見出し画像

"今すぐやせた身体"を手に入れるより"一生太りにくい身体"にーー甘いもの依存卒業推進プロジェクト#002

<甘いもの依存卒業推進プロジェクト>の第2弾。
甘いもの依存卒業推進プロジェクトでは、私自身の経験や様々な学術分野から「甘いもの依存のしくみ」にアプローチし、甘いもの依存卒業のヒントをお伝えしています。

前回は、管理栄養士 豊永彩子さんの著書『整う食事』をピックアップしました。

今回は、『整う食事』著者の豊永彩子さんをゲストにお招きして、お話をうかがいます。

豊永彩子 Ayako Toyonaga
米国NTI認定栄養コンサルタント。
管理栄養士としての10年以上のキャリアを通し、個別カウンセリング、セミナーなどこれまでに1000名以上の女性のサポートを行う。働く女性の実体調査・研究に携わりながら、個別カウンセリングやセミナー、オンラインサロン運営も手がける。自身の大幅な体質改善をきっかけに、食習慣は根底にあるその人の「体質」はもちろん「思考や性格」が影響していることに気づき、ホリスティック栄養学・食行動学理論・思考と脳のメカニズムなどの必要性を痛感。日々頑張る女性が自身の可能性を引き出し、輝くためのノウハウとして「スモールステップ食習慣」を考案。過度なダイエットやストイックな食生活を手放し、生涯食生活を楽しみ大切な人を守れるスキルを身につけられるよう食・栄養・身体のメカニズムなど幅広い視点での提案や指導を行う。フリーの管理栄養士として2018年より本格的に活動を開始。現在はNHKあさイチ、Tarzan、日本経済新聞等、多数のメディアにも出演・掲載され、健康関連商品のプロデュースや企業向けセミナー・栄養指導研修など活動の幅は多岐に渡る。

豊永彩子『整う食事』 p.248

今回、豊永彩子さんにお聞きするのは、『整う食事』のなかでも出てきた「たんぱく質リッチ」です。
「たんぱく質リッチ」という言葉には、たんぱく質を積極的にとりましょうというメッセージが込められていると思うのです。
豊永彩子さんは、なぜたんぱく質を摂取することを勧めているのか。その理由は、栄養素をエネルギーとして活用するための体のメカニズムにあります。って、NHKあさイチのVTRでナレーターの方が言っていました(あのVTRは、制作スタッフの方の鮮やかな切り回しがめちゃくちゃかっこよかった!)。

体のメカニズムとしてたんぱく質が必要なんだったら、甘いもの依存卒業にだってたんぱく質は必要なはず!私自身の甘いもの依存卒業の経験からも、たんぱく質をとることは重要だと感じています。

甘いもの依存卒業に「たんぱく質」が必要な理由

「甘いもの依存」と「たんぱく質」ってどんな関係があるの?
その答えは『整う食事』(p.158)に、既に書いてあるんだけれども!せっかく著者の豊永彩子さんに直接おうかがいできる機会なので質問してみました。

――たんぱく質食材をとると、甘いものに執着しなくなる理由を教えてください。

豊永彩子:
単刀直入に言えば、たんぱく質食材をとることは、いろんな栄養素をしっかりチャージするってことにつながるからです。
甘いもの依存になっちゃうのって、「意志が弱いんじゃないか」とか、「私ってダメなんじゃないか」っていうイメージがあると思うんです。でもそうじゃなくて、カラダ自体が必要な栄養素をとれてないから、依存するほどに甘いものを欲するという状態なのです。

なので、たんぱく質食材というハイスペックな食材をとることで足りないものをちゃんと補って、必要な栄養素が満たされることによって、甘いものへの執着がだんだん抜けていく。これが一番シンプルな説明です。

たんぱく質食材は何でもそろう”大型スーパーマーケット”

――「たんぱく質食材は栄養が豊富」というのは、どういうことですか?

豊永彩子:
ここ数年で「たんぱく質」が注目されてきて、体を鍛えるためにたんぱく質をとるとか、プロテインの粉末を飲んだりとかが当たり前になってきました。
たんぱく質食材を食べると、自分の体に必要なたんぱく質を補えるというのは、皆さんわかってると思うんですね。たんぱく質をとって筋肉がついたりするとかって。
でも、たんぱく質食材ではたんぱく質以外の栄養素、たとえばミネラルとかも補えるんです。
たんぱく質食材=お肉・お魚・卵・お豆腐などを食べると、それ以外の栄養素、たとえばビタミンもあるしミネラルもあるし、もちろんエネルギーも入っている。
いろんな種類の栄養素が凝縮されてるので、「ハイスペック食材」って私はよく言うんです。
だから、たんぱく質食材を食べると、甘いもの依存が起こってしまう原因の"不足している栄養素"が補える。これが、甘いもの依存卒業にたんぱく質食材が必要となるフレームになります。

――私は「たんぱく質」と「たんぱく質食材」という言葉をあまり区別して使っていなかったけれど、この2つの言葉が指しているものってちょっと違うんですよね。今のお話は「たんぱく質食材をとる」話として理解していいですか?

