マガジンのカバー画像

抗菌薬適正使用

17
運営しているクリエイター

記事一覧

黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?

黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?

読者の皆様こんちには~

お元気でお過ごしのことと思いますが、私共公立昭和病院感染症科・感染管理部一同は、相も変わらずCOVID-19関連の対応で忙しい日々を送っております。

本日は、気分転換に黄色ブドウ球菌MSSA・MRSAが血液培養から検出されたらどうするか?についてお話させていただきます。

まあ概要は、↑のスライドにお示しした通りです。記載チェックリストを一つずつ確認いただければ大きな問

もっとみる
MIC?の数値から抗菌薬の有効性の判断・投与設計へ~最適治療抗菌薬の選び方④

MIC?の数値から抗菌薬の有効性の判断・投与設計へ~最適治療抗菌薬の選び方④

本日は、最適な抗菌薬選択に関するお話の続きです。

患者さんの検体を細菌検査に提出し、特定の菌種が原因菌(症例由来菌株)が培養される。

培養された原因菌(症例由来菌株)に対して、抗菌薬感受性検査を実施する。

原因菌(症例由来菌株)の特定の薬剤に対する最小発育阻止濃度っぽいもの(いわゆるMICっぽい数値ここでは”MIC?”で表現します)が得られます。

ここまでのMICの数値の意味合いについては

もっとみる
感受性検査結果から抗菌薬耐性機序を予想する~最適治療抗菌薬の選び方③

感受性検査結果から抗菌薬耐性機序を予想する~最適治療抗菌薬の選び方③

最適治療抗菌薬選択に必要な、感受性試験結果の解釈の仕方のお話を続けてまいります。

今回は、薬剤感受性の判定
 S:susceptible
 I:intermediate
 R:resistant

の結果から、薬剤耐性機序を予想する、抗菌薬選択に大変重要な内容となります。

予めお伝えしておきますが、感受性の判定”S"、”I"、”R"から薬剤耐性機序を予想するため、正確な薬剤耐性機序がわかるわけ

もっとみる
感染症治療薬選択は微生物学的診断が重要~最適治療抗菌薬の選び方~その②

感染症治療薬選択は微生物学的診断が重要~最適治療抗菌薬の選び方~その②

寒い日々が続きますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか?

本日は、最適な感染症治療薬・抗菌薬の選び方の続きをお話しいたします。

適切な感染症診療の基本となるのは、「2つの感染症診断」を可能な限り正しく診断することでした。

2つの感染症診断
・臓器・解剖学的診断
・微生物学的診断

参考:2つの感染症診断≒正しい問題認識
https://note.com/idshowa/n/n7b222

もっとみる
MIC?(最小発育阻止濃度)の”ような”数値の解釈~あなたはわかりますか?

MIC?(最小発育阻止濃度)の”ような”数値の解釈~あなたはわかりますか?

本日は、菌種同定検査結果に記載がある「薬剤感受性MIC?」のような数字の解釈のお話しです。

冒頭のスライドをご参照ください。

右上に菌種:大腸菌 Escherichia coli

左側に、番号、薬剤名(略号)、MIC?数値が記載されております。

それでは、モンダイ!

一番MICの小さい薬剤はどれですか?回答者「そんなのカンタンじゃん!」

簡単ですか・・・では答えは?

回答者「7 ME

もっとみる
抗菌薬感受性結果を臨床判断に活かす方法~最適治療抗菌薬の選び方①

抗菌薬感受性結果を臨床判断に活かす方法~最適治療抗菌薬の選び方①

本日は、細菌検査結果が判明した後の「最適治療抗菌薬」選択のための導入のお話です。

抗菌薬は「2度決定」するのでしたね。
参考:正しい診断なくして適切な治療なし

https://note.com/idshowa/n/nba77ccf8479b

1度目抗菌薬決定:初期治療抗菌薬
2度目抗菌薬決定:最適治療抗菌薬
(初期治療抗菌薬と最適治療抗菌薬が同一の場合もあり得る)

初期治療抗菌薬は、2つの

もっとみる
耐性菌を”ゼロ”にする魔法

耐性菌を”ゼロ”にする魔法

本日は、薬剤耐性菌のお話です。

本ノートの主要なテーマの1つが薬剤耐性AMR問題です。

世の中で「薬剤耐性AMR」の話題が結構頻繁に出てくるようになったことは、筆者は内心ちょっと嬉しくもあります。

それは、人々の興味・関心が薬剤耐性AMR問題に向かっていることの証でもあるからです。

時に、薬剤耐性AMR問題への関心がさらに高まる場合があります。

それが、薬剤耐性菌が〇〇病院から多数検出さ

もっとみる
薬剤耐性菌~自然耐性と獲得耐性

薬剤耐性菌~自然耐性と獲得耐性

ある細菌が、特定の抗菌薬が効かない≒「薬剤耐性」と考える場合には、その薬剤耐性機序が「自然耐性」であるのか?それとも「獲得耐性」であるのか?の判断が大変重要です。

薬剤耐性菌について検討・議論する場合には、この2つの薬剤耐性機序のどちらについてなのか?を明確にしましょう。

薬剤耐性機序~2つの薬剤耐性機序

薬剤耐性機序~2つの薬剤耐性機序

薬剤体制(AMR)問題が、公立昭和病院 感染症科・感染管理部ノートの重要テーマの1つです。

薬剤耐性AMR、特に「細菌の薬剤耐性」≒「耐性菌」を考える上で重要なのが、薬剤耐性機序の考え方です。

「自然耐性」と「獲得耐性」~違いが説明できますか?

抗菌薬治療期間~どうやって決めてるの?

抗菌薬治療期間~どうやって決めてるの?

モンダイ:抗菌薬治療期間はどうやって決めるのか?

本日は、細菌感染症の治療の際、どのようにして抗菌薬治療期間を決めているのか?のお話しです。

読者の皆様が、細菌感染症になり、医師が抗菌薬が必要な細菌感染症と判断した時、果たしてどのように抗菌薬治療期間・日数を決定しているのでしょうか?

抗菌薬治療期間~決めるために最も重要なものは?

そうです!

正しい診断なくして適切な治療なし~

でした

もっとみる
感染症診療における「三方よし」

感染症診療における「三方よし」

モンダイ:次の「患者」と「医師」の会話の中のマチガイを探してください

患者:カゼ引いたので早く良くなるように「抗生物質(抗菌薬)ください!」

医師:でも、「カゼ」に『抗生物質(抗菌薬)』は必要無いんですよ」

患者:この前のカゼの時にもらった、あの抗生物質(抗菌薬)『〇〇キサシン』よく効きましたよ

医師:(心の声:まあこの患者さん抗生物質(抗菌薬)出さないと、満足してくれなさそうだな・・・)

もっとみる
コラテラル・ダメージを最小化するためにはどうするか?

コラテラル・ダメージを最小化するためにはどうするか?

本日は、手短にコラテラル・ダメージへの対応方法をお話しいたします。

まず、復習~「コラテラル・ダメージ」とは?

「ヒトに抗菌薬を投与することにより、抗菌薬が目的とする病原菌以外の正常細菌叢を攻撃し、正常細菌叢を殺菌・減少させてしまうこと」でした。

このコラテラル・ダメージは、程度の差はあるものの、すべての抗菌薬によって生じると考えられます。

それでは、コラテラル・ダメージを最小化するために

もっとみる
最適な抗菌薬の選び方

最適な抗菌薬の選び方

本日は、抗菌薬適正使用の具体的な方法についてお話いたします。

まず前提として、2つの感染症診断
 ・臓器・解剖学的診断
 ・微生物学的診断
この2つの診断が適切であることが、感染症診断が適切であることが、感染症治療を適正なものとするのに必要でした。

そして、微生物学的診断(予想・推定もしくは特定されたもの)が「細菌」の場合に、感染症治療薬(抗微生物薬)として「抗菌薬」が登場いたします。

もし

もっとみる
正しい診断なくして適切な治療なし

正しい診断なくして適切な治療なし

感染症診療~診断から治療まで~大変重要な「感染症診療の基本的な考え方」の概要をまとめます

まず、目の前の患者さんの「2つの感染症診断」を追求
 ・臓器・解剖学的診断:患者さんのカラダのどこ?にモンダイがあるのか?
 ・微生物学的診断:患者さんにモンダイを起こしている原因は?

感染症診断は、「予想・推定」⇒「確定」へと至ります。
 ・時間経過とともに判明してくる検査結果や患者さんの病状の変化によ

もっとみる