもは虐待する親に従わなくてもよくなります。

でも、親権制限事件全体でも、令和2年(2020年)度は全国で年間390件。同年度に一時保護された件数は、2万7390件。390件÷2万7390件=0.014…(約1・4%) 

児相に保護されても、危険な親から離れられるチャンスは、約1・4%だけ。

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2022/20220415zigyakugaikyou_r3.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf

 なぜでしょう?
親権停止や親権喪失を家裁に請求する権利は、子ども本人にもあります。

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file5/kodomo240313.pdf

しかし、この子どもの権利を教える義務が、学校にも児相にもないのです。これは、権利を教えることを義務化する法律を求めなかった有権者の僕ら大人が悪いんです。

子どもは、虐待の被害に関して賠償請求をする民事裁判を求める権利さえ持っています。
なのに、同居中の虐待親を訴えるなんて、怖くてできません。
子どもが親を訴えやすくする法整備も、進んでいないんです。

しかも、子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたり、子どもの世話を放棄するのは親権の濫用であり、親権の濫用こそが虐待であることも、教えられていません。
その結果、虐待の被害に遭った子ども自身が通報したケースは、通報件数全体の1%程度。 

子どもにとっては、勇気をふり絞って誰かに相談しないと、救われない。
そんな残酷な仕組みが、児童虐待防止法なんです。
そんな仕組みを作った有識者会議メンバーを、僕は「痛みを知らない専門バカ」と言いたいです。

もっとも、僕ら有権者の大人の多くは、「たとえば自分が父親にレイプされている子どもだったら」という想像すらせず、児童虐待防止法が虐待されている子どもにとって救われにくいことに関心を持たないままでした。

虐待防止策を子どもにとって有効なものに変えるなら、真っ先に僕ら自身の無関心ぶりを反省しなければ、こどもファーストという言葉もむなしく響くだけでしょう。

そして、そろそろ、「さんざん虐待された子どものほんの一部しか保護しない」という方針ではなく、「そもそも親に子どもが虐待されない仕組みを作る」方針へ転換する頃合いでしょうか?

【虐待は、親権の濫用によっておこる】

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