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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第五部  第七十二話「初めてのイベント」


第七十二話「初めてのイベント」

瑠璃は魔女になって以来、

日々沢山の事を考えて過ごしていた。

宝石料理の多くは味がたんぱくなので、

まずくはないが飽きてしまう。

妖精たちにとってこの国のお菓子を知るまでは、

もっとも美味しいスイーツだったのだろう。

だが今は悪いことに、

この国のジャンクフードの味を知ってしまった。

毒にも強く病気にもなる心配がないので、

瑠璃も気にせず食べさせてはいるが、

そのせいで家系での食費はかなり圧迫していた。

副業が上手くいけば税金を払っても、

食費に悩まない生活になる。

貯金もこれからかかるフォスの為にも、

切り崩すわけにはいかない。

妖精たちには食費の為にも、

アクセサリー作りに精を出してもらいたいものだ。

そして瑠璃は美味しい宝石料理を考えることにした。

楽しさそうにおやつを食べるフォス達を見ながら、

瑠璃は笑った。

――――――――

翌日、

瑠璃たちはイベントに出かけて行った。

屋内型スポーツ施設での開催という事もあり、

かなり大きなイベントだ。

「瑠璃さんと知り合わなきゃ、

イベントなんて知らないままだったわ」

伍代は大きな会場を驚いた表情で見ていた。

フォスも口を開けて見ている。

瑠璃はそんな二人に笑うと、

「まずは自分達のブースの展示を済ませて、

そのあとに皆の所に顔を見せに行こう。

他の作家さんのお店もちょこっと覗こうね」

瑠璃は二人を連れて自分の番号の場所に向かった。

展示をしていると、

他の作家がやってきて声をかけた。

「こんにちは。私達向こうのブースなんですけど、

今日蒼川さんが参加されるって知って、

楽しみにしてたんです」

若い女性二人がアクセサリーを見ながら話しかけてきた。

「有難うございます」

瑠璃が伍代に手伝ってもらい、アクセサリーを並べる。

「あっ、これ。やっぱり実物は可愛い~

私達SNSで見て、これ目当てで参加したんです。

ね~」

女性はもう一人の友達と笑顔で話すと、

アクセサリーを眺めた。

それを見ていたフォスが、

「これね~僕が考えたの」

と自慢げに顔をあげた。

「えっ? 」

女性二人が驚いてフォスを見る。

「この子が命名したんです。

お豆さんみたいだって言うんで」

瑠璃の説明に女性たちは頷くと、

「凄いね~君が考えたアクセサリーなんだ」

と屈んで笑った。

「えへへへ」

フォスの笑顔に、

「この水流も新作ですか?

とても綺麗………」

女性たちが眺めていると、

他の作家も挨拶しながらやってきた。

会社の動画や講座のお陰で、

瑠璃の知名度もそれなりにあるようだ。

瑠璃が用意しながら説明していると、

「あとでお写真一緒に撮らせてもらえますか? 」

と女性たちが言った。


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