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(ポスト「論語」)「戦争論」に記されている、その人の精神的素養①

 何年か前に「孫子」が、特にビジネスや組織運営といったテーマで流行りましたよね。当時高校生だった私でも、解説書を手にとって読むくらいには広く浸透していたのではないかと思われます。
 「孫子の兵法」などとも呼ばれているように、元は純粋に軍事的な参考書として記されたわけですが、そこから現代においても通用するような分野をピックアップしている訳です。確かに、軍隊は消耗されることを前提とし、最も厳しい状況にさらされる組織であるので、いかなる組織よりも、指導者の精神的素質と規律による統一が求められます。学ぶことで得られるものは大きいと思います。

 ところで、一般的には「孫子」ほど著名ではありませんが、クラウゼヴィッツという、プロイセン(ドイツの母体となった国)の軍人が記した「戦争論」という書物があります。
 それぞれ異なる長所をもっているので必要性があるかはわかりませんが、あえて「孫子」と「戦争論」を比較させるなら、「戦争論」は「戦争の勝利するための方法論」ではなく「戦争とは何か」という性質や定義など抽象的、観念論的な理解に重点を置いています。
 記されてから200年近く経過しているため、古典的な扱いではありますが、近代以降の戦争に決定的ともいえる影響をもたらした大作です。一部の内容については現代においても尚十分に通用するであろう論理と説得力を持った書籍であると、私は全体を読んで確信するに至り、こうやって文章として発信することで多くの人にその魅力が伝われば幸いです。

 
 今回まとめるのは、3冊構成のうち1巻目、第一篇、第三章の「軍事的天才」の項です。文章が長くなるので何度か分けての投稿になります。解説が長くなってしまったので、実際の内容の解説は次回以降が中心になります。
 見出しは「軍事的天才」とありますが、実際には戦闘において発揮される指導力(リーダーシップ)の素質について、筆者の経験をもとに解説、分類している項になります。
 
 言うまでもなく戦争は危険を本領としており、軍人に求められる特性の第一は勇気です。筆者は勇気は大きく2種類に分類されるとしています。一つは「個人的な危機を無視する勇気」です。一般向けに言い換えれば「失敗によって自分に降りかかるリスクを無視する勇気」でしょうか。もう一つは自分自身の行動に対して責任を取る勇気です。
 最初に上げた、「個人的な危機を無視する勇気」について、筆者はさらに①リスクに対して泰然としている勇気、②名誉心などの積極的動機から生じる勇気の2種類に分けることができるとしています。生来の素質や習慣によるところが大きい分、①の方が②よりも確実であるといえますが、②の方はより大きな力となって発揮されることがあります。但し勢いに乗じて行き過ぎることがあることは注意せねばなりません。
 知性については、①の場合は常に冷静ですが、②の場合は時に昏迷してしまうこともあります。よって、①と②をバランスよく有している場合が、最良と言える勇気になります。

 



 


 



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