信仰

あなたは何を信仰していますか?

この一週間、出張、忘年会、休日出勤など色々と慌ただしい日々を過ごしており、寝不足も相まって体調的にもきつく感じた。こういう時は、考えることも億劫になって、流れの中で反射的に過ごす時間がどうしても増えてしまう。なるべくそうならないためにも、移動の合間などを活用して、寺島実郎氏の『人間と宗教 あるいは日本人の心の基軸』を読み進めながら、思索に耽る時間を作っていた。

本著は世界の宗教及び日本の宗教の成り立ちや普及に関して、紀元前から現代までの長い歴史を紐解く形で説明がなされている。それぞれの時代背景のもと、思想の融合や変化が生じ、そこから旧派と新派の対立が起こり、それに付随する形で政治や権力と宗教が結びつき、不幸なケースでは戦争にまで突入してしまう。同じような対立や争いが、形を変えて、各地域、各時代で起こっていることを考えると、人間が個として生きること、集団として生きることの難しさを改めて感じさせられた。

学生時代の歴史の授業は、年号や出来事の名称を覚えることが主となってしまっており、全体像がいまいち掴めていなかった。世界史と日本史が別個になっていることから、その関係性を理解することも難しかったように感じる。今回本著を読むことで、宗教の思想体系や普及をベースに、歴史の流れや日本と世界の繋がりを知ることが出来たため、全体像や各宗教の概念がかなりクリアになった。

ある宗教や思想が一定以上普及すると、それが構造化されて人の行動にも影響を与えていく。その動きの中で様々な出来事が生じ、環境や前提条件が変化していく中で、再解釈や再統合が生じ、新たな宗教や思想が生まれる。歴史をざっくり紐解くと、このように言えるのかもしれない。

現代社会は無宗教の時代だと言われるが、資本主義、科学主義、個人主義、自由主義など経済や科学が主体となる思想で成り立っていることを考えると、これらも一種の宗教なのかもしれない。本著にも書かれているが、バブル崩壊後の失われた時代で、経済にも裏切られてしまった日本人は、精神の基軸が脆弱になっており、それを如実にしたのがコロナ禍だと言えるのだろう。今後、日本人、そして世界は何を信仰して生きてゆけば良いのか。このような問いを発し、考え続けること自体が生きる意味や目的なのかもしれない。本著を読むことで、周辺分野に結構興味関心が湧いたので、今後も勉強をしながら自分なりの考えを構築できればと思う。

余談として、本著では司馬遼太郎も近代の思想に多大な影響を与えた人物だったと記述されている。そして、幼少期に父親は司馬遼太郎の本を数多く読んでおり、休日に家にいる時は碁か読書ばかりしていた。時代の流れの中で人が思想を深めていくということを、最も身近で行っていたのが父親なのかもしれない。その頭の中ではどういう思想体系が生まれていたのか。既に亡くなってしまったので語り合うことも出来ないが、もう少し早く自分が考えを深められていたら、親子で面白い会話が出来たのかもしれないと思う。

そういえば息子とこの前面会した時、グレタさんの話をしていた。彼女も新たな思想家だと思うし、同年代の息子も何かしら影響を受けたのかもしれない。親子の会話とか小さなところからでも、より良い世界を目指しての話し合いが増えてきたら、少しずつでも幸福な社会が出来上がっていくように思う。


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