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JICAのお仕事。業務実施単独型とは

当社の事業のひとつに、JICAから受託して調査をしたり、プロジェクトの実務を担ったりする開発コンサルティング業務があります。具体的な仕事内容がイメージしづらい業務だと思いますので、今回はそうした業務のうちの一つ、業務実施単独型と言われるお仕事を当社コンサルタントの溝上に紹介してもらいます。

溝上 芳恵
大学院で国際関係を専攻し、国際NGOについて研究する中で実務の面白さに惹かれ、日本の国際保健NGOでコミュニティ保健、母子保健、保健人材育成などのプロジェクトに携わる。2016年にアイ・シー・ネットに入社し、開発コンサルタントとしてアジアやアフリカでの保健・栄養プロジェクトや調査に従事。

まず、JICAのソフト系(*)コンサルティング業務には、業界内で大型と呼ばれるものと単独型と呼ばれるものの2つがあります。大型の場合、複数の専門家が集まってチームで仕事をします。一方で単独型は、その名の通り個人がJICAから委託を受けて業務を実施します。個別専門家やアドバイザーとして現地へ派遣されたり、評価を専門とするコンサルタントがJICAが派遣する調査団の一員となるパターンなど多岐に渡ります。今回は、私が実施した単独型のアドバイザー業務についてお話します。

(*) 開発コンサルタントの業務内容はソフト系とハード系に分類されます。ソフト系は主に技術移転、ハード系はインフラやものづくりを通じた国際協力をしており、当社はソフト系コンサルタントです。

案件を受注するまで

JICAのWEBサイト内に掲載されている公示を確認するところからコンサルタントの仕事は始まります。公示には求められる専門分野や業務内容が記載されており、自身の専門性や経験とマッチする案件があれば、プロポーザルを書いて提出します。複数のコンサルタントとの勝負になるので、受注するためにはこれまでの経験とプロポーザルの内容が非常に重要になってきます。無事受注できた後は国内で必要な準備をしたのち、いよいよ現地に渡航して業務を行います。

保健行政アドバイザーという仕事

今回紹介するのは、コンゴ民主共和国での保健行政アドバイザー業務です。コンゴ民主共和国について馴染みのない方も多いと思いますが、アフリカの中では2番目に大きな国で、公用語として仏語が使われています。今回の業務で初めて行きましたが、以前より関心のあった国でした。色々な国の案件に携われるチャンスがあることは、この仕事の面白さの一つだと思います。

コンゴ民主共和国では国内紛争の影響により保健セクターにおける課題も多く、総合的な保健システムの強化が必要とされています。また2006年に憲法が改定され保健行政の地方分権化を図っていますが、未だ十分に機能していない現状があります。保健システムの課題は多岐に渡りますが、なかでも顕著なのがガバナンスの課題です。そして今回、アドバイザー業務として求められたことが正に、保健省と州保健局のガバナンス強化でした。

実施体制

業務は一人で実施するのではなく、現地のローカルコンサルタント2名と一緒に行いました。2年の契約期間中、現地への出張は7回、滞在期間はそれぞれ1~1.5 カ月ほど。現地にいる期間はできることをどんどん進めますが、不在期間が長い時には3か月に及ぶこともあり、その間、毎月のオンライン会議や定期的な打ち合わせ、チャットツールを活用した日々のコミュニケーションを通じて活動の進捗管理やトラブルシューティングを行いました。こうした監督・管理などのマネジメント力やコミュニケーション力も、仕事をするうえでは欠かせません。

現地での活動終了時にローカルコンサルタント・ドライバーと記念撮影

活動内容

今回の業務では、保健省と州保健局を主な対象に、技術指導や助言をすることが求められ、具体的な活動としては大きく3つに分かれています。

1つ目が、中央レベルと地方のコミュニケーションとコーディネーションの強化です。地方分権化が進む一方で中央の保健省と州保健局で連絡調整がうまくいっていないという課題がありました。優先順位の整理や、職員の巻き込み、情報共有を促進することで、連携を強化しました。

2つ目が、州保健局のマネジメントを支援することです。定められた回数、及び内容の会議が適正に行われておらず、まずは定められた回数で実施できるようにすることから始め、会議の開催支援や会議での助言などをしました。

地方での会議開催を支援

3つ目が、組織の能力向上支援です。プロジェクトの計画・実施・評価という一連のサイクルを管理運営する手法であるPCM(プロジェクトサイクルマネジメント)の研修を実施したり、組織の能力を分析し、解決のためのプランを立てる参加型のワークショップを実施しました。こうした活動はインパクトが大きかったようで、非常に喜ばれました。

州保健局職員を対象とするPCM研修の様子
州保健局の組織能力分析活動には局長をはじめほぼ全職員が参加

最後に

今回実施したような単独型の案件では、ローカルコンサルタントや現地のJICA事務所とのコミュニケーションが非常に重要になってきます。1人で責任をもって仕事を進めなければならないところは大変でしたが、ローカルコンサルタントに助けられましたし、自身のイニシアチブで進められる面白さもありました。

単独型の業務内容や求められるものは案件によって様々ですが、それぞれの業務経験を積み重ねていくことで自分の仕事の幅が徐々に広がっていくと思います。