豊永彩子:
そうそう。そうです。
最近はSNSとかに「たんぱく質」ってキーワードが当たり前に出回ってるけど、「たんぱく質」は栄養素の名前で、ビタミンとかミネラルとかが栄養素の名前っていうのと同じ。
「たんぱく質食材」っていうのは、たんぱく質を効率的に補える食材=お肉・お魚・卵とかを指しています。

――「効率的に補える」っていうのは、食べたものの栄養素がちゃんと体の中で働いてくれるって言い換えても大丈夫ですか?

豊永彩子:
うーん、、体の中で働いてくれるのとはちょっと違う。なんだろうな。いわゆる、大型スーパーマーケットみたいな感じ。

――大型スーパーマーケット?

豊永彩子:
たとえば、八百屋さんに行ったらだいたい野菜しか買えない。でも大型スーパーマーケットに行けば、野菜もあるし肉も魚も乳製品もあれば、乾物もあったり、洗剤があったりして、とりあえずここ行けばいろいろ揃う、ということです。
つまり、とりあえずたんぱく質食材をとれば、ただご飯(主食)を食べるだけ、あるいはただ野菜を食べるだけとかよりも、いろんな栄養素を補える。なぜなら、たんぱく質食材を食べればたんぱく質もとれるし、ビタミンもミネラルも入ってる、というようなことです。

――バランスがいいとは言えないかもしれないけれど、、あ、だからたんぱく質食材は「効率がいい」って言葉になるんですね。

豊永彩子:
そうですね。お買い物に例えると、「とりあえずここに行けばいろいろ買えるぞ」みたいな存在です。
その点が、たんぱく質をとると甘いものへの執着がなくなる主な理由ですね。

――私は今それを自分の体で実感していて、「あ、そっか、栄養素で足りてない部分があったけど、たんぱく質食材でちゃんと補ってあげたから執着しなくなったんだな」と。

食欲は体からのサイン

豊永彩子:
いつもより食べ過ぎちゃうとか、いつもの量じゃ満たされないっていう時に、「やばい!」って反射的に思っちゃったりしますよね。それって、どうしてだと思いますか?

――私の場合、食べても満足できない時って、仕事とか人間関係とかの悩みやモンモンとした感じが強い時。だから、そういう課題にちゃんと向き合わなきゃいけない時だっていうサインだなって思います。

豊永彩子:
うんうん。そうですね。
それはね、しほさんが今まで私のいろんなレッスンとかカウンセリングを受けてるから、の回答だと思うんだけど。

――そうです。3年前はこんな回答はしてなかった!(笑)

豊永彩子:
いつもの量じゃ満たされない時とか、いつもよりも食べたくなっちゃう時に「やばい!」と思っちゃう理由は何かというと、きっと今これを読んでる皆さんは、「食欲が増えてる=このまま欲求に従って食べたら太る」とか「このまま食べたらやせられない」とか思ってるから。

――そうだった!私もそう思ってた!

豊永彩子:
でも、違うんですよ。
食欲って、カラダとかココロからの「何かが足りない」っていうサインなんですよね。

だから、たとえば昼ご飯の時にすごい食欲が出たって時は「あれ?朝ごはんちゃんと食べたっけ?」とか、食欲を体からのサインとしてキャッチして自分のことをふり返って欲しい。「食欲が出ちゃう=ダメ」みたいな方程式はちょっと横に置いて、そういう内観をして欲しいわけですよ。

――でもねぇ、「食べちゃダメ」って思ってる時ってそんなこと考えられないんですよねぇ。

豊永彩子:
「食べちゃダメ」って思わせちゃう洗脳なのよ。世の中の洗脳。だからちょっとね、危ないなと思うわけですよ。ま、私も「食べちゃダメ」って思いこんでいた実体験を散々しているんだけれども。

――私は『整う食事』のなかでも、そのことをお話されているところがすごく好きです。巷では、ダイエットを成功させたり健康になるためには、我慢をしなきゃいけない、いろんな制限をしなきゃいけないってことが前提になっていて、その感じが私はすごく苦しかった。そういう風に制限ばっかりする食生活だと、彩子先生もどこかでおっしゃっていたけれど、「一生この食生活をするつもりなの?」っていう(笑)

豊永彩子:
「いつまでやるの?」って感じでしょ?
でも過去の私も、栄養学を学んでいる学生だったにも関わらず、ダイエットしたりする時に「これいつまでやるんだろう」ってくらいダイエットのことばっかり考えてたし。食事をする時も、ごはんを食べてるっていうよりも栄養素を食べてるみたいな時期があったから。

――あぁ、わかります。

豊永彩子:
だから、本当にね、制限しながら食べている時の気持ちがわかるんですよ。もうすごいわかる。

――栄養素とか食材とか、これくらい食べなきゃダメ、これ以上食べちゃダメっていうのをキリキリやってても満たされないし体も変わらなくて、全然よくならなかった。っていうのがあったから、『整う食事』に凝縮されているメソッド、自分で考えて判断して食べるっていう方針が前面に出ている考え方にすごく救われました。

豊永彩子:
私はダイエットのカウンセリングを集中的にやってた時期があるんですけれど、そこに来る人たちも同じこと言うんですよね。私のカウンセリングに来るまでに、"結果にコミットする"ダイエットをして、いろんなものを制限する食事をしてきてて。
確かに数字的な結果とかは出てるんだけど、「いつまで続けたらいいんだろう」とか、「もうこのやり方は続けられない」とか、「女性として大丈夫なのかな」っていう不安を覚えてらして。「生理が、、」とか「肌が、、」とか、自分が食べるものを制限をしているから「家族と一緒の食事をとれない」とか。
それで、このまままじゃまずいって思ってるんだけど、「食べ過ぎちゃダメ」って頭でっかちになっちゃってるから、もう自分じゃどうしようもなくなって「これ以上何をどうしたらいいの?」みたいな方たちが「助けて!」って、駆け込み寺みたいにしてカウンセリングに来てた人がたくさんいたんです。

――その気持ち、めっちゃわかります!

豊永彩子:
その時に、私がダイエットで苦しんでいた頃に感じていたことっていうのは、私だけじゃなかったんだって。同じように苦しんでる人がこんなにたくさんいるんだっていうのを、改めてひしひしと感じて。
そういう人たちの顔って、疲れ切ってたり血色が悪かったり肌ボロボロだったり。「体重が減りました」って言うけど、体脂肪は一切減ってなかった人もいたりして。ちょっとこれはおそろしいなって思ったのを、今でも忘れないです。

――私はたんぱく質リッチっていうのがけっこう衝撃だったんです。

豊永彩子:
どの部分が?

――私はずっとカロリーを計算してダイエットしてたから。

豊永彩子:
うん。わかるわかる。

――カロリーの数値を考えると、動物性のたんぱく質食材はあんまり食べたくないなぁって思う食材だったんですよね。

豊永彩子:
なるほどね。

――野菜はカロリーが少ないからどれだけでも食べられるって思ってダイエットしてたけど、きっとバランスを崩してたんだろうなぁと思う(実際ド派手にリバウンドした)。その時は一生懸命やってたし、満足してたと思うけど。長い目で見てカラダとココロの落ち着き感が出るのは、さっき言ってた大型スーパーみたいな食材をとるってことなんだろうなって、自分の体でも感じました。

自分の体のいろんなところを見てあげて

――もう一つ、私にとっては鉄分の話が衝撃的な事実でした。私の実体験として、たんぱく質食材を意識してとるようになったら生理痛がほとんどなくなったんです。それをポロッと言ったら、彩子先生が「それはそうだと思いますよ」って言われてたのは、あれは鉄分の話ですよね。

豊永彩子:
そうですね。
世の中の健康情報とかダイエット情報って、やせるやせないか、そればっかりじゃない?
女性の体ってそんな単純じゃなくて、月経の周期があったりとか、これから妊娠出産を考えてる方だったら妊娠を成立させられて十月十日おなかの中で子どもを育てられるようにとか、産んだ後も育てられる体力があるようにとか。本当に育児って笑っちゃうくらい、もう、すっごい体力必要じゃないですか。

――そうそう!本当に!

豊永彩子:
子育てしながら働く人だっているし、一時的に家庭に入った人でも自分のやりたいことをやりたい人もいるし。女性としての体の機能をキープしつつ、いろんな活動をしていく女性がたくさんいるのに、きちんと女性の健康を、カラダとココロの部分のところを、本当にわかってんのか!みたいに思って。

――心の叫び!

豊永彩子:
もう、本当にスルーされてるんだなってね。でも、それは情報を出してる方も別に悪気はないと思うんですよね。

――そうですね。

豊永彩子:
そもそも女性自身が、生理周期の話とか自分の体のことを学ぶ機会がないっていうのが、まず問題で。
だから、私は食事のことも話すけれども、女性の体のメカニズムとか、ホルモンの話もするわけですよね。
私の目の前にいる生徒さんが、本当に5年後10年後ハッピーで生きていけるのかっていうことを長い目で考えたときに、この部分を抜きにして語れるわけがないって思って。
それで、女性の体ってね、っていう説明から話したりしているわけです。で、鉄分の話が出てくるわけですよ。

――私はすごいびっくりしました。栄養の話って、何をどれくらい食べるかってことしか意識しないんですよね。食べた後どうなってるかって、あんまりわかってないし、考えもしなかったっていう感じだったので。私がたんぱく質食材をとるようにした理由は、「太っちゃうのがいやだな」とか「ダイエットのリバウンドがいやだな」って考えていただけだったんです。だから、たんぱく質食材をとっていたことがまさか生理痛のところに通じてくるとか、「へっ!?こんなところにも!?」みたいな驚きがありました。

豊永彩子:
そうそう、そうなの。
たとえば、たんぱく質リッチを始めてたった1か月くらいで、生理痛がすごくしんどかったのに全然大丈夫になりましたって方もいたりして。だから、本当にいろんなところをちゃんと見てあげて、って思う。やせるやせないもそうだけど。

”今すぐやせた身体”よりも”一生太らない身体”

豊永彩子:
「やせたい!」「体を引き締めたい!」とかって、みんな思ってるんじゃないですか?

――思ってる思ってる。

豊永彩子:
でも、やせたいっていうのは、その場だけやせればいいってわけじゃないでしょう?

――そうなんですよー。

豊永彩子:
ちょっと究極の選択だけど、"今すぐやせた体"か、"ずっと太らない体"かどっちが欲しい?って言われたら、どっち?

――絶対、一瞬じゃないやつ!

豊永彩子:
うん、そうですよね。
最初はちょっと時間かかっちゃったとしても、いらない脂肪はちゃんと燃やして、食事や運動で効率的に筋肉をつけて、ひとりでに整っていく体ってどう?って言われたら、、、

――「それが欲しかったー!!」ってなる。

豊永彩子:
そのためにはたんぱく質とって、ちゃんと栄養状態を整える必要があるわけです。そこで初めて脂肪を燃やす体のスイッチが入るわけですよ。
だけど、みんな忙しいし、太ってる体をすぐになんとかしたいっていう短期的な考えになっちゃうから、"1か月で○キロ激痩せ!"みたいのに飛びついちゃうわけですよね。過去の私も飛びついてたんだけど。だから気持ちはわかるんだけどね。

――みんな早くそれを手に入れたくて、お金も時間もかけたりするんですものね。

豊永彩子:
だからやっぱり、慌てず焦らず、でも確実にっていうところで、やって欲しいなと思ってるところです。

たんぱく質リッチのコツーー手のひらサイズのたんぱく質食材

――最後にお話いただきたいのは、「たんぱく質リッチ」のコツです。『整う食事』(p.165)のなかで3つのコツが紹介されていますが、その1つに「一食につき手のひら一枚分」というキーワードがあります。私はここにも衝撃を受けました。そんなにとっていいんだ!ということと、わざわざ計りを使わなくても、食べる量の目安がわかるっていうところにすごく助けられました。

豊永彩子:
まずは、皆さんに「これならできそう」って思ってもらえるような「たんぱく質リッチの実践方法」をお伝えしたいというのがすごくありました。
そこで、毎食のメインデッシュ、お肉やお魚などを、指も含めた手のひら一枚分くらいを食べることをオススメしています。女性の場合だと、手のひらサイズのお肉は100~150グラムくらいになります。その人の身長によってグラム数はちょっと変わってくるのですが。
この計り方だったら、お買い物行った時にどれくらいのたんぱく質食材を買えばいいのかわかりやすいですよね。我が家の場合は、3人家族でまだ息子は小さくて食べられないから、夫と私の2人分ってなったら200~300グラムくらいのお肉とかを買って、それで炒め物を作って食べればたんぱく質リッチな食事になります。
なので、まずは手のひらサイズっていうのを意識していただくと、たんぱく質リッチな食生活を実践しやすいのではないかなと思っています。
もちろん、「お肉とかお魚とかはちょっとしんどいな」という方は、お豆腐・卵・納豆など、食べやすそうなものを選んでみてください。お豆腐や納豆は、そんなに調理しなくていいという手軽さもありますし。

――このコツはいろんな方にぜひ知っていただきたいと思っていた部分だったので、お話をうかがえてうれしかったです。

『整う食事』ではさらに詳しい解説や、外食でもカンタンにたんぱく質リッチな食生活をする方法などのアドバイスが載っています。

次回も、豊永彩子さんをゲストにお迎えして、甘いもの依存卒業のヒントをお伺いしたいと思います。
お楽しみに!

<甘いもの依存卒業推進プロジェクト>第3弾はこちら