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お金以外の見返り
社会人になると、何かにつけて”お金”というものがついてまわってくる。
今の世の中を見ると、
お金になることはやる。
お金にならないことはやらない。
といった判断を下しがちではないかなと思う。
わかりやすい例で言うと、
・自己投資のために読書をする。
・セミナーに行く。
・語学を勉強する。
こんな感じの行動をとりがちだと思う。
もちろん、これらの行動を否定するつもりは全くない。
僕が懸念したいのは以下のようなこと。
・自分の成長だけに目がいって、視野が狭くなっていないか?
・お金中心に物事を考えていないか?
・そのほかの大切なことを忘れていないか?
ということ。
最近、高野和明さんの『ジェノサイド』という小説を読んだ。
本書の中で、”見返り”について印象的な場面があったので、引用したいと思う。
※以下、ネタバレを含みます。
アメリカ大統領・バーンズと、政務官・ルーベンスとのやりとり。
前提として、
バーンズは地位・名声・金に対して貪欲なキャラ、
ルーベンスはそれに対して懐疑的なキャラである。
まず、バーンズが、架空の話として質問をする。
「ここに一人の科学者がいます。彼は徹底した身辺調査をクリアして政府の要職に就きました。年齢は六十代、温厚な人柄と輝かしい実績で、誰からも尊敬されている人物です。暮らしぶりは地位に見合わず質素だし、過度な名誉欲も金銭欲もなく、何よりも家族を大切にする模範的な市民です。
ところがそんな彼が、なぜか国家に対して背信行為を働いた。金品で釣られたのではなく、ましてやプライベートの秘め事を嗅ぎつけられて脅迫されたのでもない。
どうしてなんでしょうね?彼は何のために、そのような危険を冒したんでしょう?」
それに対し、ルーベンスはこう答える。
「破格の見返りがあったんでしょうな」
対するバーンズ。
「しかし当局の調べでは、彼の財産は一セントも増えていないんですよ。
ほかの利益供与、例えば美食、美酒、異性であるとか、あるいは特権的な地位といったものも与えられていない。彼が国を売ることによって得た利益は何もないんです」
これに対する、ルーベンスの返しに僕は興奮した。
「大統領閣下、あなたは科学者という人種を知らないようですね。我々は特別に強欲な人間なんですよ」
と前置きし、
「我々の本能的な欲望とは、知的欲求です。その強さたるや、普通の人々にとっての食欲や性欲と同じか、それ以上です。我々は、生まれながらにして知ることを欲しているんです」
見返りは、地位や名声、金や食べ物、異性だけではない。
知的な欲求を満たされること自体が破格の見返りだと言い切る姿に、鳥肌が立った。
・なぜ業務に関係ない本を読むのか?
・なぜ小説を読むのか?
・なぜお金にならないような行動を取るのか?
知的欲求以外にも、
・何となく気分が良くなるから
・ただ純粋に面白いから
・そういう伝統があるから
など、さまざまな理由があると思う。
物事を判断する視野は、狭くならないようにしたいと思う。
